表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
42/56

42話:邪竜ちゃんの身体の色

 魔女さまの家から邪竜山へ向かって飛んだ。北にはそびえ立つ邪竜山がある。その峰は通らず中腹にあるねぐらの上を通り、迂回する。

 邪竜山の先も山と森が広がっている。邪竜ちゃんが騒がせた町は邪竜山の西にあり、街道は南北に続いている。空から見ると、町から先の街道は山々を避けるように北西に続いていた。邪竜山の北は未開の地が続いている。人々が暮らすのは、山脈の西側だ。


「北に向かうとしても、道に沿っていくと大きく回っていかないとなんだね」

「空を飛んで低い山を無視して行けるとしても、道が見えないほど外れたら場所がわからなくなりますよ」

「だって、邪竜ちゃん」

『んー?』


 あ。風切り音で聞こえていないようだ。どうしよう。

 どんどん眼下の街道から外れていくので、僕はスカーフを左に引っ張った。

 邪竜ちゃんは察してくれたようで、進路を西に取った。道が見えたら今度は右に引っ張る。


「これ下から見えてるのかなぁ」

「見えてるでしょうね。ほら、あそこの馬車。驚いて止まってますよ」


 南に向かっている馬車だった。おそらく御者台から、向かってくる邪竜ちゃんが見えたのだろう。

 このまま近づいてきたら引き返そうと考えているのかもしれない。


「邪竜ちゃん近づかないようにね」


 邪竜ちゃんは街道に向かって飛んでいき、馬車の上空をぐるりと回って馬や御者を驚かせた。


「こらこら!」


 街道に沿っていくと色んな人に迷惑をかけそうなので、やっぱり最短で北へ飛んでいくことにした。

 だけど道に迷わないか不安だ。


「そうですねえ。でも森の中を大きく開拓した土地と言っていたので、外れすぎなければ大丈夫じゃないでしょうか」

「そうかなぁ」


 凄く不安だけど、色んな素材集めに旅をしていたというお弟子さんの言うことを信じてみる。

 そしてしばらく上から木しか見えない風景の中を飛んでいく。


「森しか見えないね」

「そうですね。私も驚きました。恐らくここから西にいけば大きな町があると思うのですが、邪竜様が近づくのは危険ですね」

「大きな町って、邪竜村の隣町くらい?」

「あそこって村に近いくらい田舎町じゃないですか」

「え? そうなの?」


 邪竜村と違って人がいっぱいで大きな町だと思っていたのだけど。


「賑わっているというより、狭い柵に押し込めたといった感じですよね」

「柵……柵なの?」

「あれを壁と言ったら笑われますよ」


 邪竜村には何もないけど……。


『つかれた』

「邪竜ちゃんでも疲れることあるんだ」

「結構飛んでますからね」


 高度はあまり下げず、見知らぬ木々の少ない高い山の岩肌に着地した。

 僕たちも邪竜ちゃんから下りて、ぐいと伸びをした。


「邪竜ちゃん。大丈夫?」

『んー。なんか元気でない』

「あー。ここマナが薄そうですしね」


 マナっていうのが邪竜ちゃんの力の元なんだっけ。

 邪竜山というのは特別マナが多い場所のようだ。

 邪竜ちゃんは初めてそこから大きく離れたため、知らない疲れに襲われているようだ。

 空を飛ぶのにも魔力を使っているようで、体力よりもマナが減ったことが原因なようだ。


「マナ欠乏症って言ってたっけ」


 悪魔の男が、魔女さまの胸に触れて魔力を吸い取り膝を付かせていた時に言っていた。

 身体から魔力が減りすぎても多すぎても調子が悪くなるようだ。

 すると邪竜ちゃんの疲れも、魔力が減っているからだろう。

 それならば。


「僕が魔法を使えば回復するのかな」


 邪竜ちゃんの胸に触れ、手に集中してみる。

 黄色い光が僕たちを包み込み、僕はめまいに襲われた。立っていられなくなり膝を付く。


「大丈夫ですか!?」


 お弟子さんが慌てて駆け寄り、水筒のお茶を飲ませてくれた。少し気持ち悪さが収まる。


「危ないですよもう。人と竜では魔力の総量が違うんですから、意識を持って行かれますよ」

「そうなんだね。ごめんなさい」


 まだ目の前がくらくらする。黒い邪竜ちゃんが、鈍い鉛色に見える


「あれ? 邪竜様が黒くなくなってますよ?」


 邪竜ちゃんも不思議そうに、手や尻尾を見た。尻尾を良く見ようとして追いかけて、その場でくるくる回りだした。


「なんでだろう?」


 邪竜ちゃんに回復魔法を使ったのが原因だろうけど、黒くなくなったらまるで邪竜ちゃんじゃないみたいだ。

 まあとりあえず邪竜ちゃんは元気になったみたいだ。代わりに僕が邪竜ちゃんに掴まる力があるか怪しいけど。


「私が後ろから支えますよ」

「え、あ、うん」


 邪竜ちゃんから落下するお弟子さんを思い出して、ちょっと不安になる。


「邪竜ちゃんは大丈夫?」

『調子良いよ!』


 鈍く光る邪竜ちゃんも、まあまあかっこいいかも?


「あまり辛いようでしたら、お菓子の悪魔が作った飴玉がありますよ」

「食べる!」

『食べる!』

「邪竜ちゃんは元気でしょ!」


 飴食べて寝転がったら元気が出てきた気がする。


「魔法で作られた飴ですからマナの結晶、つまり魔石なんですよ。なのでこの飴を食べると魔力が回復するんです。これは凄いものなんです。だから一個。一個だけです!」


 おかわり拒否された邪竜ちゃんはぐるるるると唸った。

【スケール怪しい大まかな簡易地図】


┃○○○○○ │  ○○○○○△

┃○○森○【エルシア】○森○○○△

┃ △○○○ │  ○○○○○△△

┻┓ △△△ │ △△

 町─────町  △ △

 ┃ △ △ └鉱山 △ △

 ┃△ △ ★←今この辺△ △

都市 △ △ △ △ △ △ △

 |△ △ △ △ △ △ △ △

 | △ △ △ △ ○○○○○

 |  △ ▲邪竜山○○耳長族○○○

田舎町──邪竜村─魔女家┘○○○○○

┌┘  草原      ○○○○○○

│       ○森○○○○○○

↓     ○○○○○○○

(悪魔一行の目的先)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