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TSお姉様、再び出会う

 



「ふぁぁ……あ、おはようございまーす」


「はい、おはよう。少し目が腫れてるようだけど」


「んー、昨日色々考えて眠れなかったから。大丈夫だよ」


「そう。とりあえず下着を付けてきなさい。透けてるわよ?」


「うぇ⁉︎ ご、ごめんなさい!」


 寝苦しくて外したブラ、忘れてました。でも、昔なら凄く怒られたはずだけど、お母様って今日機嫌良いのかな?


 ベッドの下にポイしたはずのブラは見つからなかったので、新しいヤツを取り出し装備する。多分朝にターニャちゃんが片付けてくれたのかも。起きるまで時間が掛かったし。


 んー、頭が重いし、歩くとお腹もちょっと痛い気がするなぁ。あの日はまだの筈だけど。まあ我慢出来ないほどじゃない。


「改めておはよー」


お姫さま(おひーさま)、おはようございます」


 おお、キーラっていつもビシッてしてるなぁ。


「キーラ、相変わらず可愛いね」


「え……? あ、はい、どうも」


 不思議そうにしてる顔も可愛いよ?


 とにかく、今はお母様に聞かなくちゃ。


「そろそろ教えてください。昨日言ってた残る参加者って誰なんですか? 私にとっても大事な事なんです」


「貴女……」


 ポカンとした顔、珍しいし面白いな。その表情はすぐに消えたけど、ジロジロと俺を観察し始めたみたい。何ですかー? 寝不足だけど、超絶美人は変わってないでしょ? お母様みたいに妖艶な感じは足りないけど、若さって武器がありますから!


「ふーん。もしかしてちゃんとターニャさんと話した?」


「話しました。お母様も知ってるって」


「敬語は要らないわ。昨日みたいにして」


「そう? 分かった」


 うん、やっぱり珍しいぞ。淑女としてって昔は煩かったのに。


「質問は参加者だったかしら? その点だけど、とある推薦枠で別に一人増えるわ。だから参加はあと二人ね。どちらも実力者だし、条件にはバッチリだもの」


「んー? 有名人なんだ」


「当たり前。有象無象なんて参加させないわ」


「名前は?」


 バンバルボア帝国の誰かか? でもツェイスやクロも居るし国同士で複雑になりそう。


「名は"フェルミオ=ストレムグレ"ね」


「うん、却下で」


「あら? ジルヴァーナと同じ超級の"魔狂い"よ? 魔法に関してはバンバルボアすら並ぶ者なしと言うし、貴女となら素晴らしい才を受け継ぐかも」


 うんうんそうかもねって、アホかぁ!


「年齢差! 年齢差を考えてよ! 大体あのエロジジイってまだ現役なの⁉︎」


「自己申告では元気一杯だそうよ。なんなら確かめてみる?」


「やだよ! ね、冗談だよね?」


「目的には合致するし、他の方々にも良い影響を与えるでしょう。何より、生い先短いのなら貴女も励むでしょ? 大丈夫、母親が言うのもアレだけど、ジルヴァーナの美貌と身体なら死人も雄々しく立ち上がるわ、二重の意味で」


 ひでぇ。それと下ネタがお母様の口から……って、そうじゃなくて!


「うぅ……勘弁して。アイツって広域殲滅魔法ばかり使う変人だよ? 試合なんて無理だよぉ」


「最初に伝えてあったはず。単純な実力だけを見ないって。もし違うなら勇者くんが不利でしょう? だいたい威力だけ大きな魔法が古竜に通じるとは思わないし、ただ無差別に放ったとしても合格理由にはならないわ」


 昔もあった有無を言わさない感じ……でも、流石にお爺ちゃんは嫌なんだけど。


 うーむ。変態痴漢ストーカーのガキンチョと、変態痴漢エロエロのジジイ……やっぱりお母様はツェイス推しなんだろうか? そもそも比較対象が酷すぎだろう。三人のうち一人だけ同年代のイケメンで頭まで良くて、俺様キャラだけど基本常識的で優しい。おまけに大国ツェツエの王子様。普通に考えて勝負にならないよね?


「勘違いしては困るけど……今は例えツェイス王子でも特別に優遇するつもりは無いわ。彼もそれをよく理解しているし、それこそ失礼に当たるでしょう。老いも若きも惚れさせるなんて流石ジルヴァーナね」


 褒められてても嬉しくないし! でもどう言うこと?


