表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
飄然草  作者: 千賀藤兵衛
第八部 そこに音楽があるから
64/77

0と1の歌声

 最初はあのやけにキンキンと響く、いかにも作り物めいた歌声が苦手だった。

 歌唱ソフトなるものが世の中に出てきたのは、私が大学生のころだったようだ。かの初音ミクの発売はその数年後である。私がその歌声をいつどこで初めて聴いたか、それが何という曲だったかはおぼえていない。まったく気に入らなかったことだけは確かである。 

 それからまた何年かたって、あるとき私は小説家山本弘のホームページを見ていた。私はこの小説家のファンで、ホームページもしょっちゅう見ていたのだ。毎週なにかしらの面白い画像をトップページでオススメしてくれる、楽しいサイトだったのである。

 そのときトップページで紹介していたのは、ニコニコ動画に投稿された自主制作のCGアニメであった。「公安39課」と題するそれは、「攻殻機動隊」をオマージュした物語で、長さ二十分以上もあるけっこうな力作だった。独特なのは、登場人物の中に何人ものちょっとずつ容姿の違う初音ミクがいること。この作品がMiku Miku Danceという、初音ミクを動かすための映像制作ソフトで作られたことは後に知った。

 この作品の中に、初音ミクの歌う歌が流れる場面がいくつかある。当然キンキンしているし作り物めいているのだが、このときはそんなことは気にならなかった。物語のなかで描かれた初音ミクの人生の喜びや苦しみに、その歌声がよく釣り合っていたからかもしれない。

 いずれにせよ、このときから私は歌唱ソフトの歌声を苦手でなくなった。このあと何年かのあいだ私はニコニコ動画に入り浸って、初音ミクをはじめとする歌唱ソフトの歌を大量に聴き、以下に掲げるごとき多くのお気に入りを得た。

 Mitchie M「FREELY TOMORROW」

 daniwell「Love Logic」

 ぷにえ工房「はしるムームー 三(*っ´^ω^)っ」

 Wato「なないろの朝」

 ナカノは4番「hp」

 baker「夏に去りし君を想フ」

 立秋「むに」

 ナナホシ管弦楽団/岩見陸「おねがいダーリン」

 夜烏P「パラフィリア」

 とても書き切れないのでこのあたりで切り上げるが、ほかにもまだたくさんある。

 考えてみれば、世の中にはいろいろな歌いかたの流儀がある。クラシックの歌いかた、フォークの歌いかた、演歌の歌いかた、デスメタルの歌いかた、どれもまったく違う。歌唱ソフトの歌いかたも、その新たなひとつだというだけのことだ。


参考

「公安39課」

https://sp.nicovideo.jp/watch/sm20967545

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