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デスマーチからはじまる異世界狂想曲( web版 )  作者: 愛七ひろ
第十二章

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12-16.朝食会のお誘い

※2014/9/1 誤字修正しました。


 サトゥーです。昔と違って遠方でもメールで頻繁にやり取りできるせいか、距離を感じる事が少なくなった気がします。

 でも、実際に会ってみると色々と話す事がでてくるのが不思議ですよね。





「お爺様が朝食をご一緒にいかがかと仰っているのです」


 お互いに再会の挨拶をした後、セーラが切り出した用件がソレだった。


 相手が妙齢の女性なら是非もないお誘いの言葉だが、相手が爺さん、それも国家の重鎮ともなれば朝食もミーティングのようなモノだろう。


 はて? 公爵がオレを朝食に誘うのは、オレを旗下に抱え込む勧誘をする為なんだろうか?

 オレ達がミスリルの探索者になった件だけでなく、リザがシガ八剣の第一位さんに勝利した件もあるから、可能性は高そうだ。


「それは光栄ですが、私のような下級貴族が公爵様の朝食会に呼ばれてもいいのでしょうか?」


 あの暢気な公都の貴族さん達が疎むとも思えないが、全員がオレに好意的なわけではないだろう。

 ロイド侯やホーエン伯の派閥の人は大丈夫そうだが、自由の翼関係で敵対した形になっているボビーノ伯の派閥の人間からは逆恨みされていそうだ。


「大丈夫ですよ。あの姉様でさえ認めたサトゥーさんですもの」

「――それは光栄ですね」


 姉様って勇者ハヤトの従者のリーングランデ嬢の事だよな?

 彼女に認められたような記憶が無いのだが、もしかして、勇者との勝負で勝ったから認めてくれたとかだろうか?


 断るわけにもいかないし、オレは公爵の朝食会に参加する旨をセーラに伝え、ここまで空気扱いだったトルマやカリナ嬢も交えてお互いの近況を語り合った。


「では、巫女長どのの体調が思わしくないのですか?」

「いいえ、体調を崩されているわけではないのですが、あまりお元気が無いのです。外出どころか聖別された奥の間からさえ、めったに出てこられないのです」


 どうしたんだろう?

 何か新しい神託でも受けたのかな?


「いいえ、新たに受けたのは迷宮都市に現れると預言されていた魔王が討滅されたという神託のみです」


 そういえば、そろそろ勇者ハヤトとの定時連絡の時期だったはずだ。

 イタチの帝国に出現を預言された魔王の件がどうなったか尋ねないとね。


 ……残り5体だっけ?

 世界同時出現とかは止めてくれよ。


 そんな不吉な想像は思考の彼方に投げ捨て、交流欄のメモ帳に「巫女長の見舞い」という予定を追加した。

 王都の用事が一段落したら、足を運ぶとしよう。


 会話の流れを変える為だろう、トルマが変な事を言い出した。


「兄の話だとサトゥー殿は迷宮都市でも・・モテモテだそうじゃないか」


「でも」とはなんだ。

 オレがいつそんなにモテたっていうんだ――いや、年下にはそれなりにモテていたっけ。


「昔から、年配の方や小さい子には好かれるんですよ」

「まぁ、サトゥーさんったら」


 オレが冗談めかしてそう答えるとセーラはお淑やかに笑い流してくれたが、カリナ嬢が微妙な反応だ。


「……小さい子、だけじゃない」


 カリナ嬢がぶつぶつと呟いているが、「聞き耳」スキルがあるオレにしか聞こえないような小さな声だ。

 そうか、オレの主観だと年下ばかりだが、この体の年齢だと同い年や年上の子もいるんだっけ。


「だけど、どこかの小国の王女や同年代の貴族令嬢とも仲が良いって聞いたよ?」


 相変わらず空気を読まないトルマが、カリナ嬢の雰囲気を無視してそんな発言をする。

 セーラまで真剣な表情でオレの答えを待つ。


 王女って、のじゃ姫ミーティア殿下の事かな?

 同年代の貴族令嬢はゼナさんかデュケリ准男爵の娘さんの事だろうか?


