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デスマーチからはじまる異世界狂想曲( web版 )  作者: 愛七ひろ
第十六章

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16-6.聖骸動甲冑(1)

※2017/8/7 誤字修正しました。

※2017/8/6 一部修正しました。


 サトゥーです。徳川の埋蔵金を初めとした宝物を探す特番はわりと好きです。事前に大ニュースになっていない時点で、探索が失敗した事が自明なのですが、それでも見てしまうのです。





「殿下、少しよろしいでしょうか?」


 新型飛空艇の竣工式の見物に向かう道すがら、オレは第一王子に賭けの件で相談を持ちかけてみた。

 相談内容についてはここまでの道中に、空間魔法の「遠話」をアリサとヒカルに繋いで打ち合わせてある。


 なお、賭けの敗北が確定した貴族達は、取り乱してオレに縋る姿が第一王子の逆鱗に触れてしまったらしく、頭を冷やすように命じられてここにはいない。

 今はそれぞれの小派閥ごとに分かれて作戦会議中のようだ。


 そのため、第一王子の傍にいるのは彼の護衛とオレ達だけなので、密談をするのに都合が良い。


「賭けの件か?」


 半歩前を歩いていた第一王子が足を止めて振り向く。


「はい――」

「賭けを取り下げて、無効にしたいという申し出なら却下する」


 オレの返事に被せるように、第一王子がそう言った。


「いいえ、そうではありません」


 オレが首を横に振ると、第一王子に意外な顔をされた。

 どうやら、「賭けを無効にしたい」と言いかねないと思われていたようだ。


「賭け草を受け取った後に、殿下に献上させていただきたいのです」

「ふん、悪びれもせず、この私に雑用を押しつけるような者は貴公くらいだ」


 オレの真意を悟った第一王子が、口元を皮肉に歪めてイヤミを言ってきた。

 先ほどの言葉の後に「しかる後に、殿下から元の持ち主に褒美として下賜してほしい」と頼もうと思っていたのだ。


 齟齬があったらまずいので、その旨を言葉で伝え、嫌そうにされながらも第一王子に承諾してもらった。


「褒美として下賜するならば、それ相応の苦労を各々(おのおの)にさせろ、という事だな?」


 第一王子の問いに首肯する。

 少々面倒だけど、第一王子も褒美をチラつかせつつ、実質無償で配下の者に命じられるからメリットがあるはずだしね。


「まったく、ペンドラゴン伯爵、(けい)はもう少し、普通の貴族の価値観と欲を覚えるべきだ」

「――欲、でございますか?」

「そうだ。小人の前で手の届きそうな場所に、飛びつきたくなるような宝物を並べるなという事だ」


 今回の金剛石のカギだけの事じゃなく、魔法や能力なんかも示唆していそうだ。


「はい、精進します」

「――そうしろ」


 第一王子がそう言い捨てて、再び歩を進める。


 彼がぼそっと呟いた「若いうちから生え際で悩みたくない」という言葉を聞き耳スキルが拾ってきたが、無表情先生(スキル)の助けを借りてスルーした。

 彼には海藻料理と頭髪再生機能付きのシャンプー&リンスを贈るとしよう。





「以上が対地支援飛空艇ゲルドゥベルの機能でございます」


 新型飛空艇竣工式の壇上では、王立飛空艇工廠の所長氏が熱弁を振るっていた。


 魔物のスタンピード対策機能が満載された新型飛空艇は、なかなか勇壮だったのだが、人々はどこか心ここに在らずといった雰囲気で、所長氏による解説を聞き流している感じだ。

