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ジルちゃん、やっぱり正座する

 




「うっひょひょーい!」


 全力の魔力強化はちょっと久しぶりだぜ! 


 グングンと後方に流れて行く樹々や街に興奮する。子供の頃から鍛えた強化は今や神速の領域に入っただろう、むふ。しかも最近話した魔王陛下スーヴェインさんにコツを教えて貰ったのだ。あの人?マジで強過ぎだから、うん。


 短期決戦ならば可能性はあるけど、まあ勝率は低いかな。魔素の動きは鈍く感じたし、何より魔力のコントロールが上手くいかなかった。多分時間が経過したら、空間の魔力が奪われて練れなくなると思うんだよ。やっぱり魔族ってヤバイよね。


 薄い水色がかった肌も何だか格好良いし、マジでイケオジだったな。現代日本なら、仕事バリバリで休日にはサーフィンとかしちゃいそう。オタク気味だった俺には眩し過ぎて近寄らないタイプだね。


 まあ残念な事にロリコンだけど。


 超絶可愛い世界最高の美少女、其れが俺。だから理解はするけどロリは犯罪だろう。この世界ではまだ16だし、高校生になったばかりな感じだよ? いや、貴族や王族なら普通なのかな……


 そういえば「ならば大人になったら迎えに来る」とか言ってたけど、冗談だよねきっと。


「もう少しだぞ、待ってろ邪龍!」


 ヤバイ、俺ってば超カッコ良いぜ。帰ったら"ドラゴンスレイヤー"とか言われちゃう! 


 そうだ、台詞も考えよう。


「私はジル! お前を倒す者だ!」


 いや、微妙かな。もう少し長くて良いかも。


「この魔力銀の剣に斬れないものは無い……それが例えエンシェントドラゴンの鱗であろうとも」


 ん? 古竜だっけか?


 しかし魔力銀の剣って言い難いんだよな……何か別の名前とかどうだろう。魔法を操り、剣だって一流。流石に超級の剣聖?やエロジジイには勝てないだろうけどさ。


 あっ。あのエロジジイに仕返ししてないな。お尻を何度もナデナデしやがって……今度会ったら吊るしてやるんだ。


 うーむ、魔法剣士ジル? いや何か英語の方がいいかも。何だっけ、マジック、いやスペルキャスター? でも俺って詠唱しないし……


「おっ、アレかな」


 まだ随分遠いけど、空に浮かぶ雲より真っ白な飛行物体が見える。遠過ぎて距離間もサイズも分からない。


「へぇ……本当に白いなぁ。それに凄く綺麗だ」


 まあ昔から居る訳だし、人に例えるなら皺々のお爺ちゃんだ。きっと悪代官とか悪者政治家みたいにイヤらしいに決まってる。悪い事してる奴に限ってイメージ大切をするからなぁ、多分。


「んー、降りる? まあ助かるな」


 流石の俺も空は飛べないのだ。ブオンブオンと翼を広げて、ゆっくりと下降していく。いや音は聞こえないけど。平原というか高地と言うか、随分とだだっ広い場所みたい。


「よし、まずは近くから」


 とりあえず、ジルちゃんチェックだ。


 魔力強化を少しずつ弱めれば、反動なく止まれる。一気にズザザっと急停止するのも格好良いけどね。それに制御に失敗したら大変な事になる、服も下着も……いやいやそれは関係ないし!


「ほぇー、でっかいなぁ。純白の竜ってあんなに綺麗なんだ。翼を広げたら何メートルあるんだろ? 100mくらい……そこまでないか」


 丁度俺の身体を隠すのに十分な岩が転がっていたので、其処から眺めてみる。うーむ、ちょっと怖くなってきたんですが。


 ほら、もしかしたら邪龍じゃなくて優しい竜さんなのかも。真っ白な鱗だって綺麗だし? 夕焼けみたいな瞳だってつぶらで可愛い……くはないけれど。


 しかし、とんでもない魔力の塊だ。当たり前の攻性魔法は効かないだろうなぁ。昔見たアニメとかも魔法なんて意味無かったもんね、竜には。


『うむ、腹が減って来たぞい。この際()()()()()じゃな、かかか』


 た、食べ尽くし⁉︎ 頭に響くような声……少し女の子っぽいのに……アートリスはツェツエ第二の都市で、人も沢山いるんだぞ!


『ヒトは本当に素晴らしい味を生み出すからのぉ』


 ひぃ……素晴らしい味だって⁉︎


『あんな街は初めて見るし、新たな発見があるかもしれん、楽しみじゃの』


 竜なのに、ニヤリと笑ったのが分かる。や、や、やっぱり邪龍じゃん‼︎ それも生贄とか求めるタイプじゃなくて丸齧り系だよ! 牙とか滅茶苦茶鋭いし、見た目に騙されちゃダメなヤツだ! もしかしたら鯨みたいにズオォ〜って吸い込むのかも……


 うぅ、やっぱりやるしか無い!


「ちょっと待ったぁ!」


 あっ、用意してた台詞忘れてた……もう勢いだ!


