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地上はもう狭すぎる? 魔帝がくれた『浮遊石』で、次は天空の城を作ります

「……土地が足りない」


アレン公国、建国から一ヶ月。 執務室(という名のリビング)で、アレンは広げた地図を見ながら唸っていた。


「どうしましたの、アレンさん? また何か新しい施設を作りたくなりました?」 シャルロットが紅茶を淹れながら尋ねる。彼女は公妃(仮)として、すっかりこの国の女将のような貫禄を身につけていた。


「ああ。レギス国王が『ゴルフ場を作れ』って言うし、魔帝は『魔界生物園サファリパークが欲しい』って言うし……。でも、これ以上荒野を広げると、隣国の国境にぶつかるんだよな」


贅沢な悩みだった。 平和になったおかげで観光客が激増し、アレン公国は慢性的な「土地不足」に陥っていたのだ。


その時。 リビングの空間がぐにゃりと歪み、漆黒のゲートが開いた。


「ようアレン。また茶を飲みに来たぞ」 「いらっしゃい、ヴォルゴスさん」


魔帝ヴォルゴスが、手土産の袋を提げて現れた。最近は週4ペースで通ってきている。完全に常連のおっちゃんである。


「今日は珍しいものを持ってきた。魔界の深層で採掘された『浮遊石レビテート・ロック』だ。漬物石にでも使ってくれ」


ドスン。 テーブルの上に置かれたのは、拳大の黒い石だった。 だが、アレンがそれを鑑定スキャンした瞬間、彼の目が輝いた。


【素材:浮遊石(Sランク)】 【特性:魔力を流すと反重力場を発生させる。このサイズで山一つを浮かせることが可能】


「……ヴォルゴスさん。これ、漬物石にするには勿体なさすぎますよ」 「ん? そうか?」 「これを使えば……『空』に土地が作れる」


アレンは立ち上がった。 建築士の魂に火がついたのだ。 地上波がいっぱいなら、空へ行けばいい。


「行くぞシャルロット、ヴォルゴスさん! 新プロジェクト始動だ!」



アレンたちは屋外へ出た。 アレンは浮遊石を地面の中心に埋め込み、全魔力を注ぎ込んだ。


「【超建築:天空プラットフォーム『スカイ・オーシャン』】!」


ゴゴゴゴゴゴ……ッ!!


大地が鳴動し、アレンの家の敷地ほどの巨大な岩盤が、メリメリと地面から切り離された。 そして、フワリと重力から解き放たれ、空へと舞い上がる。


「な、なんじゃこりゃあぁぁぁッ!?」 「浮きましたわ……! 地面が、空へ……!」


ヴォルゴスとシャルロットが口をあんぐりと開ける中、アレンはさらにスキルを重ねがけした。


「ベースはできた。次は上物だ! 雲の上のリゾートホテル、空中庭園、そして天の川が見える大浴場!」


空に浮かぶ巨大な島の上に、白亜の宮殿やガラス張りのプールが次々と形成されていく。 それはまさに、童話に出てくる『天空の城』そのものだった。


「完成だ。名付けて『アレン公国・第2支部スカイ・エリア』!」


「……貴様、本当に人間か?」 呆れる魔帝をよそに、アレンは満足げに空を見上げた。



「……ん? なんか雲の隙間から、こっちを見てる影がないか?」

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