「どちらも、ちょっとした事件で知り合っただけの知人ですよ。特別な関係ではありません」


 オレがそう断言すると女性陣から安堵したような吐息が零れた。

 カリナ嬢は彼女達に会った事があるから、どんな関係か判っているだろうに。


「なんだ、そうなのか。サトゥー殿も若いんだから、もっと社交界で浮名を流そうよ」

「「トルマ叔父様!」」


 トルマの不埒な発言に潔癖なセーラとカリナ嬢から叱責の声が飛ぶ。


 ……そういう発言は男同士の時にしようよ。





 手紙では頻繁にやり取りをしていたが、こうして会話すると色々と手紙には書いていない微妙なニュアンスの違いが補完できていい。


 主にセーラから公都の孤児院や人々の様子を教えてもらいながら、オレの方も迷宮都市での孤児院経営や探索者育成校の話を伝える。

 迷宮での活躍譚はなるべくあっさり気味に端折っておいた。


 ナナが気にしていたアシカ人族の子供達の近況も教えてもらったので、後でナナに伝えておこう。


 それにしてもカリナ嬢の人見知りは相変わらずだ。

 オレやトルマが話しかけた時は普通に会話するのに、セーラが話しかけても「はい」とか「そうですね」みたいな一言で答えを返すので会話が続かない。


 まるで、セーラに隔意があるみたいな印象になってしまう。

 その度にトルマが「カリナは相変わらず人見知りだね」といったフォローをしていたので、セーラも機嫌を損ねていないようだ。


 大体の近況を終えた辺りで、飛空艇での事件の話をトルマに聞かれた。


 オレは請われるままにビスタール公爵襲撃事件の顛末を話し、代わりにロイド侯が疑われている件がどうなったのかを教えてもらった。

 ロイド侯は自ら不名誉な審議官による審問を受けて、潔白を証明したらしい。


 疑いが晴れたのは喜ばしいが、結局、差し入れを持っていけなかったな。


 それから、迷宮都市を出発する間際に、カリナ嬢が告白じみた勝負を挑んできたのがトルマの入れ知恵だと判ったが、セーラの前だし小さな事に目くじらをたてるのは止めておいた。


 その代わり、王都に詳しいトルマに、王都の隠れた観光スポットや夜の歓楽街のお店を案内してもらう事になった。もちろん、ゲイバーは禁止だ。

 ちゃんと「案内してもらう店の種類」は言外に隠したので、カリナ嬢もセーラも気付いていない。


 セーラやトルマはオーユゴック公爵と一緒に陛下の晩餐に招かれているそうなので、楽しい会話を途中で切り上げ、二人を見送った。





 二人の姿が見えなくなると、カリナ嬢が謎の問いかけをしてきた。


「サ、サトゥーは、セーラ様を妻にするおつもりですの?」

「いいえ、セーラさんとは友人ですよ。そもそも巫女は還俗しない限り結婚なんてできませんよ?」


 セーラみたいな神託の巫女が、還俗させてもらえるはずがないしね。


「そ、そうですの……」


 オレの横でほっと色っぽい吐息を漏らす。

 まさかとは思うが、本当にオレに惚れているのだろうか?


