11-5.カリナの武器
※2/10 誤字修正しました。
サトゥーです。獣娘達ではありませんが、肉は好きです。というか、ベジタリアン以外で肉が嫌いな人は少ないのではないでしょうか。
関係ありませんが、昔読んだラノベのイラストでヒロインのシルエットに肉とだけ書かれたものがありました。
肉って、いいですよね。
◇
「ふう、サッパリしましたわ」
「待ってくださいカリナ様、腰帯がまだ結べてません」
「カリナ様、髪を乾かすまで動かないでぇ~」
母屋の風呂場で、旅の疲れを癒やしてきたカリナ嬢とエリーナ達が部屋に入ってきた。
オレ達はふだん風呂上がりにバスローブを使っているのだが、さすがにそれを着てリビングに来るとは思わなかった。
カリナ嬢は膝丈のを着ているので腰回りは無事だが、胸元がヤバイ。
深い谷間に吸い込まれそうだ。
ああ、悪魔が耳元で囁く。蛇に誘惑され「知恵の実」に手を伸ばしたアダムの心境だ――。
「ぎるてぃ。■■■■ 闇」
――幸せな映像は、ミーアの精霊魔法でカットされてしまった。
オレは、さっきの映像を忘れない。
絶対にだ!
「何? 魔法?」
「破廉恥」
「そーよ、そんなチート兵器で籠絡とかダメなんだから」
「カリナ様、その衣装ですと少々刺激が強すぎるので、申し訳ありませんがこちらのワンピースにお着替えください」
困惑するカリナ嬢に、ミーアとアリサの文句とルルのフォローが入った。
ミーアの魔法で造られた闇のカーテンの向こうでの会話なので、その様子は見えない。
もちろん、「遠見」の魔法を使えば見えるが、それでは覗きになるので自重した。
◇
ミーアの魔法が解除され、がっちりと胸元をガードされたカリナ嬢が部屋に戻ってきた。
彼女達は、旅装束の他は着替えを持たず、予備はカリナ嬢がさっき着ていたドレスくらいしか無かったらしい。
風呂に入った後に旅で汚れた服に戻すのも可哀相だったので、今日のところはナナやルルの着替えを渡してある。
どことは言わないが、少し窮屈そうだ。生地が悲鳴を上げている。
「明日の午前中にでも仕立屋を呼んで新しいのを作らせますので、今日のところはその服で我慢してください」
「前に貰ったドレスがあるから、別に新しく作らなくてもいいのですわ」
オレの申し出をカリナ嬢がすげなく断る。
風呂上がりのせいか、さきほどのバスローブでの登場のせいかわからないが、ほんのりと桜色に頬を染めていて少し色っぽい。
「太守夫人から晩餐とお茶会の招待状が届いているので、同じドレスで出席するわけにもいかないでしょう?」
「ワタクシは欠席します。断り状をお願い致しますわ」
そういう訳にもいかないので、しばしの問答の末に迷宮に挑むときに必要な装備品や武器防具などを新調するという事で承知させた。
それともう一つ。
「5日後に、王国会議の為に王都に向かって出発します。カリナ様も同行させるようにとムーノ男爵とニナ執政官の連名で指示が来ています」
「嫌ですわ!」
「決定事項です」
「い・や」
カリナ嬢が子供みたいに駄々を捏ねる。
「かりな、わがまま~?」
「ちゃんとギムを果たさないとケンリが怒られるのです!」
ポチとタマが援護してくれるが、微妙に説得内容が変だ。
「王国会議が終わったら、また迷宮都市にくればいいじゃないですか」
「でも、そのまま男爵領に戻れって言われないかしら?」
オレとしてはそれでもいいのだが、長い旅路を経てようやく辿り着いて5日でトンボ返りとかは辛いだろう。
「その時は援護しますよ」
「絶対ですわよ!」
援護はする。
絶対に迷宮都市に戻ってこられるとは断言できないけどね。
◇
「お肉さん、どうしてあなたはお肉なのです?」
ポチが絵本の肉を見つめて黄昏れている。
さっきの肉抜きの食事がそんなにショックだったのか。
オレとルル、それにミーアまでポチに付き合って肉抜きの野菜オンリーの食事だったのに。
タマは肉抜きじゃなかったけど、定量の半分だったので少し辛そうだった。
「ポチ、明日は、に――」
「もしかして! 明日からお肉解禁なのです?!」
オレの言葉に被せるように超反応したポチが、そんな事を言ってくるが、さすがに今回のはもうちょっと反省させるべきなので甘い事は言わない。
「――肉無しだけど、ポチの大好きなカレーにしてあげるね」
「しおしお~なのです」
ぬか喜びに終わったポチが、へなへなとクッションの上に崩れ落ちる。
大好きなカレーでも回復しなかったか。
タマが横から、こっそりとポチに渡そうとしたジャーキーを「理力の手」で取り上げる。
「だめ~?」
「ダメ」
