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TSお姉様、TS女の子で遊ぶはずが反撃されて赤面プルプルする話  作者: きつね雨
第二章〜王都アーレ=ツェイベルン〜
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TSお姉様、心配される

 





「ふぃ〜……」


 すっごく疲れた……


 色々と挨拶したり、手続きを踏んで漸く部屋に辿り着いたよ。とは言っても、アリスちゃん達が手伝ってくれて早く済んだ方だと思うけど。体調も心配だし、無理しない方がと伝えたら「扶翼するのはジーミュタス家です。わたくしがその代表として此処に……」まあ長くなるから割愛するけど、アリスちゃんは偉い!まあ、そういう感じだ。


 最初はアレだったけど、素直で真っ直ぐな女の子なんだろう。ターニャちゃんが隣に居なかったら、涎が出ていたかもしれない。


「アリスちゃんか……」


 アリスちゃんは何故か優しくなり、色々とお話が出来た。最近のツェツエの様子や、クロが如何に格好良いかの惚気まで披露されたのだ。正直乙女フィルターが何重も掛かっている気がしたが、まあ恋する女の子は可愛いものだ。


 因みに、変態ストーカーでエロ餓鬼だとは明かしていない。感謝しろよ馬鹿クロ!


 あと不思議なことにツェイス殿下の事を話して来たけど、あれは何だったのかな?まるで「最近のツェイス殿下ニュース」を聞いている気分だった。まあ誇りあるジーミュタス家としても、世話役の責任からも下手な事をするなと言う警告だったのかも。アリスちゃん、真面目そうだしね。


「しかし……なんだろ、姉々様(ねねさま)って」


 途中から急にそう呼び始めたのだ。最初のキツイ感じも消えて、可愛い縦ロール美少女に変身した。思わず二度見してしまった程だ。そうすると縦ロールが素敵に見えるのだから不思議だね。


「でも……アリだな、グヘへ」


 ターニャちゃんのお姉様も良いけど、アリスちゃんも可愛いのだ。もしかして、前世今世を合わせた人生初の女の子からのモテ期が来たのだろうか?


 そのターニャちゃんは別室……と言うか、別棟と言って良いだろう。今いる此処は王城内だが、通されたのは俺だけだ。まあ、招待を受けているのは魔剣ジルだけだし仕方がない。明日の朝でも会いに行こう。疲れただろうし、すぐに寝ちゃうかもしれないし。


「さてと、風呂でも入るか」


 流石王城だけあって、室内にもお風呂が完備されている。魔力銀の応用ではないが、お湯は波々と満たされていた。どうやって管理してるのかな?


「まっいっか」


 いそいそと装備を外していき、下着も籠に入れた。装備解除はターニャちゃんがいれば一瞬で終わるだろうけど、アレは二度としないぞ、うん。


「ふんふーん♪」


 珠玉のジルの肌は何時も美しくなくては。おや……おっ!アレは最近流行りの石鹸では!?やったぜ!


 夕御飯は部屋まで運んでくれるらしいし、ゆっくりとお風呂を楽しむのだ!







 ○ ○ ○







「ターニャさん、他に分からない事はありますか?」


「いえ、大丈夫です。クロさん、ありがとうございます」


 二人は城外に設けられた居室へと案内されていた。地方から城を訪れた役人や、行事に参加する一般客が泊まる複合施設だ。とは言え天下のツェツエ王国。一つ一つの部屋は十分過ぎる程に豪華だった。ベッドなど、一人寝るにはあまりに広い。


「其処のベルを鳴らせば使用人に伝わります。必要な物は大抵用意されますから、安心して下さい。ジーミュタス家がかなり力を入れていますから、不便はないと思いますよ」


「ジーミュタス家……アリスお嬢様は随分と態度が変わりましたね」


「ああ……確かにそうですね」


 クロエリウスは苦笑して、しかし驚いてはいなかった。


「クロさん?」


「はは、すいません。何と言うか……よくある事ですから」


「よくある事ですか?」


「最近は自身で抑えているようですから少なくなりましたが、お師匠様の魅力にやられてしまう人は沢山います。僕もその一人ですし、性別に関係はないですから。事実ターニャさんもいつの間にか捕らえられた……そう思いませんか?」