 恋する乙女のようなカリナ嬢の横顔を見て、少しドキリとした。


 ――これはイカン。


 カリナ嬢とはきっちり線引きをしておかないと、外見が好みなだけにうっかり・・・・と一線を越えてしまいそうで怖い。

 そうなったら確実に結婚コースが待っている。自重せねば。


「それに――」


 丁度良い話の流れだし、言っておくか。


「――私の恋する方は遠い異国におられますから。セーラ様を妻に求める事はありませんよ」


 アーゼさんの事を恋人や嫁と言うと嘘になるが、「恋する相手」ならギリギリセーフだろう。

 既に何度も振られているが、アーゼさんが嫌がらない限り彼女に恋をしていたいと思う。少なくとも一、二年で挫ける気は無い。


「……う、うそ」


 カリナ嬢が反射的に否定の言葉を口にする。

 彼女の瞳から大粒の涙が零れるのが見えた。


 ……どうやら、迷宮都市を出るときの求婚は本気だったようだ。


 少々、罪悪感に胸が痛いが、出会いの多い社交界シーズン前に引導を渡しておいた方が、彼女の婚活の為だろう。

 オレはそんな言い訳で自分の罪悪感を誤魔化し、さらに言葉を重ねる。


「本当ですよ? 少し年上ですが可愛い方なんです」


 オレの精一杯のノロケを聞いて、カリナ嬢がきびすを返して自室に走っていった。


 悪いが、ここでカリナ嬢を追うわけにはいかない。彼女のケアはメイド頭のピナかアリサにでも頼もう。


 ……あぁ、久々にアーゼさんに会いに行きたい。


桜の精ドライアド」や「桜珠」のネタで遠話したのが最後だから、ずいぶん話してない気がする。


 ――まったく、基本的に振られる側だったから、振る側がこんなに辛いとは思わなかったよ。





「士爵様! 何かお城の様子が変です」


 オレの黄昏気味の気分を薙ぎ払うように、玄関ホールに駆け込んできた武装メイドのエリーナが騒ぐ。


「どう変なんだい?」

「騎士様達の往来が多いんです。しかも城壁内なのに襲歩ギャロップで駆けているなんて変です」


 ふむ、王都内に魔物が大量発生したのかとマップを開いたが、そんな事は無いようだ。

 騎士団の駐屯地の人の流れを見てみたら、三つほどの騎士団で頻繁に人が出入りしているのが判った。


 何があったんだろう。

 知っていそうな人間は沢山居るが、サトゥーで押しかけられる軍事関係の知り合いは少ない。


 陛下や宰相も忙しそうだし、興味本位でナナシで訪れるのは夜中にしようか。


 オレはエリーナに何か判ったら教えてくれと頼んで、一人厨房へと向かった。

 せめて、カリナ嬢がヤケ食いでもして気分を紛らわせられるように、クジラのカラアゲの山と何種類かのケーキを用意しておく事にした。


 この館は保温庫と冷蔵庫の魔法道具があるので、彼女が食べたくなった時にでも出してもらえばいいだろう。





 屋敷に引き上げたオレ達を、予期しない相手が待っていた。


「お待たせして申し訳ありません」

「何、構わぬ。先触れも出さずに寄ったのは私の方だ」


 聖騎士の白い鎧を着たジュレバーグ氏が、鷹揚に答える。

 応接室にはオレとリザとジュレバーグ氏、それから初めて会うシガ八剣、第3位の「雑草」のヘイム氏の四人がいる。


 ヘイム氏はリザの実力を測ろうと、先ほどから探るような視線を投げかけている。リザと同族だったらセクハラで訴えても勝てそうだ。


 ちなみにヘイム氏の鎧も聖騎士の白い鎧だったようだが、原型を止めないほど魔改造されていて判りにくい。とりあえず、肩に無意味な角を付けるのは止めてほしい。


「さっそくですが、どのようなご用件でしょう?」

「うむ、明日の夜、我が屋敷でシガ八剣を集めた晩餐会を開くのだ。陛下よりオーミィ牛の良い肉を下賜していただいたので、皆に振舞おうと思ってな」


 ――前に食べた御用牧場の牛肉は美味かった。


 横ではリザがお澄まし顔を取り繕っているが、内心は肉に心を奪われている気配がする。


「他にも新しいシガ八剣の候補達も招いているのだ。貴殿ら二人にも是非来てほしい」


 候補は同じミスリルの探索者のジェリルの他、5名ほどが来るらしい。

 さすがにシガ八剣、第1位自ら誘いに来てくれた晩餐会は断れないので、お邪魔させてもらう事にした。


 ジュレバーグ氏の屋敷には簡易の闘技場設備があるので、勝負を挑まれない為にも見える所には武器を装備しないようにしないとね。


 雑談の時にそれとなく二人に、先ほどエリーナが言っていた騎士達の件を話題に出したが、国防機密だと教えてもらえなかった。


 ――つまり、国防に関わるような事態が起きているのか?


※次回は 9/7(日) の予定です。


※カリナに引導を渡したサトゥーですが、カリナが諦めるかどうかは別問題です。

※研究所の所長秘書さんの話まで入れたかったのですが、ちょっと長くなりすぎるので次回に回しました。


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― 新着の感想 ―
[一言] 誘蛾灯なるモノがあるが、サトゥーは誘女灯と言うか歩くスィーツと言うか……
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