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デスマーチからはじまる異世界狂想曲( web版 )  作者: 愛七ひろ
第十章

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10-3.迷宮都市へ

※9/22 誤字修正しました。



 サトゥーです。浜辺というと海の家を連想してしまいます。やはり海で遊ぶなら、イカの姿焼きやトウモロコシ、具の無いカレー、伸びたラーメンは必須でしょう。実現のためには、まずトウモロコシを探さないといけませんね。





 キリク伯爵領沖から出発して、2日目に貿易都市タルトゥミナ近傍の海域までたどり着いた。このまま入港してしまうと、船を港に停泊させておかないといけなくなるので、昨夜のうちに人気(ひとけ)の無い浜に上陸して馬車に乗り換える事にした。


 久々の地面に馬達も嬉しそうだ。


 このあたりには魔物が多いせいか人里が無いが、山を一つ越えたところに寂れた街道があるので、そこを経由して貿易都市から迷宮都市へ向かう主街道を使おうと思う。


「マスター、夜間行軍は危険です。砂浜にて演習を希望します」

「はなび~?」

「花火がいいのです! しゅわーもいいけど、パチパチがいいのです!」

「ん」


 ナナの言う演習は、花火の事だ。

 魔物の目を惹きそうだが、近付いたら殲滅すればいいだろう。


 みんなに渡した短杖に、リクエスト通りの「幻花火ファイアワークス・イリュージョン」の魔法を掛けてやる。


「くるる~ん」

「綺麗」


 タマとミーアが両手に持った噴出し花火を持って砂浜をクルクル回る。


「ちゃんと、見ててよ!」

「おっけー」


 アリサやルルは、花火を使って闇夜に文字を書く遊びをしている。残像が目に残って文字に見えるらしい。『あいしてる』とか『LOVE』と書いてくるのかと思ったんだが、『よばいはいつ?』とかナナメ上過ぎるメッセージは止めてほしい。『だいすきです』と書いてくるルルの普通さを見習ってほしい。


「ヒヨコを希望します」


 ナナ?


「ヒヨコが希望なのです」


 2回言った。そんなにヒヨコがいいのか。どういう花火か予想が付かなかったので、短杖の先に火花を散らすヒヨコを生み出すようにしてみた。プリセットパターンに無い花火だったので、準備に時間が掛かったが、目だけワクワクした無表情のナナに応えるべく頑張った。


「素晴らしいヒヨコです。マスター、触ると消えます」

「幻術だから」


 いきなり触るとは困ったやつだ。光魔法タイプじゃなかったら火傷を負っているところだよ。もう一度、短杖に同じ魔法を掛けてやり、触らないように注意しておいた。


 オレはリザと一緒に、地味な線香花火を楽しんだ。


「良いものです」

「そうだな」


 いつの間にか集まってきていた、アリサ達にも線香花火を掛けてやる。


 海や森から無粋な魔物が接近していたが、タマの感知圏内に入る前に「誘導気絶弾(リモート・スタン)」で撃退しておいた。ゲームなら的確に襲ってくるのだろうが、魔物達の感知能力はそこまで高くないのか、幾度か鼻先に誘導気絶弾を当ててやると、気味が悪くなったのか警戒したのか、海や森に帰っていった。


 翌朝、綺麗な砂浜の誘惑に勝てず、海水浴を楽しんでしまった。先を急ぐ旅ではないのだが、このままだと何日もキャンプする事になりそうだったので、昼には切り上げて、旅路に戻った。





「何、この馬車。揺れが無くて気持ち悪い」


 揺れなくても文句が来るのか。困ったもんだ。


 この馬車は、以前のような幌馬車ではなく街中で乗るような小型の箱馬車だ。台車部分に自走機能があるだけでなく、客席部分の底部に薄型の空力機関を搭載してある。出力が低いので、最大出力でも短期間、地上数メートルを飛行するくらいしかできない。だが、常時10センチ程度の浮遊をさせる事で、揺れの吸収は問題なくできる。台車部分はきちんと接地しているので、外からは普通の馬車に見えるはずだ。


 客車と御者台は完全に分離されているので、2時間おきに客席と御者席のメンバーを交代している。今は、タマが御者のルルと一緒に御者台だ。ナナとリザは完全武装で、騎乗して並走している。


 寂れた街道だけあって何度か魔物と遭遇したが、雑魚だったのでリザの魔槍の一突きやナナの理術による遠距離からの魔法の矢であっさり排除されていた。いつの間にかナナの魔法の矢の同時発射数が、5本になっていてビックリした。


 その日の夕方には、貿易都市タルトゥミナが見えてきた。この都市は迷宮都市と同じく国王の直轄地だ。


 この貿易都市は、公都と同じく、都市の外にも街が溢れている。

 夕方になって閉門までに入市できない順番待ちの馬車や人が、城壁の外の街に一人また一人と流れていくのが見える。


 入市の時に割り込みしたのしないので、貴族同士が決闘になったりとややこしい事に巻き込まれつつも、なんとか閉門前に市内に入る事ができた。


 まったく、大人げ無い事はやめてほしいものだ。





 あまり高級な宿だと、人族以外お断りらしいので、亜人OKの宿の中でグレードの高い所を門番に紹介してもらった。


 確かに宿の内装も上品で、部屋も広々としているのだが、店員の慇懃無礼な態度が合わない。今日は、このまま泊まるが、次回は違う宿にしよう。


「まったく、獣人は抜け毛でベッドが汚れるから床に寝かせろとか何様よね!」

「酷いです」

「遺憾の意を表明します」

「むぅ」


 アリサ達も立腹しているようだが、肝心のポチやタマは――


「床もふかふか~?」

「アリサ、怒るとお腹が減るのですよ?」


 ――と、意に介した様子も無い。


 リザは、奴隷の扱いとしては納屋で泊まらせられないだけ上等だという態度を崩していない。


 宿の主に文句を言ったら、普通にその店員が叱られていたので宿の方針という訳ではないようだ。店員に謝罪されたタマとポチが「よきにはからえ~」「許すのです」と応えていたので根に持つのは止めておこう。





