200.強襲
実はまだ完成してないけど見切り発車の後編うおおおおおお!!!
降りしきる黒い雨。
かつて、古の勇者の手によって封印された、邪神の欠片――"廃絶の狂信者"。
この存在を中心として、あらゆる存在から生命力を奪っていく黒い雨が降り続いている。
雨粒が雨戸を叩く音だけが響く、静かな空間。
まるでこの世界から、他の生物全てが居なくなってしまったのかと、錯覚してしまう程だ。
――静か過ぎる。
男は、腰掛けた椅子の傍ら、肌身離さず持ち歩いている愛剣を握り締め、音を立てぬようにゆっくりと立ち上がる。
詰所の扉を、静かに開ける。
暗い室内、閉所故に空気の循環は悪く、淀んだ空気が満ちており――その中に混じる、血の臭い。
「ほう? まだ生き残りが居たのか。気付かずそのままで居れば命は助かったものを」
目測、2メートル近い大男。
そしてその身の丈程の巨大な大剣を片腕で握り締め、その足元には、両断された兵士の遺体が転がっていた。
「――ここの警備が、仕事なんでな」
警備隊長としてここに詰めていた男――ハーゼは、自然な動作で鞘から剣を抜いた。
抜いた鞘を詰所の室内に向けて勢い良く放り投げ、両手で剣を正中に構える。
「目的はそこの"廃絶の狂信者"か」
「そうだ、と言ったらどうする?」
「その力を利用でもする気か? 過去の勇者と英雄が並び立って、倒せずに封印する事でしか押し留められなかった存在だぞ? そんなモノを、自分の都合の良いように利用など出来るものか。一度解き放てば、この世界を滅ぼし尽くすまで暴れ続けるだけだ」
「それこそが目的だからな」
当然だろうとばかりに言ってのける大男。
世界を滅ぼす事が、目的。
そんな者と交渉するのは不可能。
「さて。剣を抜いた以上、貴様も剣士ならば、下らぬ問答を続けるより、剣で語ったらどうだ? それとも――」
男は、自らの足元にある兵の遺体を、見せ付けるように踏み付けた。
既に事切れた兵の頭蓋骨がバキリと音を立てて踏み砕かれる。
同胞の遺体を踏み躙る事で、挑発しているのだろう。
「仇討ちする根性すら無い、腑抜けか?」
「そうだな――」
ふぅ、と一つ溜息を吐くハーゼ。
その目に強い意思が宿ったのを見て、返り討ちにしてやろうと男がその剣を構えようとして――
ハーゼはその場から、脱兎の如く逃げ出した。
「――は?」
何の躊躇いも無い、全力逃走に一瞬、男は面食らう。
すぐに追撃せんと追い掛ける、が。
詰所に踏み込むと、床に転がった鞘があるだけで、ハーゼの姿は何処にも無い。
破れた窓から入り込んだ、黒い雨が詰所の床を濡らしていた。
「この場は逃げるが勝ちだ!」
降り注ぐ黒い雨の中から、ハーゼの声が木霊した。
対面した時点で、男との間にある、隔絶した実力差をハーゼは既に理解していた。
まともにぶつかれば、死は確定事項。
いや、不意打ちしたとしても、勝機は一切無いだろう。
死んだ兵士達には悪いが、ここで真正面から突っ込んでもそれこそ犬死にだ、それでは死んだ兵達も浮かばれない。
だから、逃げる。
そして――追って来るなら、それはそれで良し。
その時は時間稼ぎという役割を果たして、死ぬだけだと、ハーゼは覚悟を決めていた。
「……いっそ、潔い腰抜けだな」
失望したとばかりに、大きく溜息を吐く。
男はハーゼを、追わなかった。
そして転がった鞘の近くに在る壁面、そこにあったボタンを注視する。
「成程、仕事は果たしたという訳か」
そのボタンには、「非常事態発生時に押せ」という、少し掠れた文言が注記してあった。
先程放り投げた鞘で、ハーゼは何食わぬ顔でこのボタンを押していたのだろう。
会話に付き合ったのも、少しでも時間を稼ぐのが目的か。
必ず敗北する相手に時間を稼いだのであらば、兵としては大戦果である。
であらば、これ以上その時間稼ぎに付き合う事も無い。
「――起きろ、"廃絶の狂信者"」
ドラゴンの見た目をした、黒き異形。
その首下辺りに突き刺さった、剣の柄に男は手を伸ばす。
柄を男が握った途端――何かが破砕したような音が響いた。
剣を首から引き抜くと、途端にその剣は早回しで風化するように、ボロボロと崩れて消えていった。
黒い翼が、勢い良く広げられた。
長い首を持ち上げ――積み上げられた石壁を、鬱陶しいとばかりに粉砕する!
黒い空の下、黒い雨粒に打たれながら、黒き竜は咆哮を上げた。
「さて、言葉は分かるか? 分かるならば俺の指示に――」
竜の尾が勢い良く、男目掛けて振り抜かれた。
僅かに残った、自らを覆っていた石壁はその一振りで完全に吹き飛ばされ、その姿を完全に露にする。
「逾槭?貊??縺ゅl縺ィ險?繧上l縺溘??謨?↓豸医∴繧九∋縺」
「成程、所詮は獣か」
ただ雄叫びを上げながら、目の前に在るモノ、その全てを分け隔てなく、破壊し蹂躙する。
それは男に対しても例外ではなく、鎌首をもたげ、その爪牙で屠らんと腕を振り上げ、口を開いた。
「ならば獣らしく追って来るが良い、お前が戦うべき相手の所まで案内してやろう」
視線が完全に自らに向いている事を確認した男は、黒い雨の中、それを一切意に介さず、何も無い荒野を一直線に駆け出した。
目の前にある生命体を屠らんと、黒き異形はその強靭な腕と足で地を蹴り、翼を広げて天へと舞い上がり、男を追いかける。
男が向かう先にあるのは――ナーリンクレイの首都、ルクスライト。
"E.F"。
破滅を齎す生きる災害が、再びこの世界で行動を開始する。
もし完成間に合わなかったら後編を前後に分けるかも……
長い!




