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邪神 VS 激怒の竜姫。クレープの恨みは世界崩壊より重い

「ギャオオオオオオオッ!!」


天空遊園地に、本物のドラゴンの咆哮が響き渡った。 イグニスは人の姿を保ちつつも、その背後には巨大な炎竜の幻影オーラが立ち昇っている。


「き、貴様は何だ! ただの小娘ではないな!?」 「黙れ下等生物! よくも私の『至福の時間』を邪魔してくれたな!」


イグニスが地を蹴る。 その速度は音速を超え、衝撃波だけで周囲の屋台の旗がちぎれ飛ぶ。


ドガッ!!


「ぐべぇッ!?」


イグニスの拳が、アルヴィンの腹(邪神の顔がある部分)に深々とめり込んだ。 邪神化して鋼鉄より硬くなったはずの肉体が、ゴムのように凹む。


「こ、この程度! 我は不死身の再生能力を……」


アルヴィンの傷が瞬時に塞がろうとする。 だが、イグニスは追撃の手を緩めない。


「再生? ならば、塵も残さず焼き尽くすまで!」


竜王極炎息ドラゴン・インフェルノ・ブレス!!」


イグニスの口から、太陽の如き灼熱の炎が放射された。 それはアレン公国の空を赤く染め上げ、アルヴィンを飲み込む。


「熱ッ!? 熱いぃぃぃッ! 邪神の耐熱耐性を超えているだとォォッ!?」


「アレンさんのこたつより温かくないわ!」 「基準がおかしい!」


アルヴィンは炎の中で叫びながら、黒焦げになっていく。 だが、さすがは元勇者と邪神の融合体。しぶとく核だけを残して再生しようと足掻く。


「ま、まだだ……! 俺は世界を統べる王に……!」


黒いヘドロのような塊になりながら、アルヴィンはアレンの方へ這い寄った。


「アレン……お前さえいなければ……!」


アレンは、ポップコーンを食べながらそれを見下ろした。 そして、ため息をついてスマホを取り出した。


「もしもし、エルザ? ……ああ、今ちょうど『基礎工事』が終わったところだ。コンクリ持ってきてくれ」


「……は?」


アルヴィンが顔を上げる。 アレンの背後には、いつの間にか巨大なミキサー車(アレン製)が待機していた。


「邪神さん。あんた、生命力だけは凄いみたいだからさ」 アレンはニヤリと笑った。


「ウチの新しいシンボルタワーの『人柱(土台)』になってくれないか?」


「や、やめろ! 俺は勇者だぞ! 神だぞ! 建材じゃない!」


「問答無用。シャルロット、型枠セット!」 「はい、旦那様!」


シャルロットが手際よくアルヴィンの周囲に木枠を組み上げる。 逃げようとするアルヴィンだが、イグニスに尻尾で踏みつけられて動けない。


「放せ! 放せぇぇぇッ!」


「流し込めー!」


ドボボボボボボ……ッ!!


ミキサー車から、アレン特製【封印・聖水入り速乾コンクリート(強度SSS)】が大量に流し込まれた。


「ギャァァァァァァッ!?」


アルヴィンの断末魔は、灰色のドロドロの中に飲み込まれ、やがて聞こえなくなった。


数分後。 そこには、綺麗な直方体のコンクリートブロックが完成していた。 中から微かに「出してくれぇ……」という念話が聞こえるが、誰も気にしない。


「よし、これを広場の中央に据えよう」


アレンはそのブロックの上に、金色のプレートを貼り付けた。


『邪神封印の碑 ~ポイ捨て禁止~』


こうして、世界を滅ぼすはずだった最大の災厄は、遊園地の待ち合わせスポット(兼ゴミ箱置き場)として、永遠に平和を守ることになったのである。

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