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199.戦後処理

今回で九章中編終了です

後編は……がんばる

 国家存亡の危機に瀕した、無数の邪神の欠片による襲撃騒動。

 未だ救助活動で混迷を極める市街地だが、戦闘自体は終わった為、危急の課題は一旦片付いている。


「――勇者の仲間達による戦闘で、いくつかの家屋が破壊されたという報告も上がっています。本来であらば軍と連携して事に当たるべき状況だというのに、ルビス王女が独断で! 勇者に行動許可を出したからです! 一体この責任はどう取るおつもりですか!?」

「そうだそうだ!」


 メルルキア城の会議室。

 丁度貴族達が一ヵ所に集まっていた事もあり、此度の邪神の欠片騒動による事後処理と責任追及の緊急会議が開催されていた。

 その責任追及……勇者達の独断行動を許した元凶である、ルビスに対し、その白羽の矢が立てたれた。

 ルビスを責め立てる貴族達の中には、先刻ルビスと衝突していたレイバルの姿もあった。


「舌の根も乾かぬ内に……安全圏で怯えていただけの連中が何を威張り散らしているんだ」


 ナーリンクレイ"最強"という名を持つが故に、会議から逃げられなかったフェルナンドが悪態を吐く。

 武力の極致に辿り着いた存在であり、最早フェルナンドという一個人が、一つの軍隊に匹敵、いや上回る程の力を持つ。

 それだけの存在が国に放置される訳も無く、こういう会議の場があるとどうしても参加せざるを得ない為、その都度こうして見たくも無い貴族達の弁舌やリアクション芸に付き合わされる羽目になるのだ。


「そういう貴方は、一体何処で遊び惚けていたんですか?」

「遊んでなどいない、こっちもこっちで、邪神の欠片相手に大立ち回りしていたんでね。これでも、邪神の欠片を二体程は仕留めたのだから、仕事はしたさ」


 ルビスからチクチクと小声で糾弾されたフェルナンドだが、彼は彼で邪神の欠片と交戦し、そして打ち倒してもいるようだ。

 目撃している者が居ないので嘘かもしれないが、彼程の実力者がこんなしょうもない嘘を吐く理由が無いので、恐らく事実なのだろう。

 

「ルビス王女! 聞いているのですか!?」

「ええそうですわね。独断で国外の勢力を招き入れ、武力行使の許可を出した。挙句にこのような被害を出した者を、王として崇める臣民など居ないでしょう。責任を取る必要があるのは間違いありません、ですので……」


 居並ぶ王侯貴族の面々。

 衆目を一身に受けながら、ルビスは。


「ワタクシはこの時を以って、王位継承権を放棄します。この国の未来は、お兄様かお姉様、どちらかに委ねますわ♪」


 堂々と、公式の場で。

 自らの王位継承権を放棄すると、宣言した。


「今回の騒動の一件は、それで決着が付いたと民に報告しておけば良いでしょう。では、お兄様お姉様、これにてワタクシは王族としての地位を失いますので、恐らくこれが最期の別れになると思いますが、壮健であられるようお祈り申し上げますわ」


 アダマス王子とアクアマリン王女に、深々と頭を下げた後、会議場を後にするルビスと、それに付き添うフェルナンド。

 何やら会議場でまた騒動が起きているようだが、王位を返上し、ただの一市民へと下ったルビスにはもう関係の無い世界での話である。


「……さて、いよいよ王女様ではなくただのルビスとなった訳だが、俺を雇うだけの金は残っているのか?」

「まだある程度は私財が残っていますから、それで引き続き貴方を雇用しますわ。ですが、ずっと雇い続ける余裕はありませんので、しばらくしたらお役御免という事になりますわね」

