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撮影

 とうとう写真撮影の日が来た。

 本当に学校案内の写真を撮るのか疑問が残る所だが、頑張って良い物を作れるようにしたいと思う。

 天気も良く撮影をするにはとても良い日だ。

 休日にこの学校に来るのは初めてだが部活動の為か生徒を見かける。

 特に運動部などはグラウンドなどでいい汗をかいている。その様子を見学しつつ待ち合わせの場所まで散歩のように歩いていく。


 待ち合わせ場所は、今まで打ち合わせで使っていた生徒会室では無く事務の職員さん達が仕事をしている場所の会議室である。生徒会室のドアと違い簡素な作りのドアを開け中に入る。


「失礼しまーす」


 中に職員さんはおらず閑散としていたが、会議室で待ち合わせと言うことなので、気にせずに入っていく。

 以前に場所を案内されていたので、別段迷うことなく会議室には着きドアをノックする。


「どうぞ」


 ドアの向こうから入室許可の声が聞こえてきたので中に入ると、そこにはピンクの事務員さんとカメラマンとそのアシスタントさんとおぼしき人が居た。

 事務員さんは俺を見ると笑顔で迎え入れてくれ、カメラマンさんに勢いよく紹介をしてくれた。


「ああ~、お待ちしておりましたよ~! もう本当! 一日千秋ってなもんですよ! さぁこちらへどうぞ!」

「お、お早うございます。ありがとうございます」

「ええっ! お早うございます。ホラッ富樫さん! どうですか! 私の言ったとおりの美少年でしょう! それでいて性格も良いんですよ! 人気有りすぎて今日お休みなのに事務員が休日出勤してくるとかホザイたので全員来るなって厳命しましたよ!」


 凄いテンションだ……。どうやら楽しみにしていたのは他の事務員さんだけでは無くこの人もだな……。


「あっ、秦野さんこちらが本日撮ってくれるカメラマンの富樫さんと撮影を手伝ってくれるアシスタントさんです。世界で一番男性を撮った事があるカメラマンさんですよ。きっと秦野さんも綺麗に撮ってくれます! 楽しみですね!」


 俺では無く学校を綺麗に撮らなければいけないと思うんだけど……、目的変わって無いかな……。

 しかし紹介されたのでカメラマンとそのアシスタントの方に挨拶はしておく。


「今日は宜しくお願いします。秦野と申します」

「こちらこそ宜しくお願いします」


 そう言ってこちらにお辞儀をするカメラマンそして、それに続きとアシスタントの人も名乗り頭を下げてくる。カメラマンさんは四十代半ばぐらいの女性で、品のある人だった。

 こちらの世界では珍しくがつがつと積極的に来るタイプでは無いようで落ち着きのある穏やかな女性であった。


 なるほど……、この品のある所作や落ち着いた雰囲気が男性に受け入れられた要因なのかな……。

 そんな俺の感想を余所にピンクはテンション高く話し出す。


「どうです富樫さん? 握手とか求めてみたら? 秦野さんは優しいので応じてくれるかもですよ! 合法的に触れますよ!」


 ……この人今日の事が楽しみすぎて昨日寝てなかったりするのか? 冷静になってみろ目の前のカメラマンさんの表所が引きつってるから! 


「い、いえ……、遠慮しておきます……。そう言った事を求めると男性の方は嫌悪感や、不信感を持たれる事が有りますので、身体的な接触は出来るだけしないようにしております」


 おおっ! なんかプロっぽい職業意識だ! これが一流ってヤツか……、ピンクとは大違いだ。


「そ、そうでるよねー、いやー素晴らしいお考えです! 富樫さんに依頼して本当に良かったです」


 ……どうやら先程の一言で冷静になったのかピンクが慌てるようにして言う。

 カメラマンさんはその言葉を聞き、笑みを浮かべ穏やかに言葉を返す


「ありがとうございます。そう言って頂けると嬉しいです」

「いや~、ははっ……」


 ……できた大人とダメな大人の対比がすごく良く出来ているな。

 出来た大人のカメラマンさんは自分の仕事について話をし始めた。


「世界で一番男性を撮影したと言われていますが、私はまだまだだと思っています」

「そんな事は無いでしょう。富樫さんの事は世界が認めていますよ」

「ありがたいことです。……私は良い写真と言うのはどれだけ被写体を気持ちよくさせてできると思っています。その点を言うと私は自分がまだまだ未熟だと感じることばかりです。もちろん他のカメラマンに負けているとは思ってはいません、……しかし私がもっとモデルの方を気持ち良く、気分良くさせることができたらより良い写真を撮ることができると思っています。ですので今回の仕事も精一杯させて頂きますので宜しくお願いします」


 そう言ってカメラマンの富樫さんとアシスタントさんは俺とピンクに頭を下げた。

 そんな富樫さんに俺は気になっていることを聞いてみた。


「あのっ……」

「はい、何でしょう?」


 富樫さんは穏やかな顔で俺の声に応えてくれる。


「やっぱり、男性を撮るのって大変なんですか?」

「それは……、やはり簡単と言うと嘘になってしまいますね。男性の皆さんは写真に撮られるのがあまり好きでは無い方が多いですから……、自慢じゃありませんが私、ほとんどの人に訴えると言われました」


 ……うん、そうだね自慢じゃないね。

 でもなんでだろう……どことなく自慢気な雰囲気を漂わせているのは……。


「つい先日もお見合いの写真を撮った時のことですが。その時のモデルは可愛らしい男の子だったのですが……、」

「ですが?」

「ええっ、その……、生理的に無理と言われてしまい落ち込んだ所です」

「……………………」

「うん? どうかしましたか」

「いえ、貴重なお話ありがとうございました」


 偶然! 偶然だから! うん、きっと違う子が言ったんだ!

 こんな穏やかで落ち着いた人に、あの少年が言うはず無いもんな! うん!


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