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温泉街にカジノ建設!? バニーガールになったシャルロットと、全財産をスる元勇者

「アレン、夜が暇じゃ」


それは、常連客である魔帝ヴォルゴスの一言から始まった。 アレン公国(極楽温泉郷)は、昼間は温泉とグルメで賑わっているが、健全すぎて夜の娯楽が不足していたのだ。 健全なスローライフも良いが、刺激を求める富裕層(国王や魔帝含む)の財布の紐をもっと緩めさせる必要がある。


「分かりました。……作りましょう、大人の遊び場を」


アレンはニヤリと笑い、地下ダンジョンの一画を指差した。


「【超建築:地下カジノ『ミリオネア・ドリーム』】!」


ズズズズンッ!! 殺風景だった地下空洞が、煌びやかなシャンデリア、真紅の絨毯、そして数々の遊戯台が並ぶ、ラスベガスも真っ青の豪華カジノへと変貌した。


「おお……! これは血が騒ぐわ!」 「アレン殿、チップはどこで買えるのだ!?」


魔帝と国王が我先にと財布を取り出す。 だが、箱だけでは不十分だ。カジノには華が必要である。


「シャルロット、これに着替えてくれ」 「えっ? こ、これは……?」


アレンが渡したのは、黒いレオタードに網タイツ、そしてウサギの耳――「バニーガール」の衣装だった。



「……ど、どうでしょうか、アレンさん……」


数分後。 カジノのVIPルームに、恥じらいで顔を真っ赤にしたシャルロットが現れた。 公爵令嬢としての気品はそのままに、大胆に露出された脚線美と、頭上で揺れるウサギの耳。そのギャップは、見る者全ての理性を消し飛ばす破壊力を持っていた。


「……最高だ。国宝にしよう」 「も、もう! あまりジロジロ見ないでくださいまし!」


シャルロットはトレーでお盆を隠しながらモジモジしている。 その後ろでは、ミア(トラ柄バニー)とココア(子供用バニー)も着替えていた。


「主様ー! これ動きやすい!」 「妾の耳の方が本物じゃぞ!」


スタッフの準備は整った。 こうして、欲望と熱狂の夜が幕を開けた。



その頃。 カジノの一般フロアに、ボロボロのフードを目深に被った男が紛れ込んでいた。 闇の勇者(笑)こと、アルヴィンである。


「くっ……魔帝陛下に置いていかれ、魔剣も質に入れてしまった……」


彼は魔界で路頭に迷い、結局この村に戻ってきてしまったのだ。 手元にあるのは、ゴミ箱から拾った「1枚の銀貨」だけ。


「だが、ここなら……! このカジノで一発当てれば、俺は人生を逆転できる!」


アルヴィンの目は血走っていた。 彼は震える手で銀貨をチップに変え、スロットマシンに座った。


「頼む……当たれぇぇぇッ!」


ガシャン。クルクルクル……ビタッ! 『7・7・7』


ジャラララララッ!!


「う、うおおおおッ!? 当たった! 当たったぞォォォッ!」


ビギナーズラック、あるいはアレンが設定した「撒き餌」モードだったのだが、アルヴィンはそれを「俺の実力」と勘違いした。 チップの山を手にした彼は、気が大きくなり、鼻息荒くVIPエリアへと向かった。


「ふん、スロットなど子供の遊びだ。……おい、そこのディーラー! 一番レートの高い勝負をさせろ!」


彼が座ったのは、ルーレットのテーブル。 そして、そのディーラーを務めていたのは――。


「あら。……お客様、有りそれだけで足りますの?」


冷ややかな視線を向ける、バニー姿のシャルロットだった。


「シャ、シャルロット!? その格好はなんだ!?」 「カジノの制服ですわ。……で、賭けるのですか? 降りるのですか? 他のお客様のご迷惑になりますので」


シャルロットの後ろには、用心棒の黒服サングラスをかけたスケルトンが控えている。 アルヴィンはカッとなった。


「馬鹿にするな! 俺は今、ツキに愛されているんだ! このチップ全部、『赤』に一点張りだ!」


彼は稼いだチップの山を、ドンとテーブルに叩きつけた。 周囲の客(貴族や魔族)がざわつく。


「ほう、大きく出たな」 「だが、あのディーラーは『不敗の女神』と噂だぞ?」


シャルロットは静かに微笑み、ルーレットを回した。


「では、参ります。……ノーモア・ベット」


カラカラカラ……。 白い球が盤面を回る。 アルヴィンは祈った。赤に入れ、赤に入れ、赤に入れ!


球は赤の『9』に入りそうになり――カツン、と何かに弾かれたように跳ねて、隣の黒の『28』に落ちた。


「……黒の28。黒の勝ちですわ」 「な、な……ッ!?」


アルヴィンは呆然とした。 一瞬にして、チップの山が没収されていく。


「い、イカサマだ! 今、変な跳ね方をしたぞ!」 「あら、言いがかりは困りますわ。……アレンさんの作ったこの盤は『全自動水平維持機能』と『確率収束魔法』が付いていますの。運のない方が負ける、それだけです」


「う、嘘だぁぁぁッ! 俺の金! 俺の逆転人生ぇぇぇッ!」


アルヴィンはテーブルにしがみつこうとしたが、黒服スケルトンたちに両脇を抱えられた。


「お客様、種銭がなくなったようですね」 「退店のお時間デス」


「は、離せ! まだだ! 俺にはまだ『勇者の称号』が……いや、服! この服を賭ける!」 「汚い服はいりません」


シャルロットは冷酷に切り捨てた。


「ドナドナドーナードーナー……」 哀愁漂うBGM(アレンの口笛)と共に、アルヴィンはカジノの裏口から放り出された。


「ちくしょォォォォォッ!!」


寒空の下、一文無しになった元勇者の叫びがこだまする。 一方、カジノの中では――。


「アレンさん、見てください! こんなに売上が!」 「すごいな。……あ、シャルロット。尻尾触っていい?」 「だ、駄目ですっ! もう……後でなら、少しだけですよ?」


カジノは大盛況。 アレン公国の国庫は潤い、シャルロットのバニー姿は伝説として語り継がれることになった。 なお、翌日から「バニーシャルロットのブロマイド」が景品に追加され、争奪戦が起きたのは言うまでもない。

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