「そうか。まあ金の切れ目が、というヤツだな」


 煙草を咥え、火を灯すフェルナンド。

 紫煙が宙を漂い、やがて消えていく。


「ま、契約満了の時が来るまではお前に付いて行ってやるさ。元、お姫様」

「ええ、宜しくお願いするわ」

「それで、これからどうするんだ?」

「取り敢えず、持ち出せるモノはありったけ持ち逃げしちゃいましょうか。一足早い結納金ですわね♪」

「強かな奴だ」


 王女という立場を失ったが、元々そのつもりではあったのでまるで動じないルビス。

 自らの野望に向けて邁進すべく、ルビスは城を後にするのであった。



―――――――――――――――――――――――



 争乱の渦中となった市街地は、地獄の様相を呈していた。

 邪神の欠片に食いちぎられたのか、上半身が無い遺体が地面に転がっていた。

 姿は見えないが、至る所から苦痛に歪んだ呻き声が聞こえてくる。

 家屋の倒壊に巻き込まれ、瓦礫に押し潰されたまま、救助を待っている人々の声なのだろう。

 市政の人々は各々、自らの職務を果たす為、人道に従って、救命活動を行う。

 邪神の欠片という生きる災害に巻き込まれた民衆を救うべく、カード達の一部もまた、休む事も無く動き続けていた。


「こっちだ! この建物の下から声が聞こえるんだ!」

「この瓦礫をイチイチ退けてたら時間が掛かり過ぎる! 上に人は居ないな? 吹き飛ばす!」


 救助活動という形で、瓦礫を吹き飛ばすべく伝説の(レジェンダリー)魔法戦隊(マジックアーミー)が動いている。


隊長(リーダー)! こっちの下からも声が聞こえる!」

「そっちよりウチの家族を助けてくれ!」

「順番だ! こっちが終わったらそっちにも行く!」

「そこは奴隷商の屋敷だ! 潰れてるのもただの奴隷だ! ならこっちを優先するのが道理だろう!?」

「何を言っている! 命に優劣があるか!」


 奴隷は人ではなく、物として扱われる。

 人と物であらば、人の方が優先されてしかるべきだという考えだ。

 だが、ナーリンクレイの人々がそう考えていても、カード達がそれに賛同するとは限らない。

 価値観の違いで、衝突するカードと民衆。


「はいはーい怪我人はこっちこっちー。千切れた腕とか足とかあったら一緒に持って来てねー、身体のパーツ揃ってりゃ大体くっ付くから。イケメン優先だぃょぅ(=゜ω゜)ノ」


 そんな街と人の惨状に対し、くっそ軽いノリで応対するブエル。

 ブエルも召喚コストが軽くなっている状況を良い事に、人助けという名目の男漁りを開始していた。

 イケメンを掘り当ててホクホクするのが趣味の女である、性分なのでこの在り方は変えられないのだろう。


「炊き出しと仮設住宅の手配は既に済んでいます、ですので皆様、慌てず落ち着いて行動して下さい! それに、勇者様もこの救助に参加しています!」

「おおっ! ルビス様!」

「あの勇者様が!? それは本当ですか!?」

「少ないですが、ワタクシも食糧を持参しました。子供達に優先して配布しますから、ここに整列して下さい」

「ルビス様が食糧を持って来てくれたぞ!」


 誰よりも早く、民衆の為に行動し、結果として民からの支持を一身に受けるルビス。

 もう既にルビスは王位継承権を返上した後である為、どれだけ民衆から支持されようとも、王位に就く未来は永久に訪れないのだが。

 王族としての最後の勤め、という事なのだろう。


「御立派な事だな。もうお姫様ではないのだから、こんな事をせずとも良いだろうに。それとも、チヤホヤされたい自己満足か?」

「チヤホヤされるなら勇者様に……いえ、それでは一方的ですわね。やはり勇者様の妻となる以上、一方的に寄り掛かるだけでなく時に支え、時に助けられ、健やかなる時も病める時も、という形が一番ベストですわ。愛し愛されというのが、理想的な夫婦像だとワタクシは考えて――」

「分かった、もういい、俺は向こうで煙草吸ってるから好きにしてくれ」


 物凄く話が長くなりそうな気配を察知したフェルナンドが、煙草を咥えながら緊急避難もとい逃走する。



 こうして一旦、邪神の欠片が巻き起こした騒動は終結した。

 だがこれは、ナーリンクレイを襲う騒動、その序章にしか過ぎないのであった。

「さてさて、細工は流々仕上げを御覧じろ、っというヤツじゃのお! 後は"烙印"の仕掛けを待つだけじゃ。では、後は高みの見物と洒落込むとするわい」

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