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飄然草  作者: 千賀藤兵衛
第二部 コロナのある風景
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曇り止め

 新型肺炎の話題が世間を騒がせるようになってからしばらくして、私の職場で、勤務中はマスクを着用すべしというお達しが出た。こんなものを着けるのは小学校の給食当番のとき以来である。実質初めてみたいなものだ。

 いざマスクを着けてみるといろいろと発見があった。まず、マスクのヒモが眼鏡のツルと干渉するということ。普段も邪魔だが、とりわけマスクを外すときに注意を要する。ヒモがツルにからまっていて、マスクを外した拍子に眼鏡までもぎとってしまう、というのを何度かやらかした。

 もうひとつの発見は、マスクをつけると眼鏡が曇るということである。本来下のほうへ向かうものである鼻息がマスクの上辺から噴出し、それに含まれる水蒸気が眼鏡のレンズに結露するのだ。こうなると目隠しをされたも同然、とても仕事にならぬ。どうもマスクというものは眼鏡とはトコトン相性がよくない。

 ところがそれで悩んでいた折、眼鏡用の曇り止めというものがあるという情報を耳にした。さっそく近所のホームセンターで購入、使用に及んだ。小指ぐらいの大きさの容器に何かの薬剤の液体が入っており、これを眼鏡のレンズ表面に塗布するというものである。商品の宣伝文句にはこれさえ使えば一点の曇りもなくなるといったようなことが書いてあるが、それはさすがに誇大だとしても、まずまず視界が確保できるようになった。偉いものだ。ただこの液体、やたらとにおうのが欠点で、塗ったあとしばらくのあいだは、漬かりすぎたタクアンみたいなにおいが文字どおり目と鼻の先で芬々とするのを我慢しなければならない。まあ、ささいな問題だ。

 みなさんがどこかで漬かりすぎたタクアンのにおいのする人に出会った時には、ああ、この人は眼鏡に曇り止めを塗ったところなんだな、とあたたかく見守ってやっていただければ幸いである。


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