前頭への連絡
ま、ま、前頭っと……。
俺は同窓会の連絡を、数少ない男の友人である前頭に入れるためスマホを弄っている。スマホに入っている男の連絡先が一人だけなのを改めて思い知らされて少し寂しい思いが出てくる。
男女共学の学校に入学して、いまだに男性の友達が出来ていない事の証拠だからである。
少し女子と仲良くしているだけで別に俺に問題がある訳じゃない……、筈なんだが……。
ひょっとして自分でわかってないだけで問題があったりするのだろうか、……いや、まさかな。
弄っていたスマホから探していた前頭のアドレスが出てきたので、通話のボタンを押しプルルルルとコールが鳴る。
もし電話に出なかったらメール入れとくか……。と思いながら相手が取るのを待つ。
五度ほどコールが続いても前頭がとる気配が無くしょうがないので切るか、と思い始めたとき、まるでこちらの思いを読んだ様に電話が取られた。
「……もしもし」
しかし、スマホから聞こえてくる声は俺が知っている前頭の声では無かった。記憶にある前頭の声より幾分低く、落ち着いた声であった。聞こえてくる声にかけ間違いしたか! と一瞬心によぎったが今までにも何回か掛けた事があったのでそれは無いなと思い直す。
「えっと、前頭君のスマホであってますよね?」
「ああ、彰人のスマホだよ。ただ申し訳ないが少し席を外していてね」
「ああ、そうですか。では又後で掛け直します」
「……ふん、少し待ってくれるだろうか」
電話に出た声が若い印象の声だったので、おそらく電話にでた人は前頭の学校での知り合いだと思い、電話を切ろうとした俺にその声の主のから制止の言葉が掛かった。
……掛かったが、取り敢えず聞こえていない振りをして電話を切った。
……ふうっ。
俺は電話を切って一息つく。おそらく電話に出たのは前頭の学校……、清明の人だろうと思う。以前、前頭のから聞かされた教育係の先輩かも知れないし、もしくは友達かも知れない。
しかしどちらにせよ、あんまり関わりたくない!
只でさえ清明の絢爛に対する風当たりは強いのに、なんの言い掛かりを付けられるかわからないからな!
メールでも入れとくか、そう思い直しスマホをを手に取ると……、ちょうど良く着信音が鳴る。
画面に表示されていたのは前頭 彰人。
俺は電話に出るか少し悩む。普通だったらさっき出た人から話を聞いた前頭がかけ直して来た、と思うのだが……。もしかしたらさっきの人が掛けてきた可能性も無くはない。
俺は少し悩み……、通話ボタンを押す。
「君は少々あわてん坊だな……」
電話から聞こえてきた声に反射で切りそうになるがなんとか思いとどまる。
というかあわてん坊って……、少し鳥肌がたった。
……たったので電話を切る。
鳥肌が立つほどの体調不良に見舞われたのだしょうがない……。
しかし相手も然る者、あきらめが悪い。
再度電話が掛かってくる。仕方が無いので俺は着信ボタンを押して電話にでる。
「酷いじゃ無いか、いきなり電話を切るなんて」
「すいません電波が悪いので」
「そう……、なのか……? 電波が悪いんだったらしょうがないな……」
……案外チョロいのかも知れない。
「えーと、先程の方ですか? 何かご用でしょうか?」
如何にも最初にあった制止の言葉は聞いていませんよ、との体で話を切り出す。
向こうもさして突っ込まずこちらの質問に答えてくる。
「いや何、君は彰人とどんな関係なんだ……?」
まるで恋人浮気を疑う様な質問である。止めて欲しい。
それに俺の声は年相応の声である、その声を聞いて友達以外の関係を浮かべるのかコイツ……。
「……あなたが誰かわからないのにその質問に答えるつもりは無いです」
「そ……」
相手が何か言う前に電話を切る。
ふぅ……、予想以上だぜ清明の生徒は……。
俺は額の汗を拭い一息つく。
……そして再度着信が鳴る。
シツケーーーーーー!
再度電話をとる。そして同時に言い放つ。
「しつこいんだよ! この野郎!」
「ご、ごめん……」
しかし、電話から聞こえてきたのは友達の声だった。
「……あれ?」
「えと、……ごめん何か気に障ったかな?」
「あー、いや、ごめん人間違い。さっき前頭の電話を取った人にお前との関係を問いただされて」
「ご、ごめん。でも先輩も悪気があった訳じゃないんだよ……。あっ! 電話に出た人って僕の教育係をしてくれている先輩なんだ。凄く面倒見が良くて優しい人なんだけど、少し心配性で……」
前頭が先程の人……、学校の先輩についてのアピールポイントを話し始める。
しかし前頭……、俺はその先輩について全く興味がわかないんだ。ごめんよ……。
いくら俺のアドレス帳に男が一人だけでもさっきの人は遠慮したい。
俺は熱弁する前頭を遮って、同窓会の事を伝える。
「同窓会?」
「ああ、開催するらしいんだけど前頭はどうする?」
「……秦野君は行くの?」
「ああ、行くよ」
「わかった僕も行くよ! 飢えた野獣の群れに一人で行かせたりなんかしない!」
コイツ中学校時代クラスメートを飢えた野獣だと思ってのか……。
凄い危機感を持って生活していたんだな……。
なんにせよ、前頭は出席と。




