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飄然草  作者: 千賀藤兵衛
第三部 ダーガー2.0
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人工的迷子

 むかし暇だったころにときどきやった遊びを紹介する。

 最初に、使う金額を決める。初心者は二百円か三百円ぐらいがよい。体力と土地勘に自信のある人は四百円以上使うとたっぷり楽しめる。

 この遊びをするのは天気のよい日にかぎる。歩きやすい靴と服装で、まずは駅前など多くの路線バスの発着する場所に行く。いくつも並んでいるバス停のどれかにバスが来たら、行き先がどこであれ、それに乗る。そして運賃が最初に決めた金額以上になったら下りる。ここはいったいどこであろうか、とあたりを見回す。

 これでお膳立てが終わって、いよいよ遊びの始まり。その場所から自分の家まで歩いて帰ってくるというのがその遊びの内容である。要するにハイキングであるが、出発地が無作為に決まるところがミソなのだ。

 そもそもどうしてこんな遊びをするかというと、ほどよく迷子になるためである。迷子というのは心細いものだが、身の危険さえなければスリリングで楽しい経験でもある。怪談とか遊園地のお化け屋敷などと同じようなものだ。

 私はわりとあちこち歩き回っていて土地勘のあるほうだが、これまでこの遊びをしたときには、どういう巡り合わせか必ず知らない場所でバスを下りることになった。それでこそこの遊びは面白いというもの。

 たぶんこっちに行けば知っている場所に出られるはずと思って歩き出すが、そうそう期待した場所には出ない。とはいえ歩きながら町名の表記などを拾ってゆくと、それらしい方向に向かっていることは確かなようである。分かれ道をどちらに行くか決めかねたり、こっちと決めて進んだ道がどうも間違っているらしく思われて引き返したり、そんなことをしているうちについに知っている場所に出て、迷子から抜け出したさびしさと満足感を味わう。


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