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飄然草  作者: 千賀藤兵衛
第五部 私はピアノを飲む
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ブックをオフした日

 部屋の中の本の山が高くなってきたので、ブックオフに売りに行くことにした。車の運転ができないのはこういうときに不便で、自分の体で運べるだけしか運べない。スポーツバッグにしこたま詰め込んだが、数えてみたらたった五十三冊であった。

 しかしこれでもおそらく重量十五キロぐらいにはなると思われる。最寄りのブックオフまでは徒歩一時間。さすがの健脚の私も十五キロかついで一時間歩くのはつらい。何が悲しくてせっかくの休みの日にそんな軍事訓練みたいな真似をしないといかんのだ。結局バスを使った。二百六十円也。

 ようやくブックオフに着いて、買取カウンターに持ち込む。査定の前に、値段のつけられない本をどうするかについて聞かれた。持って帰るか、それとも店に引き取ってもらうか。私は引き取ってもらうことにしている。この場合、その本は紙資源という扱いで再生紙の材料にされることになる……とブックオフの公式サイトには書いてある。世間では、こっそり店に並べているのではないかと勘ぐる向きもある。じつのところ私はそっちのほうを期待している。紙資源にされてトイレットペーパーか何かに生まれ変わるよりも、本のままで望む人の手に渡るほうがいいに決まっている。

 しばらく店内をぶらついて待つうちに査定が終わった。五十三冊で計七百五十五円である。値段のつかなかったのが何冊あるかは不明。金を受け取り、しかるのち査定のあいだに見つけたおもしろそうな本六冊を購入する。計八百二十円。差し引き六十五円の出費である。またこういうときにかぎって興味を引くような本がよく見つかるのだ。

 ふたたびバスに乗って帰宅。行きとは路線が違うバスだったので、二百三十円で着いた。本の売却、購入にバス代も加えて、五百五十五円の出費と相成った。

 私のいらない本が五百五十五円の出費で誰かの手に渡るというのは、まずまずの取引だと思う。ブックオフの買い取りの金額は安すぎて儲からないとこぼしているのを聞いたこともある。しかしネットオークションなどを用いて自分で買い手を探そうとすれば、見つからないか、見つかるとしても時間も手間も相当かかるはずである。五百五十五円払って本をぱっぱと始末したうえ、おもしろそうな本が六冊も手に入るというのは大儲けであると私は思う。


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