談笑
俺の目には三枝さんが笑顔で映っている、……いるのだが、なぜだろう? ちょっと笑って無いように思えるのだが……。
「琥珀さん? みのりですよ?」
心の中で名前を呼ばなかった事に気がついた! いや、まさかな……、そしていつの間にか名前で呼ばれている……。
「なにか?」
「いえ、なんでもないです……」
何故か自然と、返事が丁寧語になってしまう。
「ん~? 二人は知り合いだったの?」
「ええ、同じ中学校だったんです、中学では仲良くして頂いてました」
そうですよね? とこちらに顔を向け同意を求める、三枝さん……
「うん、そうだね……」
俺は素直に同意しておく、思い出と言えば、お昼ご飯を食べたぐらいしか思い浮かばないが……。
「琥珀さん」
「ん?」
「み・の・り、ですよ」
何故心の声が聞こえるのか……?
顔に出ているのかと、思わず手で顔を触ってしまった。
「へ~、そうなんだ。うらやましい……、琥珀君みたいな優しい男の子なんか、絶滅危惧種だよ」
「はい、私もお昼を一緒に食べて貰った事もあります」
「わっ、うらやましいです」
女子三人で盛り上がっていく、前世では、”女三人よれば姦しい”との言葉があったが、それはこの世界でも通用するらしい。
「えっ、え~と、さえっ……みのりさん、もう部活決めたの?」
何故か中学での俺の話に、話題を移している三人に割り込んで話を変える。
……というか最初はこの話をしていたよな? なんで俺の話になってるんだ?
中学校では、それ程女子と仲良くはしていなかった筈なのに、話題が尽きない事にも驚く……。
何故そんなにも俺の事を知っているのか……、それも当然の情報の様に話している事から、中学のクラスメイトにとってはあたりまえの事らしい……。
「あっ、はい。決めました」
「何処に入るんですか?」
柚香さんが興味深そうに訪ねる。
すると、みのりさんが微笑みながら答える。
「スーパーアーツ部にしました」
「わぁ、やっぱり人気あるんだね!」
「はい、私、これでも格闘技をしていますので、やはり興味深かったです」
「格闘技されているんですか?」
「はい、小さな頃からしています。スーパーアーツは武器ありですので、ちょうど良かったです」
「武器?」
みのりさんが格闘技をしているのは知っていたけど、武器を使用する武術をしているのは初耳だ。
「はい、剣術をしているので、私の使用する武器は刀ですね」
これでも結構強いんですよ、とみのりさんは言う。
はい、なんとなく雰囲気から分かります。
そんな話をしていると、結構時間が経ってしまっていたので、そろそろ帰る事にする。
「じゃあ、そろそろ帰ることにするよ」
「あっ、車がもうすぐ来るから、送っていくよ」
詩乃さんが帰ろうとする俺に、そう提案してくれた。……さすが貴族である。
「いや、大丈夫。電車で帰るから……」
否、との答えを聞いて、詩乃さんはがっくり肩を落とす。
「そっか~残念、一緒に帰れると思ったのに……」
「無理言っちゃだめだよ、詩乃」
俺はその姿を見て、少し悪いことをしたかな? という顔をして言葉を掛ける。
「あはは、そんなに落ち込まれるとは思っていなかったよ、ごめんやっぱり送ってもらって良いかな?」
もちろん演技である。最初からホイホイと付いていくよりも、一回断った事で安い男では無いと印象づけ、その上で落ち込んだ人の気持ちも汲むことが出来る、優しい男だと見せつけたのである。
……成功したかわからないが。
「ホント! 嬉しい! 私、男の子と一緒に帰るの初めてだよ!」
「私も嬉しいです。琥珀君が優しい男の子で良かった」
どうやら二人とも喜んでくれたようだ。……それにしても、こう素直に喜んでくれると、若干悪いことをしている気になってくる。
「みのりも一緒に乗っていく?」
詩乃さんはみのりさんにも聞いている、いつの間にか名前で呼ぶ程、仲が良くなっている。
「一緒に帰りたいのですが、私はこれから部活の体験入部に参加しようと思っていまして……、申し訳ありません」
「そうですか……、残念です」
柚香さんが言葉通りの残念そうな顔で言う。
そういえば、委員長はもう帰ったのかな? いやもう委員長じゃ無いけど……。
「みのりさん、委員長はもう帰ったのかな?」
俺はみのりさんなら知っていると思い聞いてみる。
俺の質問に、みのりさんは何処か答えづらそうな顔をしている。
「ねぇ、委員長ってだれかな?」
俺の言葉に疑問を持ったのだろう、詩乃さんが質問してくる。隣では柚香さんも不思議そうな顔をしていた。
「あぁ、ごめん。三島 百合って言う女の子。その子も中学が同じだったんだ。」
「ああ、なるほど、その子は中学校ではクラス委員長をしてたんですね?」
「うん、それであだ名が委員長だったんだよ」
「あれ? その三島さんってポニテの子?」
「詩乃さん知ってるの?」
「いや、知っているというか、……その子すっごい肩を落として、教室を出て行ったから。気になってたんだよ」
「肩を落として……?」
ちらりと、みのりさんを見ると、彼女は静かに話し出す。
「確かに今日の彼女は敗北者です……。しかし必ず彼女は立ち上がり戻って来る事でしょう……」
なんか少年マンガみたいな事を言い出した……。そりょあ、明日も授業があるから来るだろうよ……。