 まず、間違いなく、聖骸動甲冑の噂のせいだろう。


 観客の反応が悪いせいか、所長氏が「ぐぬぬ」と言いそうな顔で歯を食いしばっている。


 王都周辺ということで搭載兵器の試射が後日という事も影響しているかもしれない。

 オレも国王直轄領の遺跡から出土した「魔砲」と呼ばれる古代兵器には興味があったので、ちょっとがっかりだ。


「見えて参りましたわ!」


 一緒にいたカリナ嬢が南西の空を指さして叫んだ。

 その声に観客達の視線がそちらに向かう。


「あれが聖骸動甲冑か――」


 オレは望遠スキルを頼りに、彼方に浮かぶ二台の大型飛空艇と、それらに吊り下げられた巨大甲冑をながめる。


 思ったよりも大きい。


 ヒカルが着ていたという話だったから、等身大なのだと思い込んでいたが、お台場で見たロボットくらいもある。


「……あれ、ジェネラルだ」


 王様の傍でヒカルがポソリと呟くのが聞こえた。

 確かに、AR表示では「聖骸動甲冑:将軍」となっている。


 気のせいか、ヒカルは嬉しくなさそうに見える。

 近づいてくる聖骸動甲冑を見上げて興奮する王や宰相と対照的だ。


 ヒカルが二人の傍を離れて、竣工式会場の外へと歩いていく。


「どうかしたのか、ヒカル」

「あ、イチロー兄ぃ」


 ヒカルに追いついて声をかけると、泣きそうな顔で振り向いたヒカルが寂しそうに微笑む。


「あれはね……亡骸なんだよ」


 ヒカルがポツリと呟く。


 そういえば「聖骸(・・)」動甲冑だったっけ。


「古い古い巨人の最後の生き残り達、魔族を滅ぼすことだけを望んで、フルー帝国の先陣で戦っていたの」


 一緒に戦った事もあるとヒカルが言う。


「でもね、一歩届かなかったの」


 うつむいたヒカルの表情は見えない。


「死にゆく彼らが口にした最期の願いを、フルー帝国の皇帝が叶えちゃったんだー」


 ――(しかばね)になっても魔族と戦いたい。


 そう巨人達は願ったそうだ。


「聖骸動甲冑は短時間なら成竜とケンカできるくらい強かったんだよ」


 ヒカルはぽつぽつと語る。


 大量の紅貨や宝物と引き換えに竜神様から貰った『竜焔玉』の欠片を心臓にした聖骸動甲冑は、従来の魔力炉を遙かに超える出力を発揮したそうだ。

 本気で聖骸動甲冑を動かすと、中の人間が慣性や衝撃に耐えられずに死んでしまうため、三メートルほどの動甲冑あるいは無敵甲冑と呼ばれるパワードスーツを着込んでから乗り込むらしい。


