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デスマーチからはじまる異世界狂想曲( web版 )  作者: 愛七ひろ
第六章

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6-8.ファッションショー

※2018/6/11 誤字修正しました。

 サトゥーです。Gは1匹見つけたら30匹は居るので、いつも噴霧式殺虫剤で一網打尽で片付けていました。

 盗賊も一網打尽にする方法があればいいのですが……。





 ノウキーの街を出て最初の3日は平和だったが、続く2日ほどの間に、3回も盗賊に遭遇した。


 いずれも7~8人までの小規模な盗賊だったので、アリサとミーアの魔法で先制した後に、獣娘達が突撃して無力化している。


 一番最初の戦いではミーアが酸の霧(アシッド・ミスト)を使ったんだが、あまりに凄惨な火傷だったので、次からは盲目の霧(ブラインド・ミスト)刺激の霧(マスタード・ミスト)に変えてもらった。

 オレも最初の戦いでは無力化に活躍したんだが、獣娘達が戦い足りなさそうだったので、2回目からは獣娘達に任せて、いつでもフォローできる位置から見守る方針に変えた。獣娘達は、レベル的にも戦闘経験でも盗賊に後れを取る事は無かったので、オレの出番は無かった。


 前回で懲りたので、捕まえた盗賊達を人里まで連行するのは止めておいた。アリサの魔法で眠らせて、服以外の装備を剥いだ後に蔦のロープで縛って放置した。装備を取り上げられては、盗賊稼業も廃業だろう。無理に続けても、返り討ちに遭うのが関の山だ。

 一応、失血死しないように、彼らの上着を裂いてつくった包帯で止血だけはしてある。巡回中の伯爵配下の軽騎兵が、数時間ほど後に通りかかるはずなので、そこまで生かしておくためだ。

 念の為、彼らを括り付けた木に「盗賊」と書いた紙をピックで打ち付けておく。


「まったくテンプレを守らないやつらよね~」

「てんぷれ~?」

「美味しいのです?」


 本日2回目の盗賊との遭遇に、アリサがご機嫌ナナメだ。

 ポチの言葉に「テンプラ食べたいな~」とかボヤきながら、馬車の床をゴロゴロしている。


「どんなテンプレだ?」

「普通、盗賊との遭遇って、盗賊が美女とかお金持ちの馬車を襲っているところを、かっこよく助けるのがセオリーじゃない?」


 そんなセオリーは知らん。


「アリサ」

「何? ミーア」

「金持ち」


 ミーアがそう言ってオレを指す。


「美女」


 ミーアが他の娘達を指す。


「うかつっ! あたし達がテンプレで助けられるべき存在だったのね!」


 アリサが頭を抱えて唸っている。ミーアはそのリアクションを見て満足そうだ。いつものお澄まし顔だが、よく見ると口元が綻んでいる。

 ポチとタマに加えてナナまでアリサのマネをして頭を抱えて困ってるアクションをしている。ナナの動きがぎこちないが、そっとしておこう。





「ご主人さま、青い人たちです」


 御者をしていたルルの呼びかけに応えて、御者台に出る。ルルの言う「青い人たち」は伯爵領の兵士達の事だ。彼らの服が皆青いからそう呼んでいるみたいだ。


「我らはクハノウ伯の騎士団の者だ。代表者を呼んでくれ」

「私が代表者のサトゥーといいます」

「ほう若いな。この街道は盗賊の被害が頻発している。護衛も無しに旅をするのは危険だ。一度街に戻って、傭兵を雇った方がいい」

「ご心配ありがとうございます。優秀な護衛が守ってくれるので、大丈夫です」


 そういって幌馬車の幕を開けてリザの顔を見せる。

 リザ、その肉食っぽい微笑み止めて、怖いから。


「ふむ、なかなか強そうな護衛だな。だが、護衛は外から見える場所に乗せておいた方がいいぞ、盗賊への牽制になる」


 そう忠告してくれた後、形式的にオレの身分証と馬車の中を確認して満足したのか、騎士さん達は巡回に戻った。





「じゃ~ん、可愛い?」


 そう言って、アリサが目の前でくるりと回る。ワンピースの肩や袖、裾にフリルをあしらった可愛らしいやつだ。そういう服を着ていると神秘的な紫の髪とあいまって、本当にファンタジー映画の登場人物みたいだ。