「タマの気持ちだけで十分なのです。罪人のポチは罰を受けるべきなのです」
どこか微妙に演技チックなポチだが、チラチラとこちらを見ている様子からアリサの入れ知恵に違いないので聞き流しておこう。
◇
皆を寝かしつけ、カリナ嬢達の装備を作るために蔦の館の地下工房に移動する。
今晩は迷宮下層の調査に行こうと思っていたんだが、予定外の作業が増えたので明日の晩に延期だ。
寝間着姿のレリリルが出迎えて作業台の準備を始めようとするが、ふらふらと眠そうなので寝室に帰らせた。
そうだ、作業に入る前にもう一度、迷宮のゼナさん達の様子をチェックしておこう。
ゼナさんのマーカーを頼りに「遠見」の魔法で迷宮内の様子を覗き見る。
どうやら、夕飯前と同じく甲虫エリアで狩りをしているようだ。
隣の蟷螂エリアに移動していないか心配だったが、甲虫エリアならレベル20前後の迷宮甲虫か短角甲虫くらいしか危ない魔物は居ないから大丈夫だろう。
普通の探索者なら、湧き穴から溢れ出る迷宮コオロギが危険だが、ゼナさん達には範囲攻撃魔法が使える人間が2人もいるから特に危険もないだろう。むしろ、美味しい経験値の元だ。
安心したところで装備の作成に入ろう。
まず、カリナ嬢だが、剣はダメだ。
彼女は刃筋を立てるという事が上手くできないようで、ムーノ城で何本も剣を折ってしまいゾトル卿から使用禁止令がでていた。
彼女には鈍器が良いだろう。
ナックルガードやトゲ付きの籠手なども考えたが、迷宮内には接近戦が危険な敵が多いので長柄の武器を持たせたい。
フレイルやメイス、トンファーなどが考えられるが、ラカ由来の怪力があるので、ハンマーあたりが良いかもしれない。
総ミスリル製のハンマーが取り回しの速さと威力の両立ができていいのだが、カリナ嬢に器用な魔力操作ができるとも思えないので、鉄かミスリル合金製にするとしよう。
最初は鎚頭の小さめのヤツを作ってレベルが上がる毎に、大きくしていこうと思う。
鋳造のハンマーをサクサクと作成し、ムーノ男爵の印章を刻み込む。
軽く振ってバランスをチェックする。
ドワーフの里で使った大鎚を参考に作ったので1回で上手く作れた。やはり見本は大事だ。
防具はアリサ達の公開装備とおなじく鎧井守の革鎧でいいだろう。アリサが計測してきたサイズに合わせて鎧井守の革でベースの甲冑を作る。
念の為、胸部甲冑は3サイズ調整できるようにした。オレの目視とアリサの計測でカップ数が1~2サイズ違ったからだ。
カリナ嬢の鎧は動きやすさを重視した作りで、やっぱり手甲に格闘用のナックルガードを付けておく事にした。
エリーナ達には追加で、作り置きしてある普通の片手剣と丸盾を渡しておけばいいかな。
◇
「ああ、天国にいるようなフクフクたる匂いがするのです」
「ふくふく~」
馥郁の間違いだと思うが、露店から流れてくる焼き肉の匂いに目を閉じて鼻を突き出すポチとタマの顔が幸せそうだ。
さっき、お昼ご飯にカレーを食べたばかりなのに、「肉は別腹」という事だろうか。
「マスター、到着を報告します」
「おはよ、マスター」
「おはようございます、マスター」
シロとクロウを連れたナナが、抱えていた2人を地面に下ろす。
この2人はナナに影響されてか、オレの事をマスターと呼ぶ。
「発音が違います。『マしター』です」
「そう? マしたー?」
「マしターですか? ナナ様の発音と違いますけど……」
シロは年相応だが、クロウは小学校1年くらいの年なのに、やたらとしっかりとした物言いだ。
「ポチ、タマ。行きますわよ! ワタクシ達の戦いが待っているのですわ!」
ポールハンマーを担いだカリナ嬢が、気合いの篭った表情で迷宮へと続く西門を見つめている。
「サトゥー! 帰ってきたら、手合わせしていただきますわよ? 迷宮で急成長したワタクシをその身体で確かめさせてあげますわ!」
不敵に笑うカリナ嬢だが、言い方が少しエロい。
途中からしか聞こえなかった周りのギャラリーが、ざわざわしている。
特に含みのある発言ではなかったのか、ポチとタマに手を引かれたカリナ嬢を先頭に西門の向こうへ意気揚々と出発した。
さて、わざわざ見送りに来たのは用事のついでだ。
ギルド長からの呼び出しに応じて来たのだが、あの婆さまの場合、単に珍しい酒が手に入った自慢とかいう事もあるので油断できない。
「若様」
ギルド会館の横の路地から、小声でオレを呼ぶ声が聞こえた。
物陰から怪しく揺らめく繊手に誘われ、オレは路地裏へと足を向ける。
※次話は、2/16(日)の予定です。
活動報告にバレンタインSSがアップしてあるので良かったらご覧下さい。







