表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

24/29

第24話 背水の陣

―鎮守府将軍視点―


 弟と合流し教皇領まであと少しのところで足止めされた。教皇領軍区の司令官クスキ将軍配下の兵5000が待ち構えていたからだ。それも、3つの川が入り組んだ地形に陣取っている。

「あれでは撤退もできない不利な地形にいるな。まさか、クスキ将軍ほどの武人が?」

 配下の兵がそういぶしがっていたので、答えてやった。


「それは違う。将軍は、背水の陣で戦うつもりだ。撤退することなど微塵も考えていない。ここで玉砕して、少しでも時間を稼ぐつもりだろうな」

 自分から恩義に報いるために捨て石になろうとしている。あれほどの才覚を持った男が、なんとももったいない。


「アレフに先陣を任せる。いくら名将とはいえ、この戦力差だ。なんともしがたいだろう。数の力で押し切る」

 これがこちらの基本戦略だ。敵よりも多くの兵を集め、その兵力差を生かして優勢を築く。そして、そのまま押し切る。相手は奇襲でしかこちらを倒せない。だから、奇襲さえ注意すれば大丈夫。


 ここは開けた土地だ。その奇襲される心配も限りなく低い。こういう地形なら上流で川をせき止めておき、こちらが近づいたところでせき止めていた水を放流するという作戦もあるにはあるが、こちらが電撃的に侵攻している。そんな用意ができる時間的な余裕もないはずだ。


 理論的に完ぺきな戦いかた。ここまで追い詰めれば、歴戦の名将とはいえ、自分を捨てることしかできない。


 前衛が怒涛の勢いで敵陣に突撃していく。これで終わりだ。


 ※


―アレフ副将軍視点―


 戦闘が始まって2時間。明らかに情勢は優勢だ。だが、こちらもかなりの被害が出ている。敵の士気は旺盛だ。死ぬとわかっていても、一人でも多くの兵を道連れにするつもりらしい。こちらの隊長クラスにも死者が出始めてきている。


「死なぼもろとも」

 一人の敵兵は、そう叫んで両手に我が軍の兵2人を挟んで、川に身を投げていた。

 魔力が使える兵は、致命傷を受けると、「クスキ将軍、万歳。教皇猊下、万歳」と叫んで自爆する者もいる。覚悟が決まっている敵兵を前に、士気ではこちらが圧倒されているときもあるくらいだ。だが、敵の本陣には少しずつ近づいている。大丈夫、あとは力で押すだけだ。


 敵も本陣に迫られて、ここまでかと思ったのだろう。

 立派な防具を着飾った兵たちが前線へと向かってくる。最後の突撃が近いようだな。

 そして、かの名将もそこにいた。


「我こそは、教皇領軍区司令、クスキである。我こそはと思う者、前に出るがいい。地獄への道案内にしてやる」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