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デスマーチからはじまる異世界狂想曲( web版 )  作者: 愛七ひろ
第六章

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6-32.魔族との死闘?!

※2018/6/11 誤字修正しました。


 サトゥーです。仕事柄、ちょっとした使い捨てのスクリプトを組む事がありますが、慣れてくると10秒とかからずに作れます。

 新人にはよく驚かれましたが、彼らも1年後には同じ事ができるようになるのです。1年後もいれば、ですが。





「あの子達、どこに来てるの?」

「市壁のすぐ外だ。ゾンビ共に囲まれているみたいだ」

「ホント? 助けに行かなきゃ!」

「ああ、走っていっても間に合わない。誘導矢(リモート・アロー)で援護射撃するよ」


 アリサにそう告げて、市の正門側のバルコニーに出て魔法を使う。目撃されたときの用心に、銀仮面コスチュームに着替える。


「うはっ、変身? 変身スキル?」

「着替えが早いだけだよ」


 早着替えスキルはレアなのだろうか?

 アリサの異様なテンションに少し引きながら短杖を構える。無くても別に使えるんだが、あった方が魔法使いっぽいだろう。

 1回あたり50本の誘導矢(リモート・アロー)を3連続で掃射する。


 なぜか後ろ頭をペシと叩かれた。


「どうしたアリサ」

「魔法はそんなに連射できないものなの。人前で撃つときは初級でも10秒くらいは空けてから使いなさい」


 なるほど、アリサ先生の授業は勉強になる。


 とりあえず、リザ達は窮地から脱したようだ。20レベル台前半の魔物だったから、リザ達にとどめを刺させて経験値を稼がせたいところだったけど、安全第一だ。

 傍にいるオーユゴック公爵領の騎士団に目撃されたのが気になるが、ここから狙撃したとは思わないだろうから大丈夫だろう。


 市街をウロウロしている人間はいないようだ。火事場ドロボウなやつらがいるみたいだが、そいつらはマーキングだけしておく。こいつらが危なくなっても放置しよう。


 市外に逃げた者や城門に殺到した者達以外は、みな家の中に避難しているみたいだ。


 市内に突入したゾンビ達はまっすぐ城門に向かってくる。


 男爵達はなんとか城砦に移動できたようだ。偽勇者とオッサンが怪我をしているみたいだが、生きてるなら別に問題ないだろう。





「ねえねえ、その衣装は何? コスプレ? 言ってくれれば、そんなダサいのより、もっとかっこいいの作ってあげるのに! 紅い流れ星のコスとか黒い貴族団のコスとかいろいろ着せたいわ~」


 正体を隠せたらそれでいいんだが、アリサのオモチャにされるのはイヤだな。したり顔で「やっぱり仮面はロマンよね」とか言ってるのを聞き流す。


「森がヘンなのです」


 ポチが服の裾を引いてくる。


 そうだった、リザ達が心配で後回しにしていたが、森の中で巨人がピンチだった。

 幸い混乱状態の巨人は少ないみたいで、同士討ちにはならなかったみたいだ。やはりレベルが高いと抵抗(レジスト)し易いんだろう。


 さて、リザ達が梃子摺りそうなレベルの高いゾンビを誘導矢(リモート・アロー)で掃討しつつ、宝物庫(アイテムボックス)から木聖剣を抜く。


 これが魔族相手の実戦で、どの程度使えるのか試したい。本当はさっきのスプリッターくらいの雑魚魔族相手に試したかったんだが、衆人監視の中で装備するには悪目立ちしすぎるので諦めた。

 まったく通じなくても、その時は他の聖剣を抜けばいいだろう。


「アンタまさか、その木剣を使う気なの?」

「そうだよ?」


 呆れ顔のアリサに真顔で返す。

 奥の手が別にあるって言ったら、きっと「最初から一番強いので戦いなさい」って怒られそうだ。

 ワガハイ君と戦った時は一番強い聖剣を使ったんだが、今度の敵は直接戦闘力じゃなくて搦め手で来るタイプみたいだし、あまり強すぎる攻撃だとカウンターが怖い。





 ポチに市街や城門の監視を頼んで、オレは森側のバルコニーに出る。

 アリサも出ようとしたので押し止める。


「何?」

「森の中に看破というスキルを持つ者がいる。どの程度のスキルなのかはわからないから目撃されない位置にいてくれ」

「アンタはいいの?」

「ああ、名前も隠したから大丈夫だ」

「なっ」


 ゼンの事件の後に、スキルの精査ついでにメニューを確認していて気がついたんだが、交流欄の名前も変更できるらしい。

 もっとも無制限に偽名が付けられる訳ではなく、称号のように所持している名前のどれかか無しに変えられるようだ。オレの場合、「サトゥー」「イチロー」「イチロー・スズキ」「(名前なし)」の4種類から選べる。銀仮面のときは「(名前なし)」に決めた。


「あんたのメニューって本当にチートね」

「そうかい?」


 最初は地味とか言われていたのに、どんどん評価が上がっているようだ。

 術理魔法でもできそうな気がするし、「名前隠し」とか「偽名」みたいなスキルもありそうなんだけどな。


 レーダーに映る、魔族を示す幾つもの光点が急加速して森から飛び出てくる。


 まさか、奇襲か?


