表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
飄然草  作者: 千賀藤兵衛
第一部 自動的な男
3/77

幻の地・沖縄

 沖縄という土地が本当に実在するのか、私はどうも確信がもてない。

 そもそも私は北海道生まれの東北在住で、沖縄から非常に距離の遠い人間である。沖縄には住んだこともなければ仕事そのほかの用事で行く機会もなかった。出不精なので、ちょっと観光がてら沖縄の実在をたしかめに行くか……といったことも決してしない。

 いままで知り合った人に沖縄出身の人もいなかった。四国出身や九州出身の知人は何人かいたし、韓国や中国の人もいたが、沖縄はゼロである。もちろんこの見方は公平ではない。沖縄という県を単位にするなら、四国とか九州というふうにいくつもの県を束ねたものと比較するのは間違っている。韓国や中国はなおさらだ。

 とにかく、私と沖縄のあいだには関わりらしい関わりがあったことがない。知り合いからもらった沖縄土産のちんすこうがおいしかったとか、せいぜいそのぐらいである。

 小説や漫画などの物語に沖縄が出てくる場合、神霊の住まう土地、人々が霊とともに暮らしている土地として描かれることがしばしばある。ユタでシーサーでニライカナイな雰囲気である。琉球語の耳慣れない響きと相まって、沖縄の神秘性が増し、逆に実在はますます疑わしくなってくる。

 沖縄というのは死後の世界なのではないかと、なかば冗談ではあるが、私はそう思っている。私が死んだら魂は沖縄に行って、死んだ祖父母や母と再会するのかもしれない。「わたしはそんなところにはいないよ」という母の声が聞こえるような気もするが。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