「うん、可愛い」

「えへへへへ~」


 素直に誉められると思っていなかったのか、ちょっとキョトンとしてから、テヘヘという感じで恥ずかしそうに照れている。ちょっと新鮮だ。


「かわい~?」「見て~なのです」


 そう言って、アリサとお揃いの服を着たポチとタマが現れた。アリサと同じようにクルっと回ってみせる。


「ポチとタマも可愛いよ」

「わ~い」「やった~です」


 スカートの裾が浮かぶのが楽しいのか、目を回すまでクルクル回っていた。


「街で、布を買ってきてくれてたから、持ってた服にフリルを付けてみたのよ」

「なかなか器用だな」

「前は結構、イベント用の服を自作してたからね~」


 どんなイベントかは聞かない方がいいだろう。ポーズを決めるのが様になっている。

 自慢気だったアリサの顔が、急に凍る。後ろを見るとナナがポーズを決めていた。


「マスター、可愛い?」


 可愛いというか、眼福です。


「ナナ! 服着て、服!」


 ナナが地面に捨てた服を、ルルが素早く拾ってナナの前を隠す。

 下は皆と同じドロワーズなんだが、上半身にはブラジャーをしていた。ハーフカップでちゃんと立体縫製してあるヤツだ。街で売っているのを見かけなかったから、アリサが作ったんだろう。


「アリサ、器用だな」

「ま、まあね」


 アリサは誉められつつも微妙そうだ。


「マスター、可愛い?」

「可愛いというより、色っぽいな。ナナ、異性の前で、無闇に服を脱がない様にね」

「はい、マスター」


 オレは努めて冷静な声で言う。無表情(ポーカーフェイス)を熟練者レベルまで上げておいたお陰で、動揺が声に出るのは防げた。

 ナナは「色っぽい」という評価に満足したのか、ルルに渡された服を素直に着る。

 ルルが反応してくれなかったら、ガン見して動けなかったかもしれない。2人きりだったら理性が危ないところだ。だから、ルルの素早さを恨んではいけない。でも、もう少し遅くても良かったのに……。


「服を作ったのは、3人分だけ?」


 取り繕うように話を戻すオレに、アリサが話を合わせてくれる。


「うん、一度に全員は無理だったからね。わたし用の試作品を見て、ポチとタマが目をキラキラさせてたから、先に作ったの」

「次、私」

「はいはい、次はミーアね。ルルとリザさんはその次になるけどいい?」

「うん、いいよ」

「わたしは、その様な華やかな服は似合いませんので」

「似合うって、そうだエプロンにフリルつけてあげようか? 若奥様っぽく~」


 女子トークに花を咲かせる姿は珍しい。実に心が和む。

 その声を背後に聞きながら、お昼の支度に戻る。リザに教えてもらいながらレパートリーを増やしているところだ。いくら美味しくても毎日、毎日、狼肉のステーキだと飽きる。


「後は灰汁(あく)が出るので丹念に掬っていきます。その時にスープまで捨てると勿体無いので、布を張ったこちらの容器で漉して、鍋に戻します」


 材料を適当に切って煮るだけだと思っていたけど、意外に手間が掛かってるんだな。


 リザに教えてもらいながらだったが、なかなか上手くできた。

 肉はオレの代わりにルルが焼いてくれたんだが、食事中のポチとタマの訴えかけるような視線に負けて、後からステーキを追加する事になった。


 よし、次のお昼は教育スキルの検証も兼ねて、ルルにステーキの焼き加減の極意を伝授しよう。





「まんぞく~?」

「美味しかったのです~」

「はあ、至福~」


 そう言いながら転がる三人の横で、オレは調合をしている。最近はミーアとナナも後片付けに参加しているので側にはいない。


 魔核(コア)を指で砕いて、乳鉢に入れる。普通は胡桃割り機みたいな道具で砕くんだが、この道具が実に使い勝手が悪くて一回で使うのが嫌になった。今では、こっそり指で砕くことにしている。

