お隣様2
塩を振った海老を網の上に置き焼いていく、ジューと音が鳴り、香ばしい匂いが立ちこめてくる。
「フワー、美味しそうな匂いだねー」
既に一杯やっている母親が嬉しそうに感想を言う。
実際に良い匂いが香ってきて食欲をそそる。
ホタテ貝も焼けてきた所で、少量のバターを乗せ、そして醤油を数滴垂らしていく。
これまた、香ばしい匂いがこちらも食欲を刺激する。
「そろそろ、良い具合ですね」
焼き具合を見ていたマリアが宣言する。
確かに海老の色も良い具合になっており、とても美味しそうである。
「いただきま~す」
母親が焼けた海老を取り、うれしそうに殻を取り頭からかぶりつく
「おはー、味噌が濃厚! 身もプリプリでうま~い」
そして、ビールをぐびりと飲む、そしてまた食べる。
「では、鯛飯とお刺身も持って参ります」
「あっ、あとビールも持ってきて」
母親がついでとばかりに頼む。
お客さんが居ることを忘れてるんじゃないかと思う態度である。
お隣だから仲が良いのか?
「菊水さん、こんなに美味しそうな物、本当にありがとうございます」
「ホントホント、ありがとうね」
改めてお礼を言っておく。
頂いた海産物はどれも大きくて新鮮な物だった。
「い、いえ、本当気にしないで下さい」
「菊水さんもどんどん食べて下さいね! って菊水さんから頂いた物ですけどね」
と、少しはにかみ、苦笑したように言ってみる……。
「いや! 本当お望みとあらば毎日でも持ってきます!」
「フフ、それは悪いですよ」
できれば、肉も持ってきて下さい。高級な奴でお願いします。
まぁ口には出しませんが……。
「お待たせしました」
マリアがお盆に鯛飯を炊いていた土鍋と、刺身の盛り合わせを持ってきた」
「さあ、鯛飯も来ましたし、食べましょうか」
「は、はい頂きます」
「マリアももうする事無いなら、一緒に食べよう」
「ありがとうございます、それではご一緒させていただきます」
マリアは基本的に食事は一緒に取っているが、お客様が居るときは別で取るようにしている、が菊水さんはお隣様だし大丈夫だろう。
「早くしないと、全部お母さんに食べられるからね」
「む、私はそんなに大食いじゃないよ!」
「……網の上に、焼けた海老やホタテが無いが?」
「うん、無くなったから、新しいの置いておいたよ」
どうだ、と言わんばかりの顔をしているが、お前が食べたんだよな?
しょうがないので、鯛飯を頂く。
土鍋に入っている物を見ると、既に身がほぐされていたので、後は盛るだけであったので、菊水さんの分もお茶碗に盛り渡す。
「どうぞ、これぐらいで大丈夫ですか?」
「ひゃあ! 恐縮です」
そう言って震えながら受け取る。
何だか、危険物を渡しているみたいである。
ついでにマリアと母親にも渡す。
「ありがとうございます」
「ありがとー」
さて、と自分の分も盛り食べ始める。
お味の方はどうか?
……すごく旨い、薄味で炊きあげられた味で、その中に鯛の旨味が凝縮されており、それに加え身の美味しさも加わり、絶品に仕上がっている。
「おいしいな」
「はい、そうですね」
「ほんとにね~」
マリアも母親も同意の声を出す。
菊水さんを見ると、こちらも美味しそうに食べている。
こんなに美味しい物を持ってきてくれた人だ、色々お世話をしてあげよう。ちょうど海老が良い具合に焼けていたので、それを取り菊水さんのお皿においてあげる。
取るときに母親の箸が伸びてきたが、それを阻止して取った。母親が若干ショックを受けた顔をしていた。
アンタさっき一杯食べたろうに……
「ありがとうございます」
お礼を言い海老を食べ始める菊水さんを見て、母親が質問をする。
「菊水さん、今も仕事大変なの?」
「え、ええまぁ……」
興味深い話題である。謎な人菊水さんの職業が何か凄い行きになる。
と言うか、母親知ってたのか……
「菊水様はどういったお仕事をされているのでしょうか?」
マリアも気になったのかそう質問する。
「俺も気になる、何の仕事をしているんですか?」
俺とマリアの視線に気圧されたのか、少しのけぞりながら言う。
「あの、その、少し小説などを書いていまして……」
そこに母親が口を挟む。
「すごいのよ~、人気作家なんだから」
「へ~、知ってる奴かな、何て名前ですか?」
そう言うと、がさごそとポケットをあさりだし、そこから一冊の本を取り出し、こちらに差し出す。
俺はその本を受け取ると、表紙を確認する、タイトルは『明日を貴方と』俺は知らないな、表紙を見ているとマリアが、あっ……と声をだす。
「マリア知ってるの?」
「知っていると言いますか、私も愛読しております」
「へ~、有名なの?」
「女子なら、誰でも呼んだことがある。それぐらい有名です。既に十年ほど続いております人気作です」
「うわ! 凄い」
思わず、菊水さんを尊敬の目で見てしまう。
その目を向けられた菊水さんは、顔を赤くして照れている。
「どんな内容なの?」
マリアに内容を聞いてみる。
「はい、頑張りやの女の子に、様々な男性が惹かれていき、色々なハプニングが起きていくと言った内容です」
あれかな? ラブコメの女の子が主人公バージョンか?
パラパラッと捲ってみて、ちょうど中ぐらいの所を読んでみる。
「お前のことが隙なんだよ!」
いきなり誤植を見つけてしまったんだが……。
いや、気にせずに行こう。
「でも、私は……」
「知ってる! 誰のことが好きか決まってないんだろ」
「…………」
「だったら俺のことを忘れられない様にしてやる!」
武蔵境は三鷹をベッドに押し倒し、その瑞々しい唇を奪う。
そして、手を服の中に潜り込ませ、三鷹の慎ましい胸を激しく揉んでいく。
三鷹は武蔵境の手から与えられる刺激に、思わず声を上げてしまう。
その反応に気を良くしたのか、武蔵境の手は三鷹の秘部へと伸びていく……。
…………俺はそこまで読むとゆっくり本を閉じる。
エロ小説じゃねえか!
そこにマリアの補足が入る。
「毎回、主人公がドキドキの展開に会うのですが、そこが大人気です」
小学生からおばさんまで幅広い年齢層に人気があります。私も次巻が待ち遠しいです、と本の説明を終える。
その言葉が嬉しいのか菊水さんは、少しだけ誇らしい顔をしていた。
えっ! コレ全年齢なの?




