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元勇者、ついに魔王軍に拾われる。「人間への復讐? いいね、乗った!」

アレンたちが独立国家の樹立を祝い、スパークリングワイン(シャルロット特製)で乾杯していた頃。 光と影の対比のように、世界の最果てである「魔界」の入り口では、一人の男が泥水をすすっていた。


「ぐっ……うぅ……。アレン……アレンんんん……ッ!」


元勇者アルヴィン。 かつて聖剣を掲げ、人々の希望を背負っていた男は、今や見る影もなく落ちぶれていた。 仲間(聖女と魔法使い)に裏切られ、装備(聖剣)は質に入れられ、なけなしの金も尽きた。 残ったのは、アレンへのどす黒い憎悪だけだ。


「俺は悪くない……。俺は選ばれた勇者だ……。悪いのは全部、俺を追放したアレンと、俺を見捨てた女どもだ……!」


ブツブツと呪詛を吐きながら、彼は魔界の荒野を彷徨う。 人間社会にはもう戻れない。指名手配はされていないが、プライドがそれを許さない。 ならば、どこへ行けばいい?


「――素晴らしい憎悪だ。蜜のように甘い」


ふいに、背後から声をかけられた。 アルヴィンが振り返ると、そこには空間が歪むほどの魔力を纏った存在が立っていた。 漆黒の鎧に、山羊のような二本の角。背中には蝙蝠こうもりのような翼。


「き、貴様は……魔族!?」 「我は魔王軍四天王が一人、謀略のゼギオン。……人間よ、貴様からは同胞の匂いがするぞ」


ゼギオンと名乗った魔族は、アルヴィンの前に舞い降りた。 本来なら、勇者として剣を抜くべき場面だ。だが、今のアルヴィンにその気力はない。


「殺すなら殺せ……。どうせ俺にはもう、何も残っていない……」 「殺しはせん。……貴様、復讐したくはないか?」


「……あ?」


「我ら魔王軍もまた、人間に追いやられ、痩せた土地で苦しんでいる。貴様のその憎しみ、我らの力となれば、あるいは……」


ゼギオンは、懐から一本の剣を取り出した。 刀身がドス黒く脈動し、見る者に不快感を与える禍々しい剣。


「これは『魔剣ダーインスレイヴ(レプリカ)』。魂を食らう代わりに、所有者に強大な力を与える。……どうだ? これを使って、貴様を捨てた者たちに『ざまぁみろ』と言ってやりたくはないか?」


悪魔の囁きだった。 だが、アルヴィンの脳裏に浮かんだのは、アレンたちの幸せそうな笑顔と、門前払いされた屈辱。


(あいつらを……踏みにじれるなら……!)


アルヴィンは震える手で、魔剣を掴んだ。


「……いいぜ。勇者なんて肩書きはくれてやる。俺は……今日から魔王軍だ!」 「ククク……交渉成立だ。歓迎しよう、新たなる『闇の勇者』よ」


こうして、史上最悪の裏切り者が誕生した。 彼は人間を守るための剣を捨て、同胞を殺すための力を手に入れたのだ。



一方その頃、アレン公国。


「へっくしゅ!」 「あらアレンさん、風邪ですか?」 「いや、なんか寒気が……。誰かが噂してるのかな」


アレンは鼻をこすりながら、建設中の『新アトラクション』の図面を引いていた。


「ま、いいか。それよりエルザ、この『回転式ジェットコースター』のレールだが、ミスリルじゃなくてオリハルコンにしてくれないか? 強度的に」 「お主、遊具に国家予算レベルの素材を使うでない! ……まあ、余ってるからいいけども」

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