「……言われてみれば、こんな短期間なのにお姉様をお姉様と信じていますね」


 ターニャも笑顔を浮かべ、認めるしかない。


「アリス様もいきなり近くで手を握られて、優しくされたら耐えられなかったのでしょうね。良く知る僕ですらふと目が離せなくなる美しさですから。真っ赤になってました」


「真っ赤……優しくって?」


「ターニャさんなら魔素を感知出来たと思ってましたが」


「それは……意識しないと難しいですから」


 視覚的に見ることすら可能だが、ジルに伏せるよう注意されているターニャは明かさなかった。


「そうですか。体調の優れなかったアリス様に治癒魔法を使ってましたよ? 手を握ったのは身体の異常を感知する魔法を行使するためです」


「なるほど、人誑し極まれり、ですね」


「ははは! 確かに、面白い表現です」


 ひとしきり笑うと、クロエリウスは真面目な表情に変わる。それを見たターニャは首を傾げた。


「どうしました?」


「正直、心配です」


「心配?」


「お師匠様はたった一人で王城に入りました。誰も守れない、周りに味方もいません。僕もターニャさんも引き離されてしまいましたから」


「……どういう意味ですか?」


 クロエリウス自身が言っていたのだ。ジルは何でもありの戦いなら誰にも負けない、と。しかもツェツエには立派な貴族も多く安心だとも。なのに、あの理不尽の塊みたいなジルが心配だと言うのだ。その表情を見たらターニャも不安になる。


「誤解しないで下さい。お師匠様の身体に危害が加わるとかではありません。剣神も含め全員で一斉にかかればお師匠様といえどタダでは済みませんが、それをやる馬鹿など少ない。心配なのは……落ちないか、と」


「はい?」


「ターニャさんがさっき言いました、人誑しだって。このツェツエ王国の王子ツェイス殿下はお師匠様を想っています。六年前の危機で共に戦った仲間として、一人の女性として」


「えっ!?」


「やはり知らなかったんですね?」


「は、はい」


「今回の依頼は竜鱗の訓練が主目的ではありません。長らく王都に来ないお師匠様を誘い込む、それが理由です。殿下は姑息な手段などしないでしょう。それだけ高潔で立派な王子殿下です。しかし、周囲はどうでしょうか? 超級の力を王国に縛り付ける……そう考えている者は少なくありません。陛下は寛大な方ですが、貴族達は一枚岩ではないですし。その意味で言えば、お師匠様のいる城に味方はいません。仕掛けるなら最高の場所ですから」


「で、でも、お姉様の意思を無視するんですか?」


「ん? 面白い考えですが、王家が望めば基本的には逆らえないものです。希望はお師匠様が超級で替えの効かない冒険者であること、ツェツエの危機で殿下の御命を救った英雄である事です。だから今までも無茶は出来ませんでしたが、今回はどうなるか……」


「もし……お姉様がツェイス殿下を受け入れたら」


「当然私達ではおいそれと会えなくなります。それどころかまともに話す事さえ難しいでしょう。次期王妃陛下となられる方ですから当然です。特に御子を授かるまではそれこそ、ですね」


 余りの現実にターニャは黙り込むしかなかった。ジルを掌で遊ぶのは大好きだが、相手がいないのでは弄る事も出来ないのだ。この世界で唯一、全てを許し包んでくれる存在が離れていくかもしれない……それは酷く恐ろしい事だった。


 そして同時に疑問が浮かぶ。何故力も無い少女の自分に伝えるのか。内容は王家に関わる事で、下手したら政争になる危険性すらある内容だ。クロエリウスはツェツエの勇者として幾らかは関係するし、何よりジルを好きなのだ。だが自分は……ターニャが悩み始めた時、答えは齎された。


「仮に何らかの力尽くな方法を取ったとしても、お師匠様なら本気で逃げに徹すれば問題はありません。個人として最強の人間ですから。魔王でも現れない限りはまず大丈夫です。しかし、誰にも弱点があります。其処を抑えられたら……お師匠様は抵抗も出来ないでしょう」


「弱点?」


「……自覚なし、ですか」


 クロエリウスはターニャから目を離さない。答えは其処にあると。


「まさか……」


「そう、貴女です。ターニャさんを引き換えにすればお師匠様の力はゼロに出来るでしょう。はっきり言えば"人質"です。アートリスに残さなかったのは守れないからですし、魔剣の側が最も安全ですからね」


