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デスマーチからはじまる異世界狂想曲( web版 )  作者: 愛七ひろ
こぼれ話

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18-46.ひな祭り

※本日でデスマ&愛七ひろweb作家10周年です! 読者の皆様、ご愛読ありがとうございます!


「雛祭り~?」

「雛祭りってなんなのです?」

「女の子のお祭りよ! お雛様を飾って、雛あられやマシュマロを食べつつ女子会をするのよ!」


 タマとポチがアリサと話す声が聞こえてきた。

 そういえば、そろそろ三月だったっけ。


「肉は~?」

「ポチはお菓子も好きだけど、お肉さんの方が好きなのです」

「雛祭りで、あんまり肉料理ってイメージ無いわね。――チューリップとか?」


 アリサがオレに話を振った。


「チューリップってなんだっけ? 花の方じゃないよな?」

「骨付きの手羽元を唐揚げにしたヤツよ。チューリップって言わない?」


 ああ、そういえばそんな料理があった気がする。


「誕生日とかでよくお母さんが作ってくれたのよね~」


 アリサが懐かしそうに言う。

 この場合の「お母さん」は前世の母親の事だろう。


「興味ある~?」

「ポチもお肉のチューリップさんに興味津々なのです!」

「あはは、それじゃルルに作ってもらいましょう」


 子供達が厨房へと走って行った。

 しばらくして、アリサだけが戻ってくる。


「――というわけで、ご主人様、雛人形を作って」


 いきなりだな。


「見本も無しに無理だよ。アリサなら作れるんじゃないか? よくオレのフィギュアを作っていただろ?」

「あれはリビドーが溢れないと、ちょっと」


 アリサが「分かってないわね~」と言いたげな顔で肩をすくめる。


「それに私の拙い技術で、伝統工芸に手を出すのは恐れ多いわ」

「なら、折り紙の雛人形にするかい?」

「それでもいいけど、ちょっとチープな気もするのよね~」


 アリサが腕を組んで考え込む。


「アリサ」


 ナナと一緒に外から戻ってきたミーアがアリサに声を掛けた。


「どうしたの、ミーア」

「良いアイデア」


 ミーアが自信満々といった顔で言う。


「お雛様」


 自分を指さす。


「お内裏様」


 オレを指さした。


「わたし達が雛人形になるって事?」

「ん」


 アリサの答えに、ミーアが頷く。


 今さらだけど、ミーアは雛祭りを知っているらしい。

 たぶん、エルフの里に日本文化を持ち込んだ勇者ダイサクの影響だろう。


「雛壇を揃えるなら、人数が足りないんじゃないか?」


 上の二人だけならいけるだろうけど、三人官女とか五人囃子とかを入れたら少し足りない。


「足りない二人分はゴーレムでいいじゃない」

「ん、十分」


 ちょっとシュールになりそうだけど、厳密にしなくても大丈夫だしね。


「まずは衣装を作りましょう! ご主人様とミーアも手伝って」

「任せて」

「アリサ、私も参加希望だと告げます」

「それじゃ、一緒にやりましょう」


 そんな感じで、今日はリアル雛人形の衣装作りとあいなった。


「衣装って、十二単でいいんだっけ?」

「うん。そうだけど、全部着たら重いし、襟の所だけ布を重ねて縫うわ」


 方針が決まったので、アリサとミーアと三人で衣装作製を始める。


「ごしゅ~」

「リザがたくさんチューリップの肉を取ってきてくれたのです!」


 衣装が完成間近の頃にタマとポチが部屋に飛び込んできた。


「チューリップの肉?」

「ご主人様、渡り鳥の群れを見つけたので狩ってまいりました」

「槍で渡り鳥を?」

「はい、魔刃砲を拡散気味に使いました」


 伝説の技もリザにとっては狩猟の道具らしい。


「――これで全員分、完成っと」

「ん、完成」


 アリサとミーアがお雛様の衣装でポーズを取る。


「カワイイと告げます」

「皆の分もあるわよ」

「私もお雛様がいいと主張します」

「タマも~?」

「ポチだってお雛様したいのです!」


 予想はしていたけど、やっぱりお雛様役の取り合いになった。

 リザが仲裁してくれたけど、最終的に全員がお雛様役をするという玉虫色の結論に達した。


 もちろん、恥ずかしがるリザも一緒にお雛様だ。


「それじゃ記念撮影するわよ。――はい、チーズ」


 撮影の魔法でパシャリと撮影したが、アリサ以外のメンバーはキョトンとしたままだ。

 そういえば、「チーズ」で通じるはずがない。


 幸い、2の発音はシガ王国でも笑顔に近い形になるので、「1+1は――()ぃ」というかけ声で事なきを得た。


「あれ? ルルは?」


 衣装作りの時はいたのに――。


「お待たせしました」


 ルルがチューリップの唐揚げが山になった大皿を持って登場した。


「いい匂い~?」

「唐揚げ山脈さんさんさんなのです!」

「鶏肉はすべからく素晴らしいですが、唐揚げが至高だと私は思います」


 獣娘達が超反応した。


「とても良い匂いだと絶賛します」

「ううっ、お腹の虫が騒ぎ出したわ」

「ポチもムシさんがピヨポヨと大合唱なのです」

「タマも腹ぴこ~?」


「――むぅ」

「ミーアちゃんにはお団子と酒精を抜いた甘酒を用意してありますよ」

「ん、感謝」


 花より団子というか、お雛様よりもチューリップみたいだね。


 ――おっと、食事の前に。


「ルルも一緒にお雛様をしよう」

「はい!」


 記念撮影を終えた後は、唐揚げやお団子が主役のお雛様会を開いた。

 遅れてやってきたヒカルや白銀メンバーも、人間お雛様をしてお祭り騒ぎだ。


「シガ王国のお祭りにするのも楽しいかもね」

「これは良い商材になりそうです」

「ティファ、試算してくれるかしら?」

「はい、エル。お任せください」


 ヒカルのつぶやきに、エチゴヤ商会の支配人とティファリーザが本気で商売のネタとして考え始めてしまった。

 この様子だと、来年の三月三日は全国的に雛祭りになりそうだ。


 まあ、それはそれで楽しそうだけどさ。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] >「骨付きの手羽元を唐揚げにしたヤツよ。チューリップって言わない?」  ◇ ◇ ◇  あれ? チューリップって手羽先じゃないの?
[一言] お雛様もお内裏様も本来は男雛女雛一対を指す言葉で、有名な童謡の作詞家のミスのせいで男雛がお内裏様、女雛がお雛様と誤用されるようになったらしい。 本作でもその誤用がそのまま伝わったんだろうなぁ…
[一言] まずは10周年おめでとうございます。 で本編ですが^^; 時系列が書かれて無いですが、久しぶりのアフターストーリーかな?
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