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ある寝不足の話
ふとんの中が寒くてなかなか眠れないときは、私の経験上、屁をこくといい具合に暖かくなる。屁に含まれる二酸化炭素やメタンといった温室効果ガスのためであろう。
その夜もすこぶる寒かった。私はふとんの中で屁をこいた。ところがそのときに限って、私の屁はものすごくくさかったのである。自分の屁のにおいなど数え切れぬほど嗅いで、すっかり慣れてしまっているはずなのに、ただのひと嗅ぎで眠気が吹っ飛んで目がパッチリと冴えてしまうほどであった。
首尾よくふとんは暖まったものの、いったん飛んだ眠気は戻ってこず、いっこうに寝られぬ。明けがたになってようやく少しまどろんだだけで、ほどなく起き出して仕事に行かなければならなかった。その日は一日じゅう眠かった。
おそらく人類の歴史上もっともマヌケな寝不足ではないだろうか。




