宇宙人の目的は侵略? いえ、社員旅行の下見です
「ドーモ、地球ノミナサン。私ハ、銀河通商連合ノ、営業担当デス」
緑色の宇宙人(自称:ゼノン星人)は、意外にも礼儀正しく名刺を差し出した。
「はあ……どうも、アレン公国代表のアレンです」
アレンが名刺を受け取ると、ゼノン星人は背後の巨大戦艦を指差した。
「実ハ、我々ノ銀河デハ今、『未開拓惑星ノ温泉巡り』ガ大ブームデシテ。コノ星ニ、スゴイ効果ノ温泉ガアルト聞キマシタ」 「……え、ここまではるばるお風呂に入りに?」 「ハイ。銀河ハ広イデスカラ、肩凝リスルンデス。宇宙船ノシート、硬イデスシ」
どうやら、魔帝や邪神騒ぎのせいで発生した膨大なエネルギー反応が、宇宙への「宣伝広告」になっていたらしい。 彼らは侵略者ではなく、ただの「銀河トラベラー」だったのだ。
「なるほど、お客様なら大歓迎です。……ですが、地上の温泉は今、3ヶ月待ちでして」 「オーマイガー! ソンナニ待てマセン! 有給休暇ガ終ワッテシマイマス!」
宇宙人たちが頭を抱えてパニックになる。 アレンは少し考えて、窓の外に見える「白い球体」――月を指差した。
「じゃあ、あそこに支店を作りましょうか」 「……ハ?」 「月なら広いし、露天風呂から地球ビューが見放題ですよ」
アレンは宇宙服(シャルロット用は可愛いうさ耳付き)を着込み、エアロックを開けた。
「行くぞシャルロット! 次は月面開発だ!」 「も、もう驚きませんわ! どこまでもついて行きます!」
アレンたちは宇宙人の小型船をヒッチハイクし、月面へと降り立った。 灰色のクレーターが広がる静寂の世界。
「ここが良いな」 アレンはクレーターの中心に降り立つと、地面に手を触れた。
「【超建築:月面ドーム型リゾート『ムーン・スパ・リゾート』】!」
ズドォォォォン!! 巨大な透明ドームが月面を覆い、その内部に空気と重力、そして緑豊かな庭園と温泉街が一瞬で生成された。 もちろん、お湯は地下(月下?)深くからボーリングして湧き出させた「月面マグマ温泉」だ。
「アンビリーバボー……! 一瞬デ基地ガデキタ……」 「さあ、一番風呂をどうぞ」
宇宙人たちは歓喜の声を上げ、宇宙服を脱ぎ捨てて温泉へダイブした。
「キモチイイイイイ!! コズミック・パワーヲ感ジルゥゥゥ!!」
こうして、アレン公国はついに惑星外進出を果たした。




