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飄然草  作者: 千賀藤兵衛
第八部 そこに音楽があるから
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鼻歌人間

 私はだいたいいつも鼻歌を歌っている人間である。仕事中など鼻歌を歌えないときも頭の中では音楽が鳴っている。曲目は、即興で作った曲の場合もあれば出来合いの曲の場合もある。鼻歌もしくは頭の中でしばしば演奏されるお気に入りの曲には、以下のようなものがある。

 ヨハン・ゼバスティアン・バッハ「目覚めよと呼ぶ声が聞こえ」

 東京事変「OSCA」

 同「能動的三分間」

 「ファイナルファンタジータクティクス」から「Apoplexy」

 同「Trisection」

 原曲と吹奏楽バージョンの記憶がごちゃまぜになった「コパカバーナ」

 カヒミ・カリィ「LE ROI SOLEIL」

 ARM「flying intelligence on ground beat」

 「幻想水滸伝Ⅳ」から「大海原の戦い1」

 こうした曲は、「あの曲を思い出そう」と考えて鼻歌したり頭の中で流したりしているのではない。何かをしているときに自然に出てくるのである。ふと気がつくとその曲を鼻歌で歌っていたりするわけだ。とはいえ無意識のうちにちゃんと選曲をしているようで、状況に合った雰囲気の曲が出てくる傾向はある。たとえば題名のとおり三分ちょうどでビシッと決まる曲「能動的三分間」は、短い時間で何かケリをつけたい事柄があるときに浮かんでくることが多い。またアップテンポの戦闘BGMである「Apoplexy」や「Trisection」は、仕事の納期が迫っているときなどによく思い出される。それ以外の曲はあまりはっきりしないが、やはり何かしらの基準があって鼻歌にかかるのだろうと思う。

 即興の鼻歌もその点は同様で、急いでいるときにはアップテンポの曲、のんびりしているときにはゆっくりめの曲ができる。そのほとんどは二度と思い出すこともない一回きりの曲だが、そのただ一度の機会においては最もその場に適した曲なのである。


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