#8.無敗なのに?
あーんま放置しとくのもなー。
って思ったので番外編で間を繋ぐ作戦。
何かなろうの仕様結構変わってる……?
暗い暗い、闇の中。
その闇の中に浮かぶ、無数の輝き。
それは夜空に浮かぶ星々――ではなく、一定間隔で切り取られた様々な空間。
ここは、カード達が存在している精神世界。
広大な闇の中、存在するカード達の数だけ、切り取られた空間が存在している。
この精神世界の中で、カード達は各々、余暇に耽ったり、鍛錬に励んだり、昴の居る現実世界に睨みを利かせたり、昴のマナを使用して実体化してみたり――自由に過ごしている。
「今日も来たぞ、ハイネ殿。今日という表現が正しいのかは分からないが」
「やあエルミア、今日も精が出るな。まあ、今日で良いんじゃないか? ここじゃ時間という概念なんて在って無いようなモノだ、自分の感覚で時間を決めても誰も文句なんて言わないさ」
伝説の魔法戦隊 ハイネ。
昴の保有するカードの1枚であり、以前マーリンレナードで起きた邪神の欠片騒動にて、エルミアは行動を共にしていた。
その一件以来、エルミアは定期的にハイネの所に顔を出すようになっていた。
ハイネは数居るカード達の中でも常識的、温厚、親しみやすい性格であり、一緒に居て気が楽だというのも理由の一つだ。
「――こっちでは実際に打ち合う事は出来ないから、どうしても見取り稽古の延長になってはしまうがな」
「それでも十分、勉強させて貰っている」
「可能なら、団長に許可を貰って実際に打ち合ってみたい所ではあるな」
手にした槍を構え、互いに向き合うエルミアとハイネ。
もう一つの理由が、これである。
ハイネはエルミアにとってかなり共通点の多い存在だ。
エルミア同様に軍属であり、槍を用いた戦闘スタイルもエルミアと共通している。
ハイネの使っている武器は遠近両用可変式の槍砲というかなり特殊な武器なので、正確には違うのだが、それでも近接戦闘をしている分にはエルミアと殆ど同じだ。
学べるモノも多いだろうと、エルミアから訓練の申し出があり、それをハイネが受け、今に至る。
エルミアの居る空間と、ハイネの居る空間。
隣り合ってはいるが、この空間を隔てる境界はどう足掻いても越える事が出来ない。
だから、槍で直接打ち合う事は出来ない。
それでも、ただ素振りしているよりは遥かに得るモノがある。
本当に打ち合っているつもりで、槍を振るうエルミアとハイネ。
荒い吐息と、槍の穂先が空を切る音が響く。
この空間において、時間という表現程意味の無いモノは無いが、それでも体感数時間程槍を振るった後、エルミアとハイネは自然と槍を降ろした。
「――今日は、これで終わりかな?」
「そう、させて貰おうか。ありがとう、勉強になったよ」
「経験になったなら何よりだ」
互いに腰を下ろし、緩やかな空気が流れていく。
「……そういえば、聞きたい事があるんだが」
「何かな?」
「以前聞いてから気になっていたんだが、"亡国の無敗戦隊"とは一体何なのだ?」
「ああ、それの事か……」
亡国の無敗戦隊。
それは伝説の魔法戦隊を指す呼称。
エルミアの言葉を受け、少しだけ表情が強張るハイネ。
言い辛い事なのかもしれないと察したエルミアは咄嗟に言葉を続ける。
「もし、言いたくないなら気にしないでくれ。無敗なのに、何故亡国などと付いているのか、単純に少し気になっただけなんだ」
「いや、別に大した事じゃないさ。隠すも何も、周知の事実だからな」
少しだけ、視線を上に向けた後。
ハイネは思い返すように、口を開いた。
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隣国から一方的な宣戦布告を叩き付けられてから数年。
俺達の国は、窮地に立たされていた。
列強国の物量と装備の質で押され続け、瘦せ我慢を続けるのも限界が来ていた。