 なお、竜焔玉そのものはフルー帝国とオーク帝国の戦争終盤に使用され、迷宮都市の西方に広がる広大な砂漠を作ったそうだ。


「それでね、テンちゃんを仲間にした後だったかな? 滅んだフルー帝国の工廠跡に埋まっていたこの子達を見つけたの」


 ヒカルによると「聖骸動甲冑」は四機あり、終戦時に「将軍」と「覇王」の二機のみになっていたとの事だ。

 ヒカルの使っていた魔法戦特化型の「賢者」は猪王戦で大破。

 もう一機の「聖者」は最終決戦の少し前に、心臓部を暴走させてオークの軍団と一緒に消滅したらしい。


「本当は戦争が終わったら、すぐに墓所で眠らせてあげたかったんだけど、わたしは王様するのがヘタでさ。あの子達の助けなしに王国を復興することができなかったんだよ」


 涙を流しながら、無理に笑顔を作るヒカルを胸に抱き寄せる。


「でね、王様を代わるときにシャロリック君が約束してくれたの。自分の代の間に必ず王国を平和にして、あの子達を誰にも見つからない場所で眠らせるって」

「なら、今度はオレが約束しよう――」


 すすり泣くヒカルの髪を撫でる。


「――絶対に(・・・)誰も見つけられない場所に彼らを眠らせてあげるよ」


 まずは偽装スキルの限りを尽くして、聖骸動甲冑と同等性能のニセモノを用意してみせよう。

 もっとも、ヒカルの今の気持ちを伝えたら、王様と宰相はすぐさま聖骸動甲冑を元の墓所に返してくれそうだけどさ。


 でも、それだと「絶対に見つけられない」聖骸動甲冑を探して、人生を棒に振る冒険者や好事家(ディレッタント)が出てきそうなんだよね。





「ぎるてぃ?」

「ミトってば、どうしちゃったの?」

「ああ、ちょっとね」


 ミトに肩を貸して孤島宮殿へと戻ってきたところ、特別講演を終えて戻っていたアリサ達に出迎えられた。

 一緒に行っていたはずのシスティーナ王女は、講演内容で気になる事があったとかで、王城の禁書庫に篭もっているそうだ。


 オレはミトを寝かしつけた後、アリサ達に先ほどの話を伝えておく。


「ふーん、ミトたんもハードな人生送ってるわね~」

「ん、苦労人」


 軽い口調ながら、アリサは心配そうな視線をミトの部屋の方に送っている。


「それで、ご主人様はどうするの?」

「うん? 誰も気がつかないようなニセモノと交換して、誰も見つからないような場所に埋葬しようと思ってるよ」


 もちろん、王様に話してからね、と付け加えた。


「うん、それがいいと思う」


「本当にそんな事ができるんですか?」


 うなずくアリサの横で、常識人のゼナさんが尋ねてきた。


「今すぐは無理ですよ。聖骸動甲冑をスキャンして構造を確認してからですね」


 王城の格納庫の一つで、王立研究所の人達が調査を始めているらしいんだよね。





「――王祖様がっ?!」

「なんたることっ」


 久々の勇者ナナシで、王様の部屋を訪れ、先ほどのミトの話を聞かせる。


「そ、そんな……臣は王祖様にお喜びいただけるとばかり……」


 同席していたケルテン侯爵が、地面に土下座のようなポーズでうなだれた。

 喜んでもらえると思ってサプライズ・プレゼントをしたはずが、相手を悲しませた事に深い後悔を覚えているようだ。


「仕方あるまい。その辺の事情は伝わっていなかったのだろう?」


 なにせ、聖骸動甲冑と乗り込むときに着用する動甲冑が、混同して伝わっていたくらいだからね。


「後でニセモノと交換しておく。見つけた場所だけ教えてほしい。ミトの話だともう一機眠っているそうだからな」

「いえ、ナナシ様。遺跡にあったのは持ち帰った一機のみにございます」


 オレの問いに、ケルテン侯爵がそう答えた。


「誓えるか?」

「はい、王祖様と王家、そしてケルテン侯爵家の家名にかけて誓います」


 オレの問いかけに、ケルテン侯爵が即答した。


 ふむ、それなら、聖骸動甲冑「将軍」を回収した後にでも、もう一機の聖骸動甲冑――「覇王」という名前らしい――を探さないとね。


「分かった、信じよう」


 ケルテン侯爵が不安そうな顔でこちらを窺っていたので首肯してやる。


 我ながら偉そうな態度だね。

 注意しないと傲慢さんに捕まりそうだ。


 なお、ニセモノとの交換は国王からすぐに許可を貰えたので、すぐに倉庫に忍び込んで聖骸動甲冑をスキャンしておいた。

 動力炉は謎の動力源で駆動する聖樹石炉の亜種のようだったので、見た目だけそっくりなヤツを作ろうと思っている。


 一応、国王からの命令で、内蔵魔砲と動力炉の解析にはストップをかけてもらっておいた。





「――小型魔砲を内蔵しているうえに、一度に100体の巨大ゴーレムを作り出して使役する機能か……」


 オレはスキャン結果を解析し、その内容に舌を巻いていた。

 現代の魔法兵器より格段に優れている。


 古代フルー帝国の技術は凄いね。


「サトゥー」


 ノックの音がして、システィーナ王女が入ってきた。


「頼まれていた魔砲の資料を探してきましたわ」

「ありがとうございます」


 彼女が王城の禁書庫から持ってきてくれた資料は三冊。

 残念ながら、魔砲に関しては技術資料はなく、魔砲を使った時の威力や来歴などについて書かれたモノだけだった。


「古代ララキエ文明の遺跡から見つかった発掘品を、フルー帝国が再整備して使えるようにしたもののようですね」


 システィーナ王女が資料のページを開いて教えてくれた。


 ララキエか……天罰事件の時に、二万年の時を超えて復活していたけど、今は元の海底に沈めてある。

 あの事件で助けた半幽霊とホムンクルスの義理姉妹が墓守のような事をしているはずだ。


 ちょっとマップ検索してみたところ、ララキエ内だけでなく、ララキエ(ゆかり)の魔導王国ララギや海洋国家イシュラリエの領海内やボルエナン近海の海龍諸島にも魔砲の残骸が沈んでいるようだ。

 2万年も海の底にあって無事なモノは少なく、海龍諸島に沈んでいるアダマンタイト製の古代船くらいにしか残っていない。


「サ、サトゥー、それは?」


 オレが空間魔法の「物品引き寄せ(アポート)」で、古代船から魔砲を取り出してみせたところ、なぜかシスティーナ王女に驚かれた。

 ストレージからの出し入れは割とよく見せているから、何を取り出したのかが知りたいのだろう。


「ララキエ王朝時代の沈没船の中にあった小型魔砲です」


 何種類かあったのだが、聖骸動甲冑に搭載されているのはこの口径だったので、これを選んだ。


「ちょっと工房に行ってきます」

「ええ、行ってらっしゃい」


 なんとなく疲れた口調のシスティーナ王女と別れ、ニセ聖骸動甲冑を作りに向かう。

 頑張れば明日の朝までにできるだろう。



※次回更新は下記の予定です。

  8/8(火)12:00  新刊発売直前、記念更新「16-7.聖骸動甲冑(2)」

  8/10(木)12:00 新刊発売日、記念更新「16-8.リーングランデの里帰り」

  8/13(日)18:00 定期更新分「16-9.セーラの覚悟」

 (上記タイトルは予定です。執筆が間に合わなかったら……ごめんなさい)


※ララキエ姉妹については「15-40.天罰(9)」もしくは書籍9巻をごらんください

※2017/8/6 ナナシの口調が13-34より前のモノだったので、訂正しました。


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・最新11巻とコミカライズ版5巻は、8/10(木)ごろ発売予定です。

 また、活動報告に[デスマ11巻の見どころ&帯付き表紙公開]を公開しました!

 ネル&謎の美少女のキャラデザも公開中です


・同時期発売の月刊ドラゴンエイジには、コミカライズ5巻の掛け替えカバーが付くそうです。


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