「でも……私一人の為に其処までする筈は」


「はあ……やはりお師匠様の妹ですね。自分の価値を低く見積もり過ぎです。それに……どれ程に貴女を愛しているか分からないとは言わせませんよ」


「……そう、でしょうか」


「お二人に何があるのか僕にも分かりません。しかしあんなお師匠様を見るのは貴女といる時だけです。悔しいですが、僕や誰であっても超級冒険者の魔剣として向き合っています。貴女以外には」


「どうすれば……」


 此処で張り詰めた空気は弛緩した。クロエリウスの口調が砕けてきたからだ。


「ターニャさん、驚かせてすいません。最悪の可能性を言っただけですから、あまり深く考えないで下さい。注意点は一人で出歩かない事、知らない相手にはついていかない事、出来る限り僕を伴う事です。お師匠様にも頼まれていますからね」


「お姉様が目を離さないでと言ったのは、その意味もあったんですか?」


「勿論です! ターニャさんの前ではアレですが、世界に五人しかいない超級。多くの貴人とも接見してますし、世の中を深く知っている方ですよ? 最近のお師匠様しか知らないターニャさんでは想像出来ないでしょうが、怒らせたらあんな恐ろしい人はいません。常識では計れない大きな人なんです」


「知りませんでした……」


「きっと今頃はターニャさんを心配しながらも、対策を練っています。王家の皆様は信用出来ますが、他は分かりませんからね。ですから、万が一の時にお師匠様が自由に動けるよう僕達も気を付けましょう」


 お馬鹿で可愛いお姉様としか理解してなかったな……クロエリウスの説明を聞けば、なるほどと思うターニャだった。


 二人は窓から見える王城を仰ぎ見て、世界最強の冒険者でありながらも優しくて綺麗なジルを想った。


 初日の夜はそうして過ぎていったのだ。








 ○ ○ ○









「うま! これ美味い!」


 ついさっき届けられた食事を堪能させて貰ってます。


 お世話係に来てくれた二人の女性がいたが、丁重に断って一人で食べてるのだ。可愛いメイドさんならともかく、お年を召した方に見守られながら食事する趣味はない。すいません!


 多分ジーミュタス家で選んだ凄い人達なんだろうけど、マナーなんて無視して食べたいからね。


「おお!これも最高じゃん! 何このお肉、ん〜」


 一見は固そうな肉なのに、噛めばジワリと肉汁が溢れてホロホロと崩れていく。その時も旨味がドカンと来るから堪らない。


 さっき摘んだ野菜も、スープも叫びたくなるほど美味しいのだ。


「ターニャちゃんと一緒に食べたかったなぁ」


 一人飯には慣れているが、最近は二人での食事が多かった。プロ並みの腕を誇る手料理を振る舞うターニャちゃんは最高の嫁だ。もうターニャちゃん抜きの生活なんて考えられない。きっと禁断症状が出てプルプルと震えてしまうだろう。


「お風呂だって」


 ツェルセンのお風呂は最高だったな。ターニャちゃんが可愛いお尻を膝に乗せてくれて、細い腰にも腕を回したのだ。プニプニスベスベの肌は何時間でも触り続ける自信があるぜ。


 ふと化粧台に立てられた鏡に自分の顔が映ったのが見えた。他人に見せられない表情をしていたのでキリリと引き締める。危ねえ、完全に変態不審者の目だった。いや、会った事ないから憶測だけど……


 決めた! 今日見る夢で、必ずターニャちゃんを捕まえる。現実と同じで夢の中でも強敵だ。魔素操作も上達して、魔力強化も無効化されたり。しかし……今日こそは!


 夢の中なら何しても大丈夫!


 そして……


「グヘヘ……」


 鏡を見る。


「おっと」


 引き締める。


 そうと決まれば早く寝よう! 明日は忙しいだろうけど、朝一でターニャちゃんに会いに行かなくては。毎日プニプニほっぺに触らないと禁断症状が出る病気なんだから仕方がない。仕方がないったら仕方がないのだ!


 俺は超級冒険者の魔剣。


 誰にも止められないジルなのだから。













「すいませーん」


 食器は片付けないとね!







 

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― 新着の感想 ―
[良い点] こんな真面目で冷静なクロを初めて見た気が…… ターニャちゃんも真剣なのに、一方その頃ジルは悩んでもいない。やっぱりジルはジルだった(笑) [気になる点] 当たり前に存在していた大切な人…
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