簀巻き
目の前に布団で簀巻きにされている舞澄さんが転がっている。いや、転がされている……。
あの後、騒ぎを聞き付けた旅館の従業員達が集まって来た。マリアとその下で取り押さえられている舞澄さん、そして俺と場所を見て、何が有ったか察したのか従業員たちは顔を青くした。
……うん、そりゃそうだよね。せっかくこれから新規オープンって時に問題が起こったんだから。心中お察し致します。
「警さ……」
「あっ、お騒がせしてすみません。ちょっと間違って男湯の方に入って来ちゃた見たいで」
マリアが駆けつけて来た旅館の従業員達を見て、何か言おうとした所で俺が間に入る。
さすがにそこまで大事にするつもりは無いのだ。たぶん本当に間違って入って来ただけだろうし……。
しかし他の男性だったらこうは行かないだろう、俺は寛大な男である。感謝するように舞澄さん。
まぁ価値観が少し違うだけなんだけど。
「琥珀様!」
「いいからいいから」
怒るマリアをなだめながら、旅館の人達に大事にするつもりは無いと伝える。
少し後に母親達も駆けつけて来た。マリアが急に飛び出していったので事情がわからないが追いかけてきたらしい。
取り敢えずマリアと違い服はちゃんと来ていたので遅れたのだろう。マリアは母親達に事情を伝えると取り敢えず服を着に脱衣所に戻っていった。
その後、戻ってきたマリアは舞澄さんを部屋に連行し、部屋に入るやいなや布団で簀巻きにして現在に至る。
ちなみに舞澄さんは”ちがうんですの~”と良いながら、しくしく泣いている。
……とても哀れである。一応止めたのだが、最低これだけでもしておかなければ琥珀様の貞操にかかわります! とマリアと他二人からも強く言われてしまったので舞澄さんには申し訳ないのだが、しばらく簀巻きになっていて貰おう。たぶん直ぐにといて貰えると思うし……。
……多分。
「さて……、あなたはご自分が何をしたのかわかっていますか?」
「ちがうんですの! まちがっ、間違って入ってしまったんですの! 事故なんです!」
マリアが簀巻きにされ転がされている舞澄さんを見下ろしながら問いかけ、それを舞澄さんが必死になって事故だと、わざとじゃないと説明している。……説明しているが見られたのは事実だからな。俺だったから良かった物の他の男性だったら即警察沙汰になっていただろう……。こっちの世界は男に対するセクハラは結構きついから……。
そうなったら、この旅館ものぞきが出る旅館と言うことが知れ渡り、評判ががた墜ちするだろうし……、大変な事態である。
「……間違いと言いますが見たんでしょう?」
「えっ?」
「見たのかと聞いているんです!」
「そっ……それは……」
「……ほう、あなた家の琥珀君のを見た……と。」
マリアの言葉を聞いて口ごもる舞澄さんを見て、母親も目の色を変えて詰問している。
母親と菊水さんには、舞澄さんが間違って男湯に入って来たとしか言っていなかったからな……、この二人が来た時には俺は服を着ていたし……。今初めて俺の裸を見られた事を知ってしまったんだろう。
激おこになってしまった……。
前世で言うと、手塩にかけて大事に大事に育てていた娘だが最近まで嫌われており、ようやく親子関係が良好になってきた絶世の美少女である娘の裸を、何処の男かもわからないヤツに見られてしまった父親の様な感じかな……。
うん、激おこだね! 俺が父親だったとしても怒るね!
「あっあの……」
「見たのですよね?」
マリアの執拗な詰問に、見た物を思い出してしまったのか舞澄さんは顔を赤く染める。
母親はそんな舞澄さんを見て、目の前で転がっている少女が息子の裸を見たと確信したのか、質問の内容を変えた。
「……その、どう……だった?」
「どっ、どうだったとは?」
「う゛ぇ、いや、その色とか、その、お……大きさとか?」
「…………」
……おい! 母親何を聞いてるんだよ! マリアもこう言う時に何で黙ってるんだよ! 今こそ怒るところだよ! 不穏な会話になってきたのを感じ、三人の会話に入って行こうとした瞬間、今までおとなしくしていた菊水さんから話しかけられた。
「あっ、ああの」
「何ですか? 今ちょっと急いであの三人の会話を止めなければ行けないんですけど!」
「おお、女の子に裸を見られた時の感想をお、教えてください! あっ、あと今繰り広げられている会話を、どどどどんな心境で聞いているのかも!」
「今聞きますそれ!?」
「すすすいません! 知的好奇心が抑えられなくて……」
この引きこもり、割とアグレッシブに人の羞恥心を煽ってきやがる! それに謝りながらもスマホを準備してやがる……、聞くき満々である。
くそっ! なんて厄介な大人達だ!
素でこの状態なんだ! 酒が入ったらどんな事になるやら!
俺がこの後に起こる惨事に心胆を寒からしめていたら、ドアがノックされた音が聞こえた。
くっ、こんな時に誰だよ! マリア達は話に夢中になっているのでしょうがなく俺が出ることにする。
あっ、菊水さんを出すって選択肢はありません。
「はい、どなたですか」
俺がそう言いながらドアを開けると、そこには来た時にすれ違った大柄な女性が土下座をしていた。
……なんで?




