結果
応援と言う名のプレッシャーを受けながら、抽選機を当てたまま考える。ここで当てなければ酷いことになる。……何故なら後ろの方で、声がするからだ。
当たらなければ私の福引券をあげよう。
そんな声だ。それも一人では無く何人もである、応援と同じように次々と増えていく。驚異の伝染力である。……しかし、
そこまで福引にこだわってねえよ!
なんでこんなことに……。一等を引くまで福引券が補充されるのか? 途中で止めることは可能だろうか……。なんとなくダメそうな気がする。
これが引くに引けない状況というやつだろうか? 福引だけに!
…………さて引くか。
俺は手を掛けていた抽選機をグルグル回し、そして玉が出てくる。その色は……、金!
俺も、受付のおばさんも、周りの人達も静まり返る。そして数秒後、おばさんがにかっと笑い盛大に当たりの鐘を鳴らす。響く歓声! 掛けられる祝福の言葉、そして起こる胴上げだ! との声。
ちょっと待て! それはおかしい、コイツら俺に触りたいだけじゃ無いだろうな! 俺の思いとは別に集まって来る人達。
「ちょっ! 待っ……」
「待ちなさい!」
もう少しで触られると言うところで、静止の声が掛かる。その声で近寄って来ていた人達が止まる。
声の主は受付のおばさんであった……。おばさんは動きを止めた人達を見て静かに語り出す。
「貴女達、自分が何をしようとしていたのかわかっているの? 許可もなく男の子に触ろうとしていたのよ!」
「そ、それは……」
周囲にいた人達は貴重な男の子に酷いことをしようとしていた事に気づかされ、言いよどむ。おばさんはその人達に構わず話を続ける。
「確かにおめでたい事だし、祝いたい気持ちもわかる。」
「そうなの! お祝いしたいだけなの!」
「だからと言って! ……許可無く触ろうとするなんて、貴女達痴女になりたいの!」
「ふ、不純な気持ちじゃ……」
「そんな事関係ないの! もし触ってしまってこの子が女性恐怖症になってしまったらどうするの!」
「う、ううっ……」
おばさんに叱られ、集まって来ていた人達は項垂れる。
驚く事にここまで当事者である俺の出番が一切無い。……もう帰っても良いんじゃ無いかと思い始めた時に、おばさんがこちらを向く。
「ごめんなさいね、この人達も別に悪気があったわけじゃないから大事にしないであげて……」
「えっ、はい。まぁ何もされていませんし……」
「そう、ありがとう。じゃあ今景品持ってくるから」
そう言い、場を放れる。そして残される俺と項垂れた人達。
……放っておくか。俺はそう決めたのだが、そうは問屋が卸さない。落ち込んだ人達は次々に俺に謝罪の言葉を掛けてきた。それを俺が許すと、言っちゃえとばかりに頼みごとをしてきた。
「握手?」
「は、はい。いえ! 別に不純な気持ちじゃ無いんです! ただ、一等を引き当てた幸運にあやかりたいと思いまして! 決して触りたいとかではなく! いえ本当に!」
どう見ても不純な動機に見える。なんと言うかそこはかとなく触りたいと言う雰囲気が出ているのだ。
コレがスケベオーラというヤツなのか……。
周囲を見ると、周りの人も期待している様子が見受けられる。
俺はその人達見ると心を決め、返事をする。
「お断りします」
「神は死んだー!」
俺の返事を聞いた人達が崩れ落ちる。
まぁ結構な人数がいるし、別にアイドル目指してる訳でもないし。
そんなやり取りをしているとおばさんが戻ってきて景品を渡してくれる。その際泣き崩れいる人達を見て首をひねっているが、特に気にしない様にしたようだ。
「じゃあ、これ一等の景品ね。プレオープンの特別な物だから期限決まってるから気をつけてね」
「ありがとうございます」
俺が景品を受けとると、おばさんは笑顔で商店街を今後ともよろしくね、と笑顔で送り出してくれた。俺はおばさんにお礼を言って帰宅した。……しかし福引きをしに来ただけなのに妙に疲れてしまったな。
ちなみに帰りは焼き鳥を買い食いした。美味しかった。
家に着くと福引きで一等を当てたと報告をすると、すぐさま旅行の予定が立てられ来週の三連休に行く事となった。あっという間に旅館に予約も済み、後は当日が来るのを待つばかりとなったが、当たった招待券は四名分なので家族以外に誰か一人誘えるのだが、母親がお隣さんを誘おうかと言っていたので相手の都合が良ければ菊水さんが参加する事になる。
……あの人仕事大丈夫なのかな? まあ小説だから旅行先でも書けるのかも知れないな。
旅行先で仕事をしたいかは別として。
旅行先の名所やグルメ等を調べてみると、どうやら風光明媚な所らしく、癒される場所が数多く有るとのこと、食事に関しては魚も肉も美味しくその上美味しい地酒が多数あると情報が出てきた。
これは母親は酔っ払うな。……もしかしたら俺も。
でも、旅行先で羽目を外すなんて事は珍しくないし、許されるはずだ! だから飲んでも良いのでは無いだろうか? もちろん良いだろう。むしろコレこそが旅行の醍醐味だろうに。
こんな期待をしつつ俺は来る旅行の日を楽しみに待つこととなる。




