205.最悪の災厄 E《Elimination》F《Fanatic》-1-
デッキをシャッフル、初期手札の7枚をドロー。
イマイチ、一度手札を戻して引き直し。
ファーストユニットが出るまでデッキトップをめくり、盾を5枚セット、初期準備完了。
「ピ!」
初期ユニットは霊鳥 リッピである。
デッキに入れてるからしょうがないんだけどね、やっぱファーストユニットで出ると美味しくないなあ。
墓地に行ってくれると美味しいんだけどね。
さて、相手の盤面状況を――と、確認しようとした時であった。
背中の辺りから何かがぶつかったような衝撃音がした。
「――ほう、俺の攻撃を防ぐか。大した強度じゃないか」
大剣を構えた、大男の姿。
どうやら俺を攻撃しに来たらしい。
振り下ろしたであろう大剣は、盾に阻まれ停止していた。
「先攻は攻撃出来ないですよ」
「……成程」
今回、俺は後攻判定のようだ。
俺に対して攻撃する意味が無いのを察したのか、大男は再び距離を取る。
名称:"烙印"のディードリッド
分類:ユニット
プレイコスト:???
文明:黒
性別:男
種族:人/悪魔
カテゴリ:邪神の欠片
マナシンボル:?
パワー:15000
?????
?????
?????
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見えた。
曇天に覆い隠され、星の光一つ無い闇夜の中、結構距離があるので俺の肉眼だと多分見えないと思うんだが。
これも何か魔法的な補助なのだろう、その姿をクッキリと視認できていた。
"烙印"のディードリッド、それがあの男の名か。
以前から何度か見掛けた、"適合者"とか呼ばれてる奴と見た。
効果は、読み取れない。
だが一つだけって事は無いだろう、戦いながら推測していくしかないか。
そして……パワー、15000。
即死打点。
これが意味するのは、アイツの攻撃は盾で受けなきゃいけないという事だ。
ライフで受ける時は、それ即ち俺の死を意味する。
そして――
名称:"廃絶の狂信者"
分類:ユニット
プレイコスト:???
文明:黒
種族:獣/悪魔
カテゴリ:邪神の欠片
性別:不明
パワー:0
?????
?????
?????
?????
?????
?????
?????
正面に居る、ディードリッドという男と同じ姿を取った、黒き存在。
コイツが、カード達が言っていたとびっきりのヤバい奴か。
こっちも効果を読み取れない。
だが……パワー0だと?
純粋な火力馬鹿の伝説の魔法戦隊を真正面から打ち破った奴が、パワー0だと?
そんな訳、無いだろうが。
どんな効果を持っているのかは知らんが、お前のそのパワーは変動する、それだけは確定事項だ。
そうでなければ、説明が付かない。
「俺のターン、ドロー。リカバリーステップ、メインステップ。カードをマナゾーンにセット、疲弊させ黒マナ1を得る。俺はこれでターンエンドだ」
ぴちゃり。
足元から音がした。
俺の足元で、リッピが倒れていた。
粒子となって消えていくリッピ。
……破壊された?
「霊鳥 リッピの効果発動、破壊された事で俺は無色マナ1を得て、1枚ドローする」
何で、リッピが破壊された?
ディードリッドとかいう男も、"EF"とやらも、何か動いた様子は無い。
別の要素で破壊された?
―――――――――――――――――――――――
『もう、ここからは邪神の欠片の勢力圏です。この地では常にこの雨が降り続いているそうで、雨に当たると少しずつ、あらゆる生物の生命力が奪われていきます』
―――――――――――――――――――――――
――ダンタリオンの言葉を、思い出す。
降り注ぐ、黒い雨が頭部を打ち、頬を伝う。
空を仰ぎ見る。
名称:侵食曇天蓋
分類:永続呪文
プレイコスト:???
文明:黒
マナシンボル:???
カテゴリ:天候/魔法陣
1:【強制】【条件】エンドステップに1度
【効果】ターンプレイヤーのフィールド上に存在する黒文明以外のユニットのパワーは1000ダウンする
2:【永続】【効果】フィールドに存在するパワーが0になったユニットは破壊される
3:【永続】【効果】フィールド上に存在するこのカードはカード効果の対象にならず、フィールドを離れない
4:【永続】【条件】黒文明のユニットが相手ユニットとバトルする時
【効果】そのバトル終了時まで、そのユニットは自身以外の効果を受けない
……以前もあったな、こんなパターン。
敵は、目の前の相手だけじゃないという事か。
エンドステップに1度、ターンプレイヤーのフィールド上、か。
自分相手問わないエンドステップという条件だが、ターンプレイヤーという表記があるので、俺の場に影響するのはあくまでも俺のエンドステップだけだ。
そして、1の効果でパワーがダウンし、2の効果でパワーが0になったユニットは自動的に破壊される。
少しずつ命を蝕む雨、この天候そのものが、俺の敵。
成程、弱小ユニットにとっては余りにも過酷な環境のようだ。
しかも……何だ? フィールドを離れないだと?