 乳棒で丁寧に磨り潰しては瓶に移していく。魔核(コア)の種類によって秘薬のランクに差が出るようなので、元の大きさや色で仕分けてから混ざらない様に瓶を分けた。ラベルを貼るのも忘れない。


 魔法屋の子が、粉にした魔核(コア)が不安定だと言っていたので、どの程度不安定か試してみるか。


 オレは、木板の上に耳かき一杯分の粉を置いて魔力を籠めてみる。1ポイントほど魔力を込めただけで「ポンッ」と音を立てて破裂してしまった。厚さ3センチほどあった下の板も裂けている。

 まどろんでいたポチとタマが、跳ね起きてこっちをキョトンと見ている。アリサも目線で非難してきた。「驚かせてごめん」と謝って実験に戻る。


 それにしても、同量の火薬よりも威力がある気がする。もっとも、俺の知ってる火薬は花火や爆竹くらいなので、比べるのが間違っているかもしれない。


 たしかに、普通の人なら1個分を破裂させたら死にそうだ。


 小皿に魔核(コア)の赤い粉と安定剤を入れて混ぜる。安定剤が白いので、混ぜると桜田麩(さくらデンブ)みたいだ。


 魔力付与台の上に小さく切った油紙を置き、その上に混合した粉末を1グラムほど載せる。魔力付与台の端にある調整器を操作して、教本通りの値にセットする。あとは魔力付与台に魔力を注ぐだけでいい。

 1個あたり10秒ほどで魔力添付が終わり秘薬が完成した。AR表示では秘薬1(+5)となっている。完成した秘薬は、教本にある薬包紙みたいな折り方で畳んで、小袋に入れておく。あとで纏めてストレージに入れよう。


 コツが掴めたので、2回目からは10グラム単位で練成を進める。

 10分ほどで100個分の秘薬ができたので、作るのを止めた。

 次に、その秘薬を使って、魔力、体力、スタミナの回復用魔法薬(ポーション)を、各10本ずつ作っていく。1度に5本ずつ作れる上に、秘薬以外の中間素材を先に作っていたのもあって、それほど時間が掛からずに作成できた。


「アリサ、これを仕舞っておいてくれ。使うときの判断は任せる」

「ほ~い」


 半分はアリサの宝物庫(アイテムボックス)に仕舞っておいてもらう。


 オレが練成の道具を片付けたのを見て、ポチとタマが馬車の準備を始める。

 午後の御者はリザの番だ。


 午後は襲撃してきそうな盗賊や獣もいないし、スクロールの作り方の再調査でもするか。


 魔法欄に「(シールド)」が増えた日に、すぐ魔法書を検索したのだが、巻物(スクロール)の作り方は載っていなかった。

 セーリュー市で買った本だけじゃなく、アリサやゼン、トラザユーヤの魔法書を調べても載っていなかった。

 検索ワードを変えて試していたときに、魔法道具やゴーレムの作り方はあったんだが、肝心の巻物(スクロール)の作り方は見つけられなかった。


 その翌日からは、毎日時間を作っては魔法書を読み漁って、作り方のヒントを探している。今のところはまったく手がかり無しだが、呪文の種類や魔法理論には詳しくなってきた。


 もちろん、魔法道具やゴーレムにも興味があるのだが、わりと大規模な設備が必要そうなので当分は手が出せない。レシピのあった魔法道具の中でも仕組みの簡単なものなら試せそうなので、今度、ヒマを作ってチャレンジしてみよう。


 はやく、料理だけでなく魔法のレパートリーも増やしたいものだ。



 話が、話が進まない~


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 盗賊を一網打尽にする方法・・・あるよ?メテオww
[一言] 主人公が魔法を使えるようになるまで時間がかかりそうです。アニメでは最初のダンジョンで使ってましたよね。 初級魔法であれ呪文なしで使えないはずの魔法を使って ました。原作では呪文の詠唱がネック…
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