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飄然草  作者: 千賀藤兵衛
第五部 私はピアノを飲む
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私はピアノを飲む

 大学時代、第二外国語としてロシア語を選択していた。第二外国語というとイヤイヤやる人も少なくないようだが、私はけっこう楽しんでまじめに勉強していたものである。

 あるとき、大学構内の自習室で勉強していたところ、机の正面の壁に落書きがあるのを見つけた。漫画風の絵柄で、男とも女ともつかぬ人物が大口をあけてグランドピアノを丸呑みする場面を描き、横に英語で「I drink piano.」つまり「私はピアノを飲む」というそのまんまの説明が書いてある。さらに英語の下にドイツ語でも何か書いてある。私はドイツ語はほとんどわからないが、おそらく同じ意味の文であろうと推測した。

 描いた人の精神状態が心配になるような絵ではあるが、そのシュールかつナンセンスなところが私はすこぶる気に入った。そこで、そのドイツ語の下に「Я(ヤー) пью(ピユー) рояль(ラヤーリ).」と書き加えたのであった。いうまでもなく同じ「私はピアノを飲む」を意味するロシア語である。

 あれから二十年以上たち、熱心に勉強したロシア語もほとんど忘れてしまった。いまでも覚えているのは基本的な挨拶といくつかの単語のほかには、この「Я пью рояль.」だけである。


第五部「私はピアノを飲む」はこれで終わります。

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