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飄然草  作者: 千賀藤兵衛
第九部 さらば単純作業
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水に浮いたり沈んだり

 突然だが、諸君は大便が水に浮くかどうか知っているか?

 これ、半世紀前だったら大半の日本人は知らなかったろうと思う。便器の中に水がたまっていて、そこにボチャンとひり落とすというのを当今はいたるところで経験するが、昔は少なかった。水洗といっても水がたまっているのではなくて、終わったあとに水を流すだけのやつも多かった。もちろんそもそも水洗でないいわゆるボットン式も多かった。私が子供のころに住んでいた家もそうで、出したものは奈落の底へ消えてしまうので、水に浮く浮かない以前にまずそれをしげしげと見るということがなかった。

 現在では少なからぬ人々が日常的に水の中に排便していると思われる。で、最初の質問の答えは、私に関するかぎり「大便は水に浮かない」である。私に関するかぎり、などという条件をつけたのは、もしかしたら人によっては浮くかもしれないからである。

 もっとこまかく言うと、私のもたまには水に浮くことがある。そう、それはひととおり出してしまったあと、なんかまだ尻の穴の出口のあたりにちょっとだけ残っていてそれも出してしまいたいのだが、量が少ないだけにいくらフンばっても力がうまくかからずひり出すことができない、そんなケースがたまにあって、しかしどうにかこうにかフン闘のすえにそれを出してみると、これがどういうわけか水に浮くのである。

 おそらく一連の大便の最後の方は、材料が足りないため空気をたくさん入れて形を保っているのではないかと思う。水に浮くとはそういうことに違いない。

 このような知見が得られたのは水洗式の便所が普及したからで、つまり文明の所産である。文明は知から生まれ知を生み出すというわけだ。そしてこの水に浮く大便の知識がまた何らかの面で文明の発展に寄与したりもするのだろう。まったく想像がつかないが。


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