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飄然草  作者: 千賀藤兵衛
第八部 そこに音楽があるから
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氷雪曲というジャンル

 夏になるとよく思い出す曲がある。ゲーム「ロックマンX3」のフローズン・バッファリオのステージのBGMである。

 ゲームの内容をおおざっぱに説明すると、フローズン・バッファリオという悪いやつがいて、主人公がそれを倒しにゆくというエピソードである。くだんの曲は、主人公がフローズン・バッファリオの手下の雑魚をなぎ倒しながら進んでゆく道のりで流れる。

 名前から見当がついたかもしれないが、フローズン・バッファリオはものを凍らせる能力を持っている。おそらくそのためであろう、主人公のたどる道はいたるところ凍りついている。BGMもそれにふさわしい、冷え切った風のような曲調である。

 で、その曲を、私は夏の暑いときに思い出すのである。無意識のうちに涼を求めているのだろう。


 ゲームにはこの手のいわゆる氷雪ステージというのがときどき出てくる。そのBGMにはやはり寒々しい雰囲気の曲が少なくない。そしてそれは暑いさなかに思い出すと、いくらか涼しさを感じさせてくれるようである。実際に熱中症の予防の効果などがあるかとなるとそれはさすがに疑わしいが、気持ちが涼しくなるだけでも十分に価値がある。

 フローズン・バッファリオのほかにも、いくつか思い出される氷雪曲がある。「超魔界村」の5面BGM、「ファイナルファンタジータクティクス」の「Antidote」、「幻想水滸伝Ⅴ」の「雪と氷に閉ざされた遺跡」などである。

 ビデオゲーム登場以前に、このような納涼目的で思い出される曲があったかどうか、私はよくわからない。が、たとえばヴィヴァルディの「冬」とか、文部省唱歌の「雪」とか、「白い恋人たち」とか「津軽海峡冬景色」なんかを、涼しくなるために思い出すかといえば、違うような気がする。ゲームはやはりそこのところが特別で、主人公を自分で動かすものだから、主人公と自分の距離が限りなく近い。したがって主人公が寒い目に遭えば、ゲームを遊んでいる自分も寒いのである。それはもはや自分の経験であり、氷雪曲によって得られる涼しさはその経験、その思い出から引き出されるのである。


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