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飄然草  作者: 千賀藤兵衛
第八部 そこに音楽があるから
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一期一会

 「こどものおもちゃ」という少女漫画がある。一九九〇年代の半ばごろにアニメ化されて地上波で放送された。私はこの全何十回かのアニメのうち一回だけ見たことがある。いや、見たといっていいのかどうかわからない。私は中学生か高校生のころで、自宅の居間にいたらたまたまついていたテレビで流れていたのである。どんな話だったかはおぼえていない。

 おぼえているのはエンディング曲、なかんづくそのサビの部分である。耳慣れない動きをする奇妙なメロディで、いかにも奇矯であり、それでいて伸びやかでさわやかで、せつなさもにじんでいる。私が一撃でノックアウトされたのは当然というものだろう。

 不思議なことに、それから私は一度もこのアニメの放送を見ようとしていない。何かで忙しかったのか、あるいは単にそうすることを思いつかなかったのかもしれない。もともと私は毎週同じ曜日の同じ時間にテレビの前に陣取るということが苦手である。しかしそのメロディを忘れることはなかった。

 何年もたってから、ふと思い立ってこの曲について調べてみた。そして「パニック!」という名前の曲であることを知った。歌っているのはStill Small Voiceというグループらしい。

 さらにまた何年もたってから、動画サイトにたまたまこの曲が投稿されているのを見つけ、何回か聴いた。放送されていたのとは違ってフルコーラスのバージョンだったが、例のサビのメロディなどはおおよそ記憶のとおりだった。

 そしてこれっきりである。最初の出会いからして吹けば飛ぶような偶然と気まぐれの所産だったし、その後もこの曲と私の付き合いは決して強くも太くもない。それにもかかわらず、私はいまでもときどきこの曲を思い出し、そのたびに最初に聴いたときと同じ衝撃、同じ感動を味わっている。


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