個人説明
開けられたドアが再度閉められる。
「……先生アレは?」
「ちょっと待っていて下さい、アレと話をしてきますので」
先生は俺の問いには答えずに一人で中に入っていった。
……しかし、アレって言ったな。扱いが雑だ。
「貴方は何をやっているんですか! おかしな人を学校が紹介したと思われるでしょう!」
「ひょあ! すいません! すいません! 来て頂いた男子生徒さんに最上級の感謝を示そうと思いまして……」
「それで土下座ですか常識がなさ過ぎます! 扉を開けたら土下座をした女性がいた! そんな光景を見て嬉しいと思う人がいますか! 唖然とするばかりです! 現に連れてきた生徒もどうして良いかわかりません、と言った態度をとっていましたよ! 気を付けて下さい! まったく!」
「すいません! すいません!」
中から先生の怒鳴り声が聞こえてくる。
まあ先生の言うとおり、ドアを開けたら土下座をする人が居る、そんな光景を見たら唖然とするばかりだったけどな。
と言うか、この人は大丈夫なのか? もろもろの意味で……。
しばらくすると、ドアが開き先生が出てくる。
「お待たせしました。入ってきて下さい」
「あっ、はい」
「大丈夫ですよ、れっきとした絢爛高校の職員の方ですから。安心して下さい」
むしろ、ちゃんとした職員だと言われる方が心配になるんだが……。
先生の後ろに立っている、スーツの女性を見る。
髪はパッションピンクで大きな目をした若い女性である。新人かな?
その人は俺と目が合うと、挨拶をしてくる。
「お騒がせして申し訳ありません。私、絢爛の職員をしております。槙 楓と申します。お見苦しい所をお見せしてすいませんでした」
「いえ、気にしないで下さい。秦野 琥珀です」
本当は気にしろよ。社交辞令だからな。
「ありがとうございます。秦野さんですね、それではこちらへお座りください。我が校の説明をさせて頂きます」
ちょうど槙さんと対面になる席に座る。
どうやら先生は後ろに立って待つみたいだ。基本的に口は出さないようだな。
まぁ只の説明だからな。
「先ず、我が校の説明にお時間を割いて頂きまして、ありがとうございます。最近は聞いて頂くのも難しくなってきておりまして……」
「はい、私も噂では絢爛高校の方針は聞いています」
「そうですか……、そうですよね。でもそこは誤解も多く含んでおります。どうか今一度、お話を聞いて頂き我が校の良い所知って頂きたいと思います」
「宜しくお願いします」
「最初に言っておきますが、世間で流れている様に男子生徒を食いものにしていると言う事はありません」
「でも、男子を女子の成績向上の餌にしているのは本当ですよね」
「……はい、確かに男子生徒を成績の良いクラスに多く配置をしていることは間違いありません」
「ただ、成績の良いクラスに入れているのでは無く、男子の容姿で分けて入れているんですよね? 成績の良いクラスほど容姿に優れる男子を入れる。言うならば、男子の事も容姿で格付けをしている」
「そう言ったことも否定は出来ません、しかしその事には同意をきちんと頂いておりますし、その分の対価もお支払いしております。決して無理強いをしている訳ではありません。その事はどうかおわかり下さい」
「今言った事以外に、何かさせられたりするんですか?」
「いえ、先ほどのクラス分け以外にはありません。しかしと言うか、容姿で分けられるのは、正直な話あまり評判が良くありません。男子の生徒様を集める事も厳しくなってきている次第で……」
でしょうね。この世界の男は基本プライド高いから。自分の容姿が最低なんて烙印を押されたら自殺するんじゃないか?
「ですので、秦野さんにはどうか、我が絢爛の良い所を知って頂き、進路の一つとしてお考え頂きたいのです。」
「わかりました」
「はい、先ず男子の方は入学試験がありません。特別推薦という形で入学して頂きます。それに加え、学費の免除、学校生活に掛かる費用の免除、これは修学旅行の費用や、学食の費用を学校側で負担します」
「へぇ、そんな所も負担してくれるんですか」
「その上、年に一度、特待補助と致しまして、百万ジェニーをお支払いいたします」
驚きである。いくらか現金を払っていると聞いていたが、百万も払ってるとは……。
しかし此所は、お金に興味がないみたいにしておこう。
「へぇ」
「いかがでしょうか、ご検討頂けそうでしょうか?」
「容姿で支払うお金は変わるんですか?」
「いえ、補助の金額は変わりません。普通に学校に来て頂くだけですので」
なるほど、確かに容姿が悪くても男と言うだけで注目を浴びるからな。それに、高嶺の花より足下の草といった風に、容姿に劣る方が声を掛けられやすいッて事もあるしな。
「……」
静かに人差し指を立て、前に持ってくる。
「?」
槙さんは不思議そうな顔をした後、ハッと何かに気づいたかのように俺の指を握る。
違うわ!
俺は捕まれた指を振りほどく。槙さんは振りほどかれた指を見て、触っちゃったなどとほざいていた。
俺は一息つくと、もう一度指を立てる。
「一千万……」
「はい?」
槙さんはまた不思議そうな顔をした。
「特待補助の額を一千万にして下さい」
そう要求した。