『ん? なんじゃなんじゃ?』


 橙色した眼が下を見て、オマケに首まで傾げる。妙に可愛らしい仕草だなぁ……い、いやいや騙されちゃダメだ!


「これ以上アートリスには近づかせない! このジリュ……ジルが相手だ!」


 舌噛んだ、痛い。


『おお、此れは可愛いらしい女子(おなご)じゃな。(わらわ)の審美眼でも最高だと分かるぞい。魔力の澄み具合も素晴らしいし、街まで案内を頼もうかのぅ。どうじゃ? ご褒美を上げるぞ?』


 ご褒美⁉︎ もしかして世界の半分をやろうとか、それとも可愛い女の子を紹介してくれたり⁉︎


「わ、私はアートリスの冒険者だ! 丸齧りなんて絶対に許さないからな!」


『かかか、丸齧りなんて下品な事はせぬて。妾はちょっとずつ摘むのが好きなんじゃ』


 もっと悪趣味じゃん。人は竜と違ってちょびっと摘まれても死ぬからな? でもデカ過ぎるし、どうしよう……せめて足止めするか、帰って貰うのが一番だけど。


『さて、ヒトを愉しもうかのぅ』


 ん? 何やら魔力が古竜に集まり始めたぞ。な、何をするつもり……ヒトを愉しむって、怖すぎる!


「うぅ……魔法剣士ジルちゃん、行くしかない!」


 手加減とか有り得ないし、最初から全力。魔力強化が身体と服、更には剣にも変化を与える。原理上は斬れないものは無い筈だから、頑張れば撃退出来るかも!


『おぉ? 何やら面白い魔法じゃ。娘や、その若さで其処まで魔力を操るとはの。ヒトの域を軽く超えておるぞ』


 何だか余裕そうだけど、泣いても知らないからな!


 鞘から抜いた魔力銀の剣は、ほんのり白く輝いている。そして一気に前へと駆け出す。でも頭や首なんて届かないし、脚を攻撃だ! 腿の付け根辺りなら少しは柔らかいかも。


『玩具の御披露目かの? 刃もたっておらんし、キラキラ光って良い感じじゃ。しかしそんな量の魔力を求めるとなると、ゴッコ遊びには難しいのぉ。なに、妾は玩具にも……』


「馬鹿にして! とおりゃー」


 スタタと近寄り、太ももの付け根辺りに剣を振った。真っ白な鱗が綺麗で、俺が反射して映っているのが見える。それごと両断すれば流石の邪龍も驚いたみたいだ。


『な、何をするんじゃぁ! あぁ、妾の鱗が真っ二つに……』


 いける! この鱗、意外と柔らかいぞ!


『こりゃ! 悪戯が過ぎるぞ!』


 二刀目を振り抜こうとした時、竜の体全体から感知する必要すらない馬鹿みたいな魔力の波が噴き出した。何とか耐えようと頑張ったけど……


「うわぁ〜〜!」


 無理でした……ゴロゴロと転がりながら何とか衝撃を緩和するしかない。


『綺麗な顔して、とんでもないお転婆じゃ! そもそもどうやって玩具の剣で鱗を……いや、もしかして』


 少しだけフラフラする頭を振って立ち上がり、そしてデカイ古竜の姿をもう一度見ようとしたんだけど……


「あ、あれ? 消えた?」


 あの一瞬で、でっかい真っ白な竜の姿が消えたのだ!


『ぬぉぉ! やっぱりじゃ!』


 うん?


 何やらちんまい女の子が立ってるんですが?


 真っ白なワンピース、やはり真っ白な髪は綺麗なオカッパで、瞳だけは夕焼けみたいな橙色。


 しかもそのワンピースの裾を可愛い両手で持って、思い切り持ち上げてる。当然に脚もお腹も晒されて、白磁のような肌が見えた。そして何よりも……


「縞々パンツ、だと……」


 横向きに彩る縞々模様も橙色で、白色とのコントラストが眩しい。


 しかし、一部が非常に危険な状態ですね、ええ。横の生地が千切れかけてて、今にもストンと落ちそうです。て言うか、何で脱げないんだ? 物理法則無視し過ぎだよ。


『変化の箇所がよりによって……鱗が生え変わるまでどれだけ時間が要ると思っとるんじゃ!』


 ん? 鱗って言った?


 その可愛らしいちんまい女の子は顔を上げ、ギロリと俺を睨む。真っ白なワンピース、真っ白な髪、橙色した瞳とパンツ。我が明晰なる頭脳は彼女の正体が何なのかを明らかにした。あの小さな口じゃ丸齧りは無理だよね、うん。