 シガ王国の国際貿易港という事だったので、少し期待していたのだが、他国からの輸入品が多少安いだけで、品目自体は公爵領の貿易港とさほど変わらなかった。


 唯一の収穫といえば、魔物の部位で作った装備品が、国外へは普通に輸出されているという事実だった。国内ではあまり人気が無いが、国外では高値で取引されているらしい。


 この貿易都市からは、王都と迷宮都市に向けて定期的に駅馬車が出ているらしい。3日に1本という事だが、1度に5台近い馬車がでるらしいので、道中は比較的安全らしい。その駅馬車に合わせて出発する行商人も多いのだそうだ。


 駅馬車は2日前に出た後なので、もう1日滞在してから出発した方がいいと門番に勧められたのだが、他人と一緒の方がトラブル対処が面倒なので、そのまま出発した。


 山を3つほど越えた所から結界柱が目立ち始める。この辺りは王国の穀倉地帯なのだろう。見渡す限りの畑と言うのは、こちらの世界に来て初めて見た。温暖な気候なので、すでに作付けが始まっているようだ。


 幾つかの街を抜け、王都、迷宮都市、貿易都市を結ぶ交差路に、ケルトンという都市があった。この街はさほど特筆する場所も事件もなかったのだが、王都の流行だという衣装や布、それに柔らかい白パンが売っていた。公都と違い、王都方面は米が栽培できるほど水が潤沢ではないそうで、麦というかパンが主食なのだそうだ。


 麦を挽くための風車が村々にあるので、なかなか牧歌的な光景が見れる。あとはチューリップでも栽培していたらオランダにでも迷い込んだように思いそうだ。


 ケルトンと迷宮都市の中間にあるフルサウという都市を越えた辺りから、徐々に村の数が減り、次第に荒地が目立ち始めてくる。


 時折存在する村々には、ちゃんと風車や結界柱があるのだが、それまでの村と比べると明らかに土地が痩せている印象を受けた。


 そして、迷宮都市の手前の最後の山を越えると、ついに迷宮都市が遠方に見えた。勿論、この距離から見えたのはオレだけだ。山の向こうは一県丸ごと入りそうな広い平地だが、迷宮都市までの間に村は無い。幾本かある街道には、数キロ毎にバス停のような休憩所が作られているようだ。一度、その休憩所に寄ってみたが、雨風が凌げる事と、水量の少ない井戸が併設されているだけの簡素なものだった。


「すな~?」

「風がジャリジャリするのです」


 山を越えた辺りから、黄砂のような細かな砂が風に混じるようになった。迷宮都市の向こうに見える山脈を越えると広大な砂漠があるそうなので、そこから飛んできているのだろう。


 ルルの美容のためにも、「気体操作(エア・コントロール)」の魔法で馬車や馬の周りに、砂混じりの風が来ないようにする。もちろん、ナナとリザも馬車の近くに移動させた。


 荒地とは言っても植物が生えていないわけではない。雑草だけでなく低い潅木なども疎らに生えている。中には珍しい物もある。サボテンみたいな外見だが、やはりサボテンなのだろうか? AR表示では迷宮サボテンとなっていたので、サボテンで合っているようだ。


 迷宮都市の近くまで来ると、セーリュー市の迷宮の近くに作られていたような聖碑が等間隔に建てられているのが見える。街道と直交するようなラインで無数に並んでいるようだ。マップで確認したら、砂漠前の山脈まで半円状に聖碑が並べられているのが判った。旅行記にも記述があったが、この聖碑のラインのお陰で、迷宮が王国側に延びない様に制限しているのだそうだ。


 迷宮都市の向こう側には漆黒の山がある。旅行記によると、あの下に迷宮があるそうだ。


 街の正門の両脇には、阿吽の仁王像のように険しい顔の石のゴーレムが立っている。どちらもレベル40の強力なゴーレムだ。大理石の門に合わせたわけではないだろうが、見た目は大理石のゴーレムだ。


「きょじん~?」

「おっきいのです!」

「あれは、石のゴーレムであると告知します」


 窓から顔を出したタマとポチがゴーレムを見て驚いている。そういえば、2人は公都のゴーレムを見ていなかったね。エルフの里では動く人形(リビングドール)や多脚戦車みたいなゴーレムしか居なかったから、こういう普通のゴーレムは初めて見るようだ。


「強そうですね。魔槍でも傷つけられるか自信がありません。やはり、魔法で体勢を崩してから――」


 ナチュラルに攻略法を考え始めたリザをスルーする。


「遠かった~」

「ようやく着きましたね」


 御者席のアリサとルルが、感慨深げに感想を言っている。


「さあ、わたし達の戦いはこれからよ!」


 打ち切りENDみたいな宣言は止めてほしい。



※これで終わりじゃないので安心してください。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 打ち切りエンドネタで草
[一言] 旅行記みたいでした。 差し障りないところだけ抜粋して、最新版の「ペンドラゴン旅行記」とか、執筆出版しなかったのかな? 宰相さんとか、例のあの職を押しつけてからでも遣らせれば、名声から言って…
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