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飄然草  作者: 千賀藤兵衛
第三部 ダーガー2.0
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ご老体はリンゴジュースを好む

 子供のころ、母方の祖父母の家に親戚が集まって宴会をすることがときどきあった。そのようなとき、子供が飲むものはジュースか炭酸飲料であった。祖父や伯父が物置からビールケースに納まったガラス瓶入りのジュースやサイダーを運び出してきて、みんなでワイワイ言いながら群がって栓抜きで開けたものだ。

 三十年以上前の話である。当時はまだ、ペットボトルや缶や紙パック入りのお茶というものがなかった。ミネラルウォーターやスポーツドリンクも珍しかった。それで、子供が飲めるものとなるといきおいジュースか炭酸飲料となったのである。祖父母の家にかぎらず、だいたいどこでもそうだった。

 私は炭酸飲料が嫌いだった。飲むとのどがチクチクするからである。となると選択肢はジュースしかない。そしてそのジュースというのは、当時はほとんどオレンジジュースかリンゴジュースだった。ぶどうや桃のジュースもないことはなかったが、ありふれたものではなかった。

 私はリンゴジュースもあまり好きではなかった。理由ははっきりしない。頑固な子供だったのか、とにかくジュースはオレンジに限ると信じ込んでいた。オレンジこそはジュースの正統であり、ジュースのデファクトスタンダードであり、ジュースの純文学である、といったところである。かわいくない子供だ。

 時は流れ、三十を過ぎたころからオレンジジュースの酸味が喉にさわるようになってきた。飲むとときどきむせてしまうのである。老化現象かもしれない。それでオレンジジュースを敬遠し、逆にリンゴジュースを好むようになった。単に甘いでも酸っぱいでもない、複雑微妙な味わいがあり、よいものである。

 とはいえリンゴジュース一辺倒ではなく、ときどきはオレンジジュースを飲んで、やはりこれはこれで悪くないよな、と子供のころの自分を思い出している。


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