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飄然草  作者: 千賀藤兵衛
第九部 さらば単純作業
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懐かしの低重力

 重力の低い夢を見ることがときどきある。場所がどこなのかはわからない。重力が何Gなのか、その正確な値もわからない。ただ、地球に比べるとかなり重力が小さいという感じがする。そんな場所で地球と同じように歩いたり走ったりすることはできないから、動きかたにも工夫がいる。体をゆっくり前に倒していって(というか重力にまかせればどうしてもゆっくりになるが)、顔が地面につきそうになるぐらいのタイミングで極力水平に近い角度で地面を蹴って、地面すれすれの低空をふわーっと飛んでいく。そんな夢である。

 重力の低いところでは本当にそんな動きができるものなのか、私は知らない。生まれてこのかた地球から一歩も出たことがないものでね。だが夢の中では、それどころか夢からさめたあとも、私はそれをよく知っているという確信をいだいている。もしいま突然月面に放り出されたとしても重力の低さに戸惑うことなく落ち着いて立ち回ることができる、そんな根拠もない自信がある。もしかしたら私の前世はエウロパかタイタンかトリトンあたりで暮らしていたのかもしれない。

 せっかくの低重力の適応であるが、惜しいことにこの才能、生かす機会が全然ない。昔のSF小説などでは二十一世紀の初めごろには太陽系内の大半の場所に人類が住みついているように書いたものがよくあるが、それが現実になっていれば私の活躍の機会もあったろうに。


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