216.計算尽くの奇跡-3-
――昴は、俗に言う"主人公補正"に恵まれない。
奇跡は、ほとんど起こせない。
それは、エトランゼというカードゲームを通じて昴が、身をもって学んだ人生観。
自分は主人公補正に倒される側であり、自分が主人公補正を使う事は出来ないと。
だから昴は、運命力に頼らない。
それは例えるのであらば、運命力ではなく――必然力。
確率を、限界まで高め。
その高い確率を、掴み取る。
カード達が、自らの命を託すに値すると、信じられるだけのデッキ構築を行う。
頭を、デッキを、運命を、ぶん回す。
昴は、計算して奇跡を起こす。
―――――――――――――――――――――――
「俺は墓地から、受け流しの短剣-パリーイング・ダガーを追放する!」
5:【速攻】【コスト】このターンに発動したこのカード名の5の効果の回数+1枚の装備呪文を、デッキ・手札・フィールド・墓地・マナゾーンから選択して追放する
【効果】このカードの疲弊状態を回復する
「聖天戦女神 アルトリウスの疲弊状態を回復する!」
これにより、聖天戦女神 アルトリウスは更なる攻撃権利を得た。
だが――ここまで。
1:【速攻】【条件】このユニットがバトルする時に一度
【効果】このユニットのパワーはバトル終了時まで、フィールドに存在する最もパワーの高いユニットのパワーと同じ数値になる
完全に露呈した、"廃絶の狂信者"の攻撃力変動効果。
それを防ぐ手段は特に無く、このまま攻撃すれば、聖天戦女神 アルトリウスは破壊されてしまう。
更に言うならば、この瞬間……
デッキ枚数――0。
デッキの底の底。
ここが、敗北の終着点。
地の底に、未来など無い。
敗北の足音は、もう鳴り響かない。
踏みしめるべき床が、そもそも無いのだから。
この流れは、運命ではなく必然。
そうなるように、プレイングによって仕向けただけに他ならない。
「墓地からカウンター呪文、陽はまた昇るを発動!」
名称:陽はまた昇る
分類:カウンター呪文
プレイコスト:赤青緑白黒◯◯
文明:無
カテゴリ:
マナシンボル:虹
1:【速攻】【効果】自分の墓地に存在するこのターン破壊されたユニットを可能な限り墓地から召喚する。この効果で召喚したユニットはこのターン効果を発動出来ない
2:【速攻】【条件】このカードが墓地に存在し、自分のデッキが0枚の時【コスト】自分の墓地に存在する陽はまた昇るを全て追放する
【効果】自分の墓地からユニット1体を選択する。そのユニットのプレイコストと同数のカードを墓地からデッキに戻し、選択したユニットを墓地から召喚する。その後、この効果で召喚したユニットのパワー分自分のライフを回復する
今、この状態ならば!
俺のデッキに仕込んでおいた、最終ギミックが起動出来る!
陽はまた昇るの第2効果は、墓地の消費だけで、ありとあらゆるユニットを降臨させる強力無比の効果!
プレイコストと同数の墓地をデッキに戻す必要があるが、それは同時に、枯渇したデッキ枚数を回復出来るという意味でもある。
この状況下、呼び出すユニットは――当然!!
「俺は! 墓地から霊鳥 リッピを選択し、そのプレイコスト分、1枚をデッキに戻し、墓地からリッピを召喚!」
「ピイイイィィィィ!!」
やる気十分、勢い良くフィールドへと飛び出すリッピ!
頼んだぜリッピ! お前がキーカードだ!
「そして、この効果で召喚したユニット、リッピのパワー分、俺のライフを回復する!」
デッキ枚数:0→1
LP:375→1375
「更に! ライフを1000支払い、聖天戦女神 アルトリウスの効果発動! フィールドに存在する聖天戦女神 アルトリウス以外の、パワー5000以下のユニットを全て破壊する!!」
LP:1375→375
一瞬ビクッとして、リッピがフリーズする。
その後、何か信じられないモノを見たのか聞いたのか知らないが、目を見開いてこっちを見た。
冗談だろう? 何かの間違いでは無いのか?
「「 断 罪 一 閃 ! 」」
そんな事を言いたげな表情を浮かべ、それを一言も発する事無く、リッピは光の波濤に飲まれて消えて逝った。
それと同時に、"廃絶の狂信者"もまた、破壊される。
だが――それでも、蘇る。
クソッタレ! お前がコストを消費する蘇生効果なのはもう分かってんだ! いい加減枯れろ!!
LP:375→188
召喚されて即座に消し炭になったリッピ。
何の意味があったか?
意味は大有りだ!!
「破壊されたリッピの強制効果発動! 俺は無色マナ1を得て、デッキから1枚ドローする」
先程まで、デッキ枚数は0になっていた。
陽はまた昇るの効果で、墓地からカードを1枚戻す事でリッピを蘇生した。
「コレが俺の――!」
デッキに、指を掛ける。
つまりこの1枚は、その効果で戻した1枚、という事になる。
ここが、敗北の終着点。
地の底に、未来など無い。
「逆転勝利の剣だ!!」
ならば、天地を返して先を手繰り寄せる!
全てのデッキが墓地に行ってしまった今ならば――事実上、デッキに存在するほぼ全てのカードが手札になり得る、計算によって捏造された神引き。
遠い朝焼け空の向こうで、リッピが不貞腐れた表情を浮かべているような気がした。
「黒マナ1と白マナ1を使用し、速攻呪文発動!」
舞い降りる、逆転勝利の剣。
デッキが――運命が、再転する。
「再転する運命!!」
名称:再転する運命
分類:呪文
プレイコスト:○○
文明:無
カテゴリ:
マナシンボル:無
このカードはゲーム中に1度しかプレイ出来ない
相手ターン中にこのカードをプレイする時、このカードのプレイコストは0になる
1:【速攻】【効果】以下の効果から1つを選択して適用する
・お互いの墓地に存在するカードを全てデッキに戻す
・お互いの追放されたカードを全て墓地に戻す。この効果の適用後、ターン終了時までカードを追放する事が出来ない
天と地が、翻った。
リッピイイイィィィィ!!!
リッピは墓地に行くのが仕事




