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デスマーチからはじまる異世界狂想曲( web版 )  作者: 愛七ひろ
こぼれ話

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18-SS1.朗読

※これは13章の王都滞在中のこぼれ話です(少し短め)。

※「迷宮都市の少年」はちょっとお休みします。


「ご主人様、絵本を読んでほしいのです!」


 ポチがお気に入りの絵本を抱えてやってきた。

 寝る前に、年少組オススメの絵本を朗読するのは、毎晩の習慣になっている。


「また、同じ本? 新しいのが何冊も届いて無かった?」


 寝間着に着替えたアリサが、髪の毛をナイトキャップにしまいながら尋ねる。


「この絵本を超えるお話がなかったのです」

「絵は可愛かった~?」

「それはポチも認めるのです! 挿絵は一〇〇点満点で三〇〇点だったのです!」


 ……満点とは。


 大人げなく突っ込みを口にしそうだったけど、ポチらしい表現なので微笑ましく見守る事にした。


「ポチちゃんはその本が大好きだもんね」

「はいなのです。デンドーさんなのですよ!」


 デンドーさん?

 殿堂入りの事かな?


「うふふ」


 ポチの話を聞きながら、ルルがシュシュで長い黒髪を一つに纏める。

 そのままで寝ると、寝返りを打った他の子に踏まれて痛いそうだ。


「そういえば王都で朗読大会があるって聞いた?」

「ロード大会なのです?」

「ろうど苦労?」

「違う違う、御本を読み聞かせる大会よ」

「それはとってもとってもグレイトなのです!」

「すごく凄い~?」


 アリサが説明すると、ポチとタマが目を見開いて驚いた。


「アリサ、詳細を希望すると尋ねます」

「私も興味があります。私達も朗読を聞きに行けるのでしょうか?」


 ナナとリザが興味津々でアリサに尋ねる。

 この二人も、意外と絵本の朗読を聞くのが好きなんだよね。


「聞ける」

「ミーアに感謝を。追加情報を求めます」

「明後日、公演。当日券あり」


 ナナの勢いに押されながら、ミーアが朗読大会の情報を口にした。


「きっと、ご主人様が一番なのです!」

「タマもそう思う~」


「オレは出ないよ?」


 キラキラした目でオレを見る二人には悪いけど出場予定はない。


「が~ん」

「なのです」


 しょんぼりする二人の前に、不敵な顔のアリサが立ち塞がった。


 ――まさか。


「こんな事もあろうかと!」


 アリサが変なポーズで声を張る。


「既にご主人様の大会出場申請は済ませておいたわ!」


 ドヤ顔のアリサがサムズアップをオレに向けた。


 実にアリサらしい。アリサらしいけど――。


「そういう事は、本人に断ってからやれ!」


 独断専行をしたアリサの頭に、軽く拳骨を落とす。

 アリサが「のぉおおおお」と叫びながら大げさに痛がるが、軽くスルーしてミーアから朗読大会のビラを受け取って目を通す。


「この課題図書ならなんとかなるか?」


 さっきポチがリクエストした絵本も、課題図書の中に入っている。

 これなら、何十回となく朗読したから今さら練習する必要もない。


「ふふふ、アリサちゃんの仕事に抜かりはないわ!」


 痛がるフリを止めたアリサが、ニヒルな笑みを浮かべて勝ち誇る。


「アリサ、反省」

「ごめんなさい」


 拳骨を見せながら言うと、アリサが素直に反省のポーズを取った。

 もしかしたら、本当に痛かったのかもしれないね。





 そして、朗読大会当日――。


『素晴らしい!』

『なんと臨場感溢れる朗読だ!』


 オレが朗読を始めると、客席からちらほらと驚きの声が漏れ始めた。

 審査員席の人達は真剣な顔で聴き入ってくれている。


 ここまで評価されると少しむず痒いね。


 客席のポチやタマも拳を握りしめて見守ってくれているようだ。


『……あれ? なんだか?』


 中盤を過ぎる頃、絶賛してくれていたお客さん達が微妙な顔を見せ始めた。


 ――なんだろう?


 それでも気を散らさないよう集中して朗読を終える。

 客席のポチとタマを始め仲間達がスタンディング・オベーションで讃えてくれた。


 だけど、結果は予選敗退。


 その理由は審査員の一人が教えてくれた。


「序盤は凄く良かったんだけど、中盤から単調になって、終盤は少し駆け足気味だったから、もう少しバランス良く練習した方がいいね。練習や努力は君を裏切らないからね」

「はい、ご助言ありがとうございます」


 本選に向かう審査員にお礼を告げ、オレは皆のいる客席に向かう。


 それにしても、バランス良くか――。


「ああ!」


 理由が分かった。


 あの本はポチのリクエストで何十回も読んでいたけど、いつもポチとタマが途中で寝てしまうので、後半を朗読した事がほとんどなかった。


「なるほど、確かに練習は裏切らない」


 ほとんど読んだ事のない中盤から後半が拙いのもむべなるかな。


「これからは寝落ちする前に後半も読めるようにペース配分を工夫しないとね!」

※次の更新は、2/9(日)の予定です。



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ISBN:9784040761442



― 新着の感想 ―
[気になる点] 迷宮都市の少年の続き ラキシスは目が悪そうなのですが、この世界のメガネは価格がまだ高いのでしょうか。 一応は存在していたような気が。 アリサがソトゥにかけさせようとしてましたし。
[良い点] 大好きなお話だけに途中からではなく毎回きちんと初めから読んで貰うというところがポチ達らしいですね。 今日こそは寝落ちしないようにと気合を入れているポチ達の姿が想像できてほっこりします。 […
[一言] サトゥーは歌も絵画も彫刻も、スキル頼りで技術こそ天才でも感性が壊滅的だから、出来上がる作品もいまいちというのが一貫した評価でしたねw ほとんど読んだことがなければ微妙な評価になるのも納得です…
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