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TSお姉様、TS女の子で遊ぶはずが反撃されて赤面プルプルする話  作者: きつね雨
第二章〜王都アーレ=ツェイベルン〜
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TSお姉様、鬼になる

 




「クロは最近どうしてるの?」


「いつも同じです。城で修行してるか、討伐隊と共にするか……最近は討伐隊と同行が多いですかね」


「ふーん、討伐が多いって冒険者は?」


「勿論頑張っているみたいですけど、アートリスと比べると一段劣りますから。軍が強いのも善し悪しです。西部の山岳地帯とか、東部の海岸沿は手が回ってないのが実情ですね。その分軍の練度は上がって、最近は中々ですよ?」


「ふふふ……クロも頑張ってるのね、偉い偉い」


 クロの金髪はツヤツヤで癖っ毛もない。撫で撫でしてると、昔飼ってたゴールデンレトリバーのゴン太を思い出すんだよなー。


 このくらいの年齢なら撫でられるのを嫌がりそうなものだけど、そんな様子は無くて目を細めてる。ますますゴン太っぽい。


「勇者としてはまだまだです。魔王には敵いそうもないですし……お師匠様と結婚するのはまだ先ですね」


 ゴン太を幻視してホンワカしてたのに、思わず手を引いてしまう。


「クロ……それは断ったでしょう? 私は誰とも結婚しませんから」


「今はそれでいいですよ? 女性の我儘を受け入れるのも男の器ですから。未来は決まっています」


 駄目だ……話が通じない……


「はあ…… 貴方なら王国や貴族から話が来てるでしょう? もう少し周りを見てみなさい」


「確かに幾つか縁談の話は来ていますね。ある伯爵の娘なんて、僕の跡を付けたり、探し回ったり、この前なんていきなり抱き付かれましたから……非常識な娘です、本当に」


 お、ま、え、が言うな!! 鏡を見ろよ! なんでストーカーは自らを省みないんだよ!?


「アートリスに来る前にキッパリと断りましたから、もう大丈夫でしょう。僕にはお師匠様がいますからね」


「……どう断ったの?」


「勿論、心に決めた人がいるとハッキリ言いましたよ?」


 凄く嫌な予感がするんだが!


「まさか……私の名前とか言ってないよね……?」


「心配しないで下さい。名前だけでは伝わりませんから、お師匠様の大好きなところも全部言いましたよ! 当然です!」


「アホかーーー!!」


 スパーーーーーン!!


「痛い! お師匠様、なんで叩くんですか!?」


「当たり前でしょう!? 私は今から王都に行くのよ!? その人に会ったらどんな顔すれば良いのよ! ……って言うか、私は関係ないし!」


 絶対アレだよね! おーほっほっ!とかの笑い声で、扇子とか口元に当てながら近くに執事とか居る人だよね!? お嬢様とか言われてさぁ!


「大丈夫です。その辺りは計算済みですから」


「どんな?」


「簡単です。お師匠様の美貌と力を見れば、直ぐに諦めるでしょう」


「この、おバカーーー!」


 スパパーーーーーン!!


「イタタッ!! お師匠様、普通の人なら頭が吹き飛んでますからね!?」


 あ、あかん……絶対フラグ立ってるよ……うぅ、只でさえ面倒なのに……!


 このイケメンショタめ……そんなに嫌なら代わってくれよ! 俺だって可愛い女の子からモテてみたかったのに!


「……お姉様、どうしました?」


「あっ……ごめんね、起こしちゃった?」


 穏やかな陽気と、ゆったりと進む馬車のお陰で、暫く前から寝ていたのだ。可愛い手で目を擦りながら、ターニャちゃんは小さな顔を上げた。うん、その仕草も可愛いよ!


 俺はクロの隣から後ろに戻り、ターニャちゃんの前に座る。お尻あたりに強い視線を感じたが、頑張って無視する。四つん這いで移動したから、わかるけどさ……男の視線って、本当に分かり易いよなー。


「お姉様、大丈夫ですか?」


「ええ、起こしてごめんなさい。まだ寝てていいよ?」


 俺のモモをポンポンして、膝枕へ誘導する。さあさあ、天国へどうぞ! ん? クロ、何羨ましいって顔してるんだ! 前を向け!


「……いえ、目が覚めたので……お姉様、宿場町って遠いんですか?」


 うぅ……いつか膝枕して、頭を撫で撫でするんだ! クロが犬なら、ターニャちゃんは猫だね。早く懐いてくれないかなぁ。


「夕方には着くよ? アートリスと王都を結ぶ街道は整備されてるから、安心してね」


「あの……夜営とかは……」


 分かる! 憧れるよね! 森の中でテントを張って、焚火なんかしちゃったりして……スープに干し肉、肩なんて寄せ合ったりしたら最高!


「今回はないかな……夜営は見張りがあるし、慣れないと疲れが取れないから。お風呂も入れないし、お手洗いだって大変なの」


 そういえば、ターニャちゃんも此方に来てそろそろ約一か月。多少不順だとしても、そろそろあの日が来てもおかしくない……そう! TSイベントで外せない女の子の日! 目を配っておこう、うん。まあ、当事者からすると、笑い事じゃないから遊んだりはしないけどね。宿場町に着いたら話をしないと。


「ああ、そういえばそうですね……お姉様は普段一人なんですよね? ギルドのお仕事はどうしてるんですか?」


「私一人なら、幾つもやり方があるからね。大した距離じゃなければ、魔力強化して帰っちゃうし。魔法を使えば、色々と便利なの」


「ターニャさん、それ普通じゃないですから……一人で全てを完結させるのは、お師匠様くらいですからね? 戦闘以外に魔力を使うのは、基本的にしません。いざって時に疲れてますじゃ、意味がないので。そんなデタラメを許すのはお師匠様だけです」


「クロ、いちいち茶化さないでよ。前を向きなさい」


「ウラスロさんも言ってましたけど、お姉様ってチー……いえ、凄いんですね」


 いま、チートって言うつもりだったよね!?