「え、えっと……」


『このお転婆娘!』


「は、はい!」


 ちょこちょこと可愛らしく歩いてくると、俺を見上げる。怒ってらっしゃいます……



『其処に直れ!』



 あわわわ……魔王陛下も上回る魔力がジンワリと滲み出して……



 気付いたら正座してました。












 ○ ○ ○



 色々と事情を話したんだけど……


『このたわけが! 何で妾がヒトを丸齧りするんじゃ!』


「ご、ごめんなさ〜い」


 ルオパシャちゃんは手を腰に当て、肩幅に開いた両足で大地を踏み締めている。勿論俺は正座のままだ。地面に直接座っているから、脚が痛い。ちょっと涙目になってるし……


『……娘や、名を何と言う』


「えっと、ジルって言います。アートリスで冒険者をしてまして」


『なんじゃ、妾の討伐依頼でもあったのか?』


 勿論邪龍復活で……あ、あれ? そう言えばギルド長は止めてた様な……それに余り焦って無かったし。普通邪龍が明日にも街に来るなら真っ青になってもおかしくないよね、うん。


「い、いえ。全く」


『つまり、ジルが妾をヒトを丸齧りする竜だと勘違いした訳じゃな? そして鱗を斬ったと』


 あばばばば……


 こうなれば全力土下座だ!


『なんじゃその体勢は……もう良い、頭を上げよ』


「うぅ、はい」


『まあヒトの命は短い。妾にはつい最近でも、お主らにとっては長い年月となろうて。このルオパシャがヒトなど喰らわんと知らぬ者もおるじゃろうな』


 クスリと笑うルオパシャちゃん、超可愛いんですが。しかも滅茶苦茶良い子だし!


「すいません……」


『かかか! 素直な女子じゃの。悪い事をちゃんと謝る事が出来るのは素晴らしいぞ?』


「えっと、古竜様」


『ルオパシャでよい』


「ルオパシャちゃん!」


『お前、急に馴れ馴れしくないかの?』


「鱗、生え変わりますか?」


『うん? まあ暫くは掛かるが』


 そう言いながらルオパシャちゃんがもう一度裾を持ち上げた。正座する俺の目の前で。


 当然に綺麗な肌が視界に広がり、至高の縞々パンツから目が離せなくなる。脱げそうで脱げない感じ、背徳感が堪りません。


 例え俺より幼い容姿だろうと、齢数百年、いや数千年かもしれない古竜。つまり、ロリではない!


『何で近寄って来るんじゃ……その姿勢でどうやって』


 正座のままスリスリと近付いたのがバレただと⁉︎


「き、斬れた箇所を確認しようかと」


 完璧な言い訳だ。


『ならば何故に真っ赤になっておる。それに鼻息が荒くないか? と言うか鼻血を拭け』


 無言でポーチからハンカチを取り出し、拭き拭き。


 ちなみに、この手の鼻血には治癒魔法が効かないのだ。何故だろう?


『ジル』


「は、はい! もう見てません!」


『そんな事は聞いておらん。そもそも見たいなら好きなだけ見れば良い』


 す、好きなだけ⁉︎ そんな事言われたら逆に無理だから! 童貞を舐めんなよ⁉︎ 恥ずかしいじゃん!


『お主、面白いヤツじゃのぅ。先程の魔法、見事じゃった。あれ程大量に、しかも破綻無く。ヒトの域を超えておったぞ? その美貌といい、もしかしてヒト種ではないのか?』


「人間ですよ?」


『ほう、尚更素晴らしいの。素材として貧弱な魔力銀をあの様に使うとは。その黒い服もそうじゃろう? 妾の鱗をああも簡単に斬る力、その若さで驚きじゃ』


 そう? まあジルちゃんですから!


『その顔、微妙にイラッと来るが……妾はジルに興味が湧いたぞ? どうじゃ? アートリスとやら案内してくれぬか?』


「それってデー……も、勿論です!」


 やったぜ! 女の子とデートなんて最高じゃん! 実際の年齢なんて関係ない、だって超可愛いもん。


『かかか! 良い返事じゃ! そうじゃな、あの鱗を褒美として持って行くがよい。ヒトの間では高値で取引されるのじゃろ? 妾は詳しいのじゃ』


 半分になった鱗を指差し、ルオパシャちゃんが笑う。


 欠けたパンツの位置からしてあの鱗は……ヤベェ、貴重品じゃん!


「あ、ありがとうございます!」


 絶対売らないぞ! って言うか買取出来るところないだろ。多分嘘みたいに高いに決まってます。


『うむうむ、では行くかの。何やら周囲にもヒトが増えて来たようじゃ。余り騒がしくさせても悪いからの』


 言われてみたら魔素感知に引っかかる人が何人かいるな……まあ遠目にはちっこい女の子と俺しかいない。正座だってこの世界では知られてないから、何をしてるか分からないだろうし。


「ルオパシャちゃんの魔力凄いし、気付く人は気付くかも」


『うーむ、その辺は仕方ないじゃろ』


「あの……最近作った隠蔽魔法使います?」


『ほほう! その様なモノがあるのか! よし、試してみよ!』


「では、力を抜いて下さいね?」


 ニコニコと笑顔を浮かべるルオパシャちゃん、可愛いな。俺ってロリじゃない筈だったけど、目覚めちゃいそう。



 え? 隠蔽魔法を作った理由ですか?


 それは聞いちゃ駄目なんです、はい。









間話終わりです。第三章投稿まで、かなり時間が開くと思います。暫く待って貰えると嬉しいです。

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