ふざけてんのかこの効果。
破壊するにしろ、追放するにしろ、手札やデッキに吹き飛ばすにしろ。
そのどれであろうが、フィールドから離す効果処理だ。
除去出来ねぇじゃねえか、この永続呪文。
ヤケクソな耐性持ちやがって、こんなもんが最初からあるとかインチキだろ。
リッピが破壊された。
1ターン目でいきなりファーストユニットロストしたんだけど。
マナとドローを残してくれたから、被害こそ最小限で済んだが、これで俺の場はがら空きだ。
相手へとターンが移る。
手にした大剣を、俺目掛け振り下ろす"廃絶の狂信者"。
お前、パワー0だっただろ。
それならライフで受ければ実質ノーダメージなんだが――
"廃絶の狂信者"
パワー:15000
1:????このユニットが??????
【効果】このユニット?????
ああ、はいはい。
予想してましたよ、案の定パワーが変動してるじゃねえか。
しかも初期ライフを超えるパワー15000と来た。
こっちもライフで受けたら即死かよ。
しかし、何故パワー15000になった?
元々は0だったのに、一体何を参照して、その数値に変動した?
自分の好きに数値を変動させられるなら、それこそ適当な、無限に近い数字を設定しておけば良いのに。
この数値になったという事は、何か明確に参照している数値がある、と見るべきだ。
"烙印"のディードリッド
パワー:15000
まあ、十中八九、アレだろうな。
ディードリッドという男と、パワーの数値が同じだ。
つまりこの"EF"というヤツは、フィールド上で最も高い数値のパワーを参照し、それと同じ数値になる……という効果か?
そういう事なら、伝説の魔法戦隊が撃ち負けたというのも理解出来る。
どれだけ数値が高い、無限に近しい数値だろうとも、それを参照されて数値が可変するのであらばどうにもならない。
ただ、この通りなら撃ち負けるにしろ、相討ちという形になりそうだが……まあ、現実での戦いはカードゲームのようにキッチリ数値通り効果通りとは行かないか。
"EF"の攻撃によって、盾が1枚潰される。
手元にやって来たのは――カード達から聞いた情報を加味した上で、対策として仕込んだカードの内の一種。
デッキに仕込んだカウンター呪文が、上手く発動した。
「カウンター呪文、吹き荒れる神風発動」
名称:吹き荒れる神風
分類:カウンター呪文
プレイコスト:緑緑緑緑○○○○
文明:緑
カテゴリ:
マナシンボル:虹
1:【強制】【効果】相手フィールドの前衛ユニット全てをデッキに戻しシャッフルする。
コストは重いが、一撃で戦況を引っくり返す、除去呪文。
倒したのに蘇る、というカード達の言い分。
破壊耐性か、蘇生するのか、どっちかは知らんが。
「お前等全員、デッキ送りだ」
対象を指定しないデッキ戻し、お前等が手札やデッキに戻るってのがどういう判定になるのかは知らんが、これなら破壊耐性や復活系の効果なら叩き潰せる。
高密度に圧縮された、空気の塊。
膨大なエネルギーが解き放たれ、敵の立つフィールド全てを薙ぎ払うように襲い掛かる暴風!
その余波で大地に爪痕を刻みながら、"EF"とディードリッド目掛け、その烈風が迫る。
「流石に勇者と呼ばれるだけあるか、大した魔法じゃないか」
ディードリッドという男が、そう口にした。
大剣の柄から片手を離し、力強く握り締める。
吹き荒れる神風を殴り付けるように、その拳を降り抜き――
「だが、俺には効かん」
嵐が、霧散した。
拳で嵐を消し去るなんて、んなアホな。
地球の感覚からすれば何寝ぼけてんだって感じだが、生憎ここは魔法がある世界なのだ。
吹き荒れる神風は、何らかの効果によって不発……いや、消された?
効力を消失させられたと見るべきだ。
口振りからして、ディードリッドってヤツが何らかの打ち消し効果を持っている、そう考えるべきか。
厄介な手合いだ。
呪文を消し去って来るとなると、やり方を考えないといけないぞ。
さてどうするか、それを考えている最中。
俺の目の前が、灰色に輝いた。




