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飄然草  作者: 千賀藤兵衛
第一部 自動的な男
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ハクビシンと見つめ合う

 十年ほど前のある日、自宅を出ると目の前の塀の上をハクビシンが歩いていた。一メートル足らずの至近距離である。向こうもこちらを見て、しばしにらめっこ。

 私の住んでいる町には野良ハクビシンがおり、それまでにも何度か見たことがあった。夜などは猫と見まちがいやすいが、ハクビシンのほうが鼻づらがとがっており、また尻尾が太いので、慣れれば一瞬見ただけでも見分けがつく。

 しかし真っ昼間に、至近距離で、しかも顔の高さにいるやつを見るのは初めてである。めったにない機会なのでしげしげと観察した。こいつをペットとして飼う人もいると聞くが、犬や猫と比べるとどことなく愛嬌に欠けているようである。あまり仲良くなれそうな気がしない。

 愛嬌というのは具体的には何か。一つには姿のかわいいこと。そしていま一つ、人間になつく性質のあることだと思う。たとえば猫などは、ツンツンしていても隙があるというか、こちらと馴れ合っている感じがする。このような特徴のある生きものは、人間が保護してくれるので生存しやすい。そして愛嬌のあるものが生存して子供を作れば、たいていは愛嬌のある子供が生まれてくる。何千年ものあいだそれを続けた結果、犬や猫は愛嬌のあるものがどんどん増え、愛嬌のないものを淘汰していったのだと考えられる。

 ではハクビシンも今から何千年かがんばれば愛嬌が向上して犬猫に比肩するペットになれるかというと、どうもそれは難しそうだ。ペットという生存環境、生物学でいうところのニッチは、すでに犬と猫が占めてしまっており、ハクビシンの入る余地はない。猫が伝染病か何かで絶滅でもしないかぎりは、まあ無理でしょうな。

 そんなことを考えているうちに、塀の上のやつはスタスタと走ってどこかに行ってしまったのであった。


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