 咄嗟に誘導矢(リモート・アロー)をスタンバイさせる。


「な、何よ」

「魔族だ、森から飛び出てくるぞ」


 その言葉にアリサが、部屋の中央で杖を構え直す。


 いや、違うみたいだ。魔族は飛び出てくるんじゃない、何者かに打ち出されたみたいだ。その証拠に分体(スプリッター)は森の外に出るまでに消滅した。


 森の外に打ち出された魔族の本体は森の方に向いて空中に静止している。

 遠くてよく見えないが上下していないので、魔力で浮かんでいるんだろう。目を凝らして見ているとスキルが手に入った。せっかくなので有効にしておく。


>「遠見スキルを得た」

>「俯瞰視スキルを得た」

>「望遠スキルを得た」


 望遠と遠見のスキルの違いは何だろう? 後でアリサに聞いてみたが、遠見が小さいまま遠くのモノが見えるスキルで、望遠は遠くのモノが近くに見えるスキルらしい。前者は視界が狭まらず、後者は遠くのモノの細部がよく見えるスキルらしい。


「うう、もうちょっと近かったら魔法が届くのに」


 2キロ以上あるからな。


全力全開(オーバー・ブースト)を使えば届くんじゃないか?」

「無理無理、届くとは思うけど、あんなに遠いんじゃカスみたいな威力しか出ないわよ」


 ちょっとした思い付きで、宝物庫(アイテムボックス)から短矢(ボルト)とクロスボウを取り出す。クロスボウの方は、構造を確認するために一度分解した後に――そのまま元に戻すのもつまらないので――魔改造を施したヤツだ。やりすぎてリザでさえ弦を引けないモノになってしまった。


「ちょっと、普通の矢じゃ、届いても致命傷にはならないわよ?」

「そうなのか?」


 短矢(ボルト)を、切れ味の鋭いトロルスレイヤーの短剣で半分に切り裂く。ここでいつもの聖剣を使ったら、アリサに怒られる気がするのでこちらを使った。


 半分に裂いた短矢(ボルト)に、木聖剣と同じパターンを縮小して刻みつけ、そこに前に木聖剣で使った青液(ブルー)の残りを注ぐ。ストレージに収納してあったので、鮮度はそのままだ。


 青液(ブルー)を注ぎ終わった短矢(ボルト)を魔力付与台に載せて仕上げをする。一度やった手順のせいかもしれないが、ここまで30秒もかかっていない。


「アンタって、生産系のチートでも持ってるみたいな速さで作るわね」


 開きにした短矢(ボルト)を膠で貼り付け、細い金属片を丸めて固定する。


 よし、聖なる短矢(ボルト)の完成だ。

 コスト的には木聖剣の2割程度だ。使えるようなら、こっちの方がいいかもしれない。


 聖短矢(ホーリーボルト)に魔力を込める。

 アリサが木聖剣に魔力を込めたときに100MPでも大丈夫だったといっていたから、まずは50ほど注ぐ。


 大丈夫だ。

 続いて100MP。


 窓から漏れる光に気がついたのか、魔族がこちらを振り向く。

 牽制のために待機させておいた誘導矢(リモート・アロー)で魔族を囲ませる。


「魔族は、初級の魔法じゃ倒せないわよ」

「ただの牽制だよ」


 おや?


 アリサには牽制だと言ってみたものの、届いた魔法の矢が少しずつ魔族の体力を削っている。不死の王(ノーライフ・キング)の時みたいに瞬間的に体力が回復するとかは無いみたいだ。案外、魔法の矢の連射で倒せるかもしれない。


 200MPあたりで聖短矢(ホーリーボルト)が震えだした。リザの槍と同じパターンだな。これ以上注ぐと破裂してしまうだろう。


 さて、どの程度のダメージが入るかな?


 牽制の魔法の矢が繭状に魔族の周りを飛んでいるので、魔族は魔法の矢を避けるので精一杯のようだ。


 狙いを定めて、聖短矢(ホーリーボルト)を撃つ。


 それは発射後、数百メートルの所で小爆発を起こし――


「ああっ」

「やっぱ急造品じゃ無理だったかな」


 そこから急加速して飛んでいく。


 それは青い軌跡を描いて魔族に吸い込まれ――


「あれ?」


 ――黒い靄のような幾つかの環を残して空の彼方へ飛び去った。


 あまりにあっけない幕切れだが、ログにも「短角魔族(ショートホーン)を倒した!」と出ているので、ちゃんと倒せたようだ。


 出番の無かった黄金色の木聖剣で肩を叩きながら、黒い環が消えるのを見守る。


「ねえ、魔族は? こっちに来る?」


 アリサの位置からは、小爆発までしか見えなかったみたいだ。


「倒しちゃった」


 ちょっとおどけてみるが、キャラじゃなかったようだ。アリサが呆けている。よかった「テヘッ」とか付けなくて、本当に良かった。


「聖なる武器って魔族によく効くんだな」


 真顔で誤魔化す。


「なっ!? このチート野郎ぅ~~ わたしの出番がぁ~」


 脱力してへたり込むアリサだが、ユニークスキル持ちの転生者(どうるい)に言われたくない。


 巨人が令嬢らしき人物を市壁の上の通路に下ろしている。看破のスキルを持つラカとかいう魔道生物が見えない。小型なのか透明化できるのかのどちらかだろう。


 厄介事の予感がする。アリサ達を連れて、さっさとこの場を離れよう。





 予想されていた人も多いと思いますが、タイトル詐欺です。


 はじめは剣を投げる心算だったんですが、距離がありすぎたのでクロスボウに変更しました。


※6/9 交流欄の名前についての描写を変更しました。

※6/23 遠くの魔族を見るシーンで望遠関係のスキルを取得するように修正しました。


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― 新着の感想 ―
ラカはガチで人間側の味方だったのか… てっきり何か企んでいるのかと思っていたわ、すまん
[一言] 魔族「短角」討伐が事故だったなんて・・ 結果オーライ!
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