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邪神襲来。……アレン「ごめん、今忙しいから整理券取って並んで」

アレン公国・天空支部。 雲海に浮かぶこの楽園は、今日一番の盛り上がりを見せていた。


『祝! 天空遊園地「スカイ・ファンタジア」グランドオープン!』


巨大な垂れ幕がかかり、ジェットコースターからは悲鳴(歓声)が、フードコートからは甘い香りが漂っている。 地上からは転移ゲートを通って貴族や冒険者が、空からは竜人族たちが詰めかけ、島は芋洗い状態の混雑ぶりだった。


「最後尾はこちらですわー! 押さないでくださいましー!」


バニー衣装(本日は白ウサギ)のシャルロットが、拡声器片手に列整理に追われている。


そこへ。


ズゴゴゴゴゴ……ッ!!


空が割れ、禍々しい紫色の雷と共に、異形の怪物が降臨した。 背中から触手を生やし、全身に目玉がある巨人――邪神と融合したアルヴィンである。


「フハハハハ! 愚かな人間どもよ! 宴は終わりだ!」


アルヴィンは空中で両手を広げ、最大音量で宣告した。


「我は邪神グルグラの化身! この島ごと貴様らを消滅させ……」


「――はい、そこのお客様。列への割り込みは禁止ですよ」


「……は?」


アルヴィンが目を見開くと、目の前に「整理券発券機」を持ったアレンが立っていた。 アレンはポップコーンメーカーの調整中で、エプロン姿だ。


「え、いや、俺は邪神……」 「邪神でもなんでも、ウチは順番守ってもらわないと困るんですよね。ほら」


ピリッ。 アレンは無表情で発券機から紙を引き抜き、アルヴィンの胸に貼り付けた。


【只今の待ち組数:542組】 【呼び出し予定時刻:3時間後】


「3時間待ちです。呼び出したらスマホ(魔道具)鳴らすんで、そこのベンチで待っててくれます?」


「ふ、ふざけるなァァァッ!!」


アルヴィンは激昂した。 かつての仲間ならいざ知らず、人類の天敵である邪神を前にして、この対応。プライド(と邪神の自尊心)がズタズタだ。


「俺は客じゃない! 破壊者だ! 貴様らが楽しみにしているこの遊園地を、今ここで灰にしてやる!」


アルヴィンの背中の触手が鎌首をもたげ、ドス黒い破壊光線をチャージし始めた。 狙いは、行列ができている「限定クレープ屋」の屋台だ。


「絶望しろ! 【邪神砲カタストロフィ・ビーム】!!」


極太のビームが放たれる。 アレンは動かない。 代わりに、クレープ屋の前に並んでいた「赤い髪の少女」が、すごい形相で振り返った。


「……あ?」


ドゴォォォォンッ!!


ビームは少女――竜姫イグニスの片手によってはじき返され、空の彼方で花火のように爆散した。


「な、なんだと……!? 邪神の力を、素手で!?」


アルヴィンが驚愕する中、イグニスはフルフルと肩を震わせながら、地面に落ちた「あるもの」を見下ろしていた。 それは、ビームの風圧で手から滑り落ちた、「期間限定・メガ盛りイチゴスペシャルクレープ(生クリーム増量)」だった。


「私の……30分並んだクレープが……」


イグニスの金色の瞳が、縦に裂け、爬虫類のそれに変わる。 周囲の気温が急激に上昇した。


「……万死に値する」


「ひっ」


アルヴィンは直感した。 邪神よりも恐ろしいものを怒らせてしまった、と。

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