次々に戦線が崩壊していき、敗北を積み重ね、戦禍が徐々に首都へと延びていく。
その劣勢を逆転するべく、秘密裏に戦況を打開する秘密兵器の開発が行われた。
魔力によって稼働する兵装、魔法戦機。
俺達の持つこの武器が、それだ。
遠近両用、ありとあらゆる状況に対応出来る新兵器であり、これが実戦に投入されれば、この劣勢を引っ繰り返す大逆転の切り札になる筈だった。
だが、そんな日は訪れなかった。
敵に居場所を悟られないよう、通信は必要最小限に抑えていた為、状況の発覚が遅れた。
状況が変わった事に気付き、大慌てで首都に駆け付け――その場で、膝から崩れ落ちた。
美しい街並みは廃墟と化し、守るべき民衆は路頭に迷い。
そして何より――敬愛し、信頼していた陛下……俺の親友は、既に断頭台に送られた後だった。
戦線は既に完全崩壊、国家元首を失い、首都は陥落。
誰にも言い訳出来ない程の、敗戦であった。
国は滅び、国土は既に他国間でどうパイを切り分けるかを話し合っている段階。
民衆にも諦観が漂っており、完全に終戦ムードになっていた。
秘密兵器を戦場に投入する事無く、戦争は終わってしまった。
戦えたなら、負けなかった。
だが、気付いた時には戦う為の場所も理由も無くなってしまった。
生き残りはしたが、戦争に疲れ切った国民達の目が、「もうやめてくれ」と、悲痛に物語っていた。
兵器の扱い方を学んだ時間も、鍛錬に励んだ時間も、何もかも、無駄になってしまった。
全てを失って、遺されたのは――手元に在る、新兵器。
このままこの国に……もう俺達の国は無くなってしまったが、残っていても、この兵器が接収されるのは容易に想像出来る。
その後に起こるのは、この兵器を用いての更なる侵略戦争だ。
この力は、俺達の国を護る為のモノだ。
侵略の為の力なんかでは、断じてない。
侵略国家にこの力を譲り渡すなど論外。
仕えるべき主も失って、守るべき国民からの賛同も得られない。
だから俺達は――逃げ出した。
せめてこの兵器が、他の奴等の手に渡らないように……
―――――――――――――――――――――――
「――戦って死ぬ事すら出来なかった、無様な敗残兵、それが俺達なんだ」
「無様などと……」
同じ軍属として、通じるモノがあったのだろう。
エルミアとハイネの間に、重苦しい空気が漂う。
そんな空気を笑い飛ばすように、爽やかな笑みを浮かべるハイネ。
「俺達はそういう――設定さ!」
「……え、設定?」
ポカンと口を開けたまましばし硬直するエルミア。
「エルミアも聞いてるだろう? 俺達カードは皆、団長の願いによって生まれた付喪神だ。付喪神にそんな過去が本当にある訳ないじゃないか。そんな過去があったという、設定でしかないんだ」
カード達が生まれる前から持っていた過去という代物は、己と言う人格を形成する為に与えられた資料、そんな程度の価値しかない。
何なら全て無くても問題無い位だ。
「存在しない過去に振り回されるなんて馬鹿々々しいじゃないか、重要なのは未来だ、違うか?」
自らが手にした武器を誇示するように前へと突き出すハイネ。
「未来を後悔にしない為に、俺達は武器を取るんだ。そうだろ?」
「――そうだな。私も、これ以上後悔はしたくないからな」
戦友を護れず、首都をズタズタにされ、挙句自らの命すら失った。
それが、エルミアにとっての後悔。
もう二度と後悔はしたくないから、こうして鍛錬の日々を送っている。
「やっぱり、どこかで時間を取って本格的に打ち合ってみたい所だな。団長に上申してみるか」
「もしその時があれば、是非とも! あ、でもお手柔らかに……」
自分にとっても得られるモノが多いと、エルミアも乗り気だ。
だが、ハイネのパワー数値を思い出したせいで、ちょっとだけ腰が引けるエルミアであった。
自身の効果込みでパワー4000なのでハイネはエルミアよりパワー的に格上です。
ましてや撃ち始めちゃったらもーお手上げ。




