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40話:邪竜ちゃんとセクハラの悪魔

 僕は、悪魔の男に背後から肩を掴まれた。そして僕に「魔女を止めてくれ」と言ってきた。

 彼はどうやら、僕を盾にするというよりは、仲裁を頼みたかったようだ。

 だけど実質的に盾にしているのは間違いなくて、魔女さまは「卑怯者!」と背後の男に向かって叫んだ。

 そして魔女さまは僕に構わず杖を奮った。

 僕の背後から炎が立ち上がる。熱い。


「だ、大丈夫ですか?」


 背後に振り返ったが男はいなかった。彼の声は真下から聞こえてきた。


「ああ。大丈夫だ」

「ひゃあ!」


 彼はあろうことか、僕の袴の中に逃げ込んでいた。

 確かに、安全かもしれないけどぉ!


「俺は怪しい者ではない。仲間から君の話を聞いて会いに来たんだ」

「とりあえず、そこから出てきてください。魔女さまも攻撃しないで」


 袴の下からもそもそと出てきた男は、なんというか、冴えない冒険者といった風貌のお兄さんであった。

 だけど、ドラゴンスレイヤーの少女の仲間ということは、彼もドラゴン討伐を一緒にした一人なのだろう。先ほども、瞬き一瞬の間に凄い速さで僕の背後に回り込んできたし、実力は見た目と違うのだろう。


「それで、何のようですか?」

「手紙を頼まれてくれないか」

「手紙ですか?」

「ああ。エルシアの菓子店に届けてくれ」

「あ、僕たちそこへ行こうと思っていたんです」


 男はうなずいた。そのことを知って僕に頼みに来たようだ。

 さらに彼は、その店と懇意にしており、届けてくれたらごちそうしてくれるだろうと言われ、僕は二つ返事で了承した。

 だが、魔女さまが待ったをかけた。


「騙されるな! その男は三人の少女を手篭めにしているんだぞ!」

「そんな悪い人には見えな……見えますけど」

「見えるの!?」


 魔女さまと初対面の悪魔の男なら、僕は付き合いのある魔女さまの方が信じられる。

 この手紙だって、もしかしたら何か僕を騙そうとしているのかもしれない。

 うろたえた男に僕は一つ聞いてみた。


「あなたは連れている少女を自分のモノと言っていたそうですけど」

「え? いや、確かにそこの魔女にはそう言ったけど、だって――」


 僕は男に平手打ちをした。ぺちんと湿った音が辺りに響く。チョコレートの木が近くにあるため蒸し暑い。

 悪魔の男はやはり悪魔なのだろう。

 耳長族に大量の砂糖を作らせて生活を変えようとしているのも、悪魔の男の入れ知恵なのだ。

 みんながみんな騙されてるのかもしれない。

 お菓子を振る舞ってくれたお菓子な少女も。

 邪竜ちゃんと戦ったドラゴンスレイヤーの少女も。

 邪竜ちゃんに変身を教えてくれたぽんこつ狐少女も。


「え、なんで俺叩かれたの」

「問答無用!」

「いやいや待て待て! この村ってこんなのばかりなの!?」


 僕は拳や蹴りを繰り出すも当たらなかった。

 不意打ちの平手打ちは当たったけど、男は素早い。

 横から魔女さまの支援の炎が飛んでくる。


「横から卑怯だ!」


 悪を斃すのに卑怯もない。

 さらに邪竜ちゃんも戦いに参加して、がうがうと尻尾を振り回した。


「デブドラゴンも来るなよ!」

『デブじゃないもん!』


 邪竜ちゃんを怒らせた男は、邪竜ちゃんの炎の息を難なく懐に潜り込んで回避して、邪竜ちゃんの胸を揉んだ。


「いや、太ってるだろ」

『胸さわった! えっちー!』


 そこは邪竜ちゃんの胸(?)だ。変身の力で膨らませた胸(?)である。


「胸っていうのはこういうのだ」


 男は再び風のように姿を消し、魔女さまの前に現れ、魔女さまの胸を掴んだ。

 魔女さまの顔が怒りで紅潮する。


「こいつ!」

「悪いが眠って貰う」


 男がそう言うと、魔女さまは身体が膝から崩れ落ちた。

 やはり、この男は危険だ……!


「女相手だと手加減ができねえ。だから止めよ――」


 男が言い終わる前に、僕は攻撃を仕掛ける。

 だが、僕の手足はぴたりと動かなくなってしまった。


「なっ……身体が……!」

「手加減できないと言ったろ」


 そして男の声が背後から聞こえる。

 僕は後ろから男に胸を掴まれていた。


「大人しくしてく――」


 男が言い終わる前に、邪竜ちゃんの炎の息が襲ってきた。

 男はまた素早く逃げるかと思ったら、僕を地面に押し倒して覆いかぶさった。

 熱気が僕たちを包み込む。男は僕を炎に巻き込む気か。だがそれにしても。

 邪竜ちゃんの炎は僕の周りだけ消え去った。


「大丈夫か?」

「え? あ、はい」


 彼は邪竜ちゃんの炎から僕を助けようとしてくれた?

 炎の中、彼は手を服で叩き、倒れてる僕に手を差し伸べた。

 僕は彼の手をおそるおそる掴んで、引き起こされた。


「どうして、僕を助けたんですか」


 彼は背中を向けて答えた。服の背面は焼け落ち、彼の背中とお尻が焦げていた。


「かわいい女の子を助けるのは当然だろ?」


 彼は邪竜ちゃんを止めるために、炎の中を歩んでいく。

 そんな彼に僕はどうしても言わなくてはならないことがある。


「僕、男ですけど」


 彼は燃え盛る炎の中で倒れた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] みこ服ってホントにぃぃぃぃ!?地震?! [気になる点] 巫女服かー、なんか洋物な神子さんかと。 [一言] すまほエロナ始めました。多腕の元ピアニスト(常時おんぶ) 生産系取りすぎて料理以外…
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