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飄然草  作者: 千賀藤兵衛
第七部 棒つきアイスの巻き返し
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イヤホン・ラヴァーズ

 携帯電話やゲーム機につないで使っているイヤホンが壊れたので、新しいのを買いに電気屋に行った。私のずっと愛用しているのは、片耳用の有線のイヤホンである。ところがイヤホンの売場にはそれがない。壁一面を埋め尽くす多種多様なイヤホンが、ことごとく両耳用である。

 店内をさんざん徘徊したすえに、テレビ用品の売場でようやく片耳用のイヤホンを発見、購入することができた。しかしその品ぞろえはほんの数種類にとどまり、両耳用のイヤホンとは比べものにならない。

 非常に不思議に思った。両耳用のイヤホンはそんなに人気があるのだろうか。試みに、双方の長所を思いつくかぎり挙げてみることにした。


 片耳用イヤホンの長所

 一、イヤホンを着けたり外したりする手間が少ない。

 一、コードが分岐していないぶん、からまりにくい。

 一、周囲の物音が聞こえやすい。

 一、値段が安い。


 両耳用イヤホンの長所

 一、ステレオで聴くことができる。

 一、周囲の物音を遮断し、聴いている内容に集中することができる。

 一、二人でイヤホンを片方ずつ使って聴くことができる。


 最後のやつを思いついた瞬間、「これか!」と思った。恋愛ものの小説や漫画でときどき見かけるトキメキシチュエーションである。たがいに憎からず思っている二人の人物が両耳用のイヤホンを片方ずつ分け合って、顔を寄せて一つの曲を聴く、というあの場面だ。なるほど、それを実現するためだけにでも両耳用のイヤホンを用意する価値はあるかもしれない。

 そう思ってあらためて陳列されている両耳用イヤホンを眺めると、コードや本体の色が赤、青、黄、緑などの華やかなものが多い。これも恋の気分を盛り上げるのに一役買いそうだ。数少ない片耳用のイヤホンが黒か白しかないのとは大ちがいである。

 納得はしたものの、私には両耳用のイヤホンはやっぱり用がないなと思ったのであった。


 第七部「棒つきアイスの巻き返し」は、全十回です。


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