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飄然草  作者: 千賀藤兵衛
第五部 私はピアノを飲む
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恥ずかしい音

 公共施設のトイレの個室に、水の流れる音のする装置が備え付けてあることがある。音姫という商標名のあれである。なんでも、自分の用便の音をほかの人に聞かれるのを恥ずかしがる人がいるとかで、別の音を流して掻き消すのに使うらしい。どうしてそんなことが恥ずかしいのか私は皆目理解できないのだが、恥ずかしいという感情は大体においてそういうものかもしれない。

 逆に、自分の用便の音を聞かれるのを恥ずかしいと思っている人が、ほかの人の用便の音を聞いたらどう思うのだろう。居たたまれないとか、聞き苦しいとか思うのだろうか。

 おそらくすでにおわかりのことと思うが、私はあの音の出る装置を使ったことがない。必要を感じないからである。

 ところがある日、外出中ににわかに催して近くのコンビニエンスストアでトイレを借りたときのこと。私は何も操作をしないのに、便器に腰を下ろすや水の音が流れてきた。恐れ入ったことに、自動的に音が出るようになっているのだった。

 考えてみればわからないこともない。売り場から扉一枚隔てただけなのだ。ここで私のような野蛮人が「俺の音を聞け!」とばかりに盛大に音を立てて用を足すと、食べ物を買いに来た客が食欲を失って何も買わずに帰ってしまうようなことも起こりうる。店にとっては売り上げにかかわるわけだから、自動的に音を出すぐらいのことはするだろう。面倒な世の中だ。


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