「あら、不思議そうね? 最後の参加者を知れば納得する筈……本当に心当たりないの? 貴女も良く知ってる人なのに」


「えー? 残りの超級? 剣聖って確か妻子持ちだし、反魂(はんごん)吼拳(こうけん)も違うと思うけど」


 あの剣マニアでも妻子持ちとは納得出来ないが。残る二人も別の意味で変態だから、俺を求めるとは思えないんだよなぁ。


「肝心なところでお馬鹿なんだから」


 これ見よがしに溜息吐くの、やめてくれない?


「仕方無いわね。残りの方は……」


 ふんふん、誰ですかー?


「シャルカ様。お着きになりました」


 ん? キーラ?


「そう。約束通り、誰も連れずにかしら?」


「はい。お姫さまが屋敷に仕掛けた魔素感知網にも掛からないため、間違いないかと」


「予想通りと言えばそうだけど、()()()()()凄い自信ね。騙し討ちとか暗殺とか考えないのかしら。で、今はどちらに?」


 何だか物騒なんですが! 


「今は客室でお待ち頂いております」


「じゃあ此方にお通しして。お馬鹿な娘が未だ分からないみたいだし、顔合わせをしましょう。彼方もそのつもりよきっと」


「畏まりました」


 キーラにも未だ分からないんだって溜息つかれました。


 とにかく魔素感知してみよう。少々の隠蔽なんて俺には効かないからね。客間、客間っと。うんうん、んー? あの、全く感知にかからないんだけど……


「ジルヴァーナ? 大袈裟にしたくないとお願いしてるし、今は彼なりの隠蔽をしてる筈。多分()()()()の感知では無理だと思うわ」


 私達程度? いやいや、魔力操作や魔法関係なら俺やお母様、魔狂い以外に居る訳……魔力や魔法関係? え? ま、まさかそんな訳……だって住んでる場所が遠過ぎるし、普通有り得ないよ。


 だけど、そんな否定もあっさりと消えちゃいました。


 再び戻って来たキーラに促され、一人の男性が室内に入って来たから。


「……えぇ」


 マジかぁ……


 相変わらず背が高いなぁ。容姿も全然変わってないし、老けたりもしてない。イケメンショタ、イケメン、ジジイ……そして目の前のイケオジ。まあ年齢的には被ってないね、うん。て言うか、この世界の貴人って普通に他国に入ってくるなぁ……まあ、その一人がお母様なのは笑えないけど。


「久しいな、ジルよ」


 ゆっくりと流れて来る低音の声。


「お久しぶり、です」


「六年前の約束を果たしに来た。人種ならばもう成人であろう? つまり、我が妃として迎え入れるのに障害など存在しない。何、臣下も皆待っているから安心するのだ」


 わぁ⁉︎ 近いって!


「あらあら、まだ気が早いですわ。母として、私が認めるまでは」


 もう少しで抱き締められそうな距離に近付いたとき、お母様からストップがかかる。あぶねぇ、吃驚しすぎて動けなかったよ。


「そうだったな、シャルカよ」


「今の私はバンバルボア帝国の第四皇妃です。呼び捨てはおやめ下さいませ」


「ああ、すまぬ。お主とも直接会うのは久しくてな。つい昔の様に呼んでしまった」


「困った方ですね。相変わらず」


「臣下からもよく言われるな、確かに」


 そう言って笑うと、歳を重ねた中年男性なのに不思議と色気を感じる。確かにその辺も相変わらずで、やっぱり渋いなぁ。


「さて、礼儀として紹介致しますわ。皇女としての名は初めてでしょうから」


「うむ」


「私の娘、バンバルボア帝国皇女ジルヴァーナです」


「ああ。改めてよろしく頼む。我の名は"スーヴェイン=ラース=アンテシェン"。このツェツエ王国より遥か北、魔国から来た。確か其方たちは我をこう呼んでいるな……」


 魔王、と。


 そう言葉を結んだ魔王陛下を改めて眺めてみる。多分上目遣いになってるだろうけど、仕方無い。


「哀しそうな瞳だ……泣いていたのか?」


 自然にされたら避けたり出来ないじゃん。女性の髪をいきなり撫でたら駄目だと思う。くすぐったいし。


「気の所為です」


 それに、今は泣いてなんかないよ? 少し目は腫れぼったいかもだけど。


「その涙も悲哀も、全てを笑顔に変えて見せよう」


「……」


 この世界のイケメンって平気で凄い台詞を言うよね、ツェイスもだし。






 ○ ○ ○





 六年前は戦ったりお茶したりしたけど、確かに大人と子供って感じだったのかなぁ。今もある意味で子供扱いされてる気がするけれど……


 暫くの間ナデナデされて動けなかった。


 今度はお母様も止めなかったけど何でだろ?


 まあ少し落ち着いたし、気にしたら負けだ。




「最早我達は見知った仲。今からはスーヴェインとそのまま呼んでくれ」


「えっと、その、そういう訳には」



 スーヴェイン=ラース=アンテシェン。


 北大陸にある魔族の国、その国王が彼だ。


 見た目は三十代後半の超ハンサムなオジサマって感じかな。実際の年齢は人種と比べる訳にいかないけど、六年前に会った時と何も変わってない。ワイルドパーマ風の髪や、吊り目気味な瞳の色はチャコールグレーだっけ? 明るい感じだから老けて見える訳じゃない。


 特徴は薄い水色した肌。不思議と違和感を感じたりしない、昔から。"始原の竜"の系譜ってやつだな。俺の眼が水色なのもそうらしいし。


 勝手なイメージなんだけど、仕事バリバリして休日にはサーフィンとか楽しんだりしてそう。ちょいワル親父って言葉がピッタリだね、うん。基本的にインドア派だった俺には気後れするタイプ。



「六年前、ジルは十六歳だったか。大人になったら迎えに行くと言ったはずだ。我の想い、知らぬとは言わせんぞ?」


 ああ、あの話って真剣だったのかぁ。おじさんが女子高生みたいな女の子相手にって逃げたんだよな、確か。ロリコンだ!って全力ダッシュした覚えがある。


「……スーヴェイン、さん」


「スーヴェインだ」


「無理です」


「ふむ、まあ今日はそれで良いだろう」


「あの、本当にお一人で来られたんですか? このツェツエに」


 無茶苦茶だよ、この人たち。もう一人は勿論お母様。


「ああ。シャルカの……シャルカ皇妃の言があったのでな。ジルの母は一度言ったら聞かないのだよ」


 お母様って過去に一体何をしてたんだ……? そもそもなんで魔族に知り合いが居るのか分からないし。チラリと横を眺めてみるとニッコリ笑顔が確認出来る。


「余計な詮索は後悔の元よ?」


「あ、はい」


 怖い。思わず視線を逸らしてしまったじゃないか。


「魔王陛……えっと、スーヴェインさん。自分で言うのも恥ずかしいですけど、私ってお母様にそっくりですよね? 以前会ったとき、気付かなかったんでしょうか?」


「ふむ。そう言うがジルが思うほど似てないぞ? 今、並んでみれば成る程と思うが……印象が違い過ぎるな。さっきから余計な事を言うなとシャルカ皇妃が訴えてくるから詳細は省くが、ジルはずっと子供だったと言っておこう。何より魔素の性質が大きく異なるのも有る。我から見れば、だがな」


「魔素の性質……」


 ターニャちゃんが魔素を見てる時、全然違うって良く言ってたけど、そんな感じだろうか。あれぇ? 何だかもうずっと昔な気がする……不思議だなぁ。


「やはり哀しい色だ、ジル」


 手を伸ばして頬に触れようとするものだから、思わず逃げちゃった。隙あらば平気でスキンシップしようとするのはイケメンの本能なのか? ホントに油断ならない。


「魔王陛下? おいたが過ぎますわ。ジルヴァーナはもう女の子でなく立派な淑女なのですから」


 そして被せる様にお母様が会話に入って来る。んー、俺も返す言葉に困るから丁度良いけど。


「ああ、確かにそうだ。失礼した」


 そう言えば、朝からターニャちゃん見てないなぁ。起こしてくれたと思うんだけど、寝惚けてよく覚えてないし。


「ジルヴァーナ? 庭にお散歩でも行ってらっしゃい。目も覚めるでしょう」


 否定の意味を込めて顔を横に振れば、自慢の髪もフワリフワリ。どう? 綺麗でしょ?


「いいから。私も魔王陛下と色々お話しがあるの」


 ああ、成る程です。


「んー、分かりました」


 まあ何となく居心地悪いし、丁度良いかも。よし、行ってこよう!








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