「一応頑張って練習したからね」


「練習してどうにかなる段階を軽く超えてますけどね」


 クロ、うるさいよ!


 ん……おや?


 珍しい気配だな……何かの群れか?



 俺は息をする様に魔素感知を行なっているから、直ぐに分かった。街を出たら何時も行っている。因みに一人で冒険に出る事が出来るのは、このお陰でもあるのだ。クロを見ると、まだ気付いてないな。まだまだ修行が足りないぞ、勇者くん。


「お姉様?」


 王都への各街道は普段から見廻りがされているし、定期的に討伐隊も巡回している。それどころか軍の新人達の訓練に利用して、ギルドからも応援や助力の依頼が掛かるのだ。なので、これ程の群れが感知されるのは非常に珍しい。


 顔を上げた俺の雰囲気にターニャちゃんも異常を感じたかな。ちょっと待っててね。


 ゴブリン共じゃないな……魔力の規模が違い過ぎるし、体格も合わない。まだハッキリとは分からないが、おそらく四足歩行か。速い……この辺に現れては駄目なレベルだ。例えば新人達じゃ歯が立たないのは間違いない。14……いや15頭か?


「お師匠様、どうしました?」


「戦闘準備を。恐らくウルフ系、15頭」


「どの方角ですか⁉︎」


 馬車の速度が落ちる。


「王都側に出るわ、森からよ。逃げるのは無理ね。馬車を止めなさい」


 無言で頷きながら指示に従い、馬車を止めたクロは御者台から飛び降りた。右手には剣を持ち、魔力強化の準備を始めた様だ。ふむ、中々の練度だね。本当に頑張ってるんだなぁ。


「何故こんな場所に……アートリスからもそう離れてない……アレか!」


 黒くてデッカい狼達が森から姿を現して、キョロキョロと周囲を警戒してる。


「うん、アークウルフね。ターニャちゃん、馬車から降りないでね? 大丈夫だから」


 流石にアレを見たら顔色が変わった。まあ、軽自動車サイズの狼を見たら、誰でもそうなる。しかも15台、違った15頭もいるし。


 アークウルフ達は、直ぐに俺たちを見つけて速度を落とした様だ。狼らしく、円状に広がり緩やかに近付いて来る。もし背中を見せたら突っ込んで来るだろう。


 まあ、人の気配が多いこの辺りに現れては駄目な奴等だ。ぶっちゃけ絶望的な状況だろう、俺がいなければね! いきなり魔法をぶっ放してもいいが、元弟子の実力を見てみる良い機会だな、うん。


「アークウルフ! 対処するのにダイヤモンド級が推奨される……お、お師匠様……」


 うん? 何チェンジしようとしてるのかな?


「クロ、丁度いいわ。行きなさい」


「いやいやいや! あんなの一人では無理ですって! 軍隊が要るでしょ、アレは!」


「貴方は勇者でしょう? コレも修行よ。大丈夫、死ななければ何とかして上げるから」


 流石に蘇生魔法などは存在しないが、回復なら大丈夫。やはり一瞬で大怪我を治癒など不可能だけど、後遺症は無いようにしてあげるからね!


 あんなのが現れた原因も重要だけど、今は討伐しないとね。修行と合わせてお金も稼げるなんて、一石二鳥だぜ!


「やっぱりお師匠様は変わってない! 戦闘になるとコレだよ!」


 泣きそうな顔をしたクロはそれでも魔力強化を行い、剣を抜き放った。同時に炎の魔法を放つつもりだろう、魔力を練り始める。ふむ、焦ってると駄目だよ?


「彼奴らは魔力も通しにくいから、しっかり練って魔法を放つのよ? 生半可な魔法は弾かれるから、頑張ってね」


「この(オーガ)! お師匠様は(オーガ)だよ!」


「はいはい、危なくなったら助ける……かもしれない、多分」


「うわーーーー!!」


 クロの頭上には炎の玉が幾つも浮かび、アークウルフへと向かって行った。








 アークウルフ……頭頂に斧状の頭骨が迫り出し、その巨体で体当りを行う。その威力は大木をも叩き折ると言われ、人など柔らかい若木と一緒だ。ウルフの名に反して、攻撃中に噛み付く事は少ない。しかしながら狼らしい群れを形成し、数にも依るが非常に危険な魔物だ。


 奴等は都市部周辺や人里の付近には、まず姿は見せない。主に山岳地帯や火山帯などに生息しており、エリアによるが生態系の頂点に近く天敵は少ない。未だ謎多き魔物だが、主に死骸を骨ごと破壊してバラバラに持ち帰るらしい。前世で言えば、でっかいハイエナ?かな。


 群れを発見したら最低でもコランダム、出来ればダイヤモンド級の冒険者が必要になる。勿論たった一人では対処不可能で、複数のパーティで立ち向かう事が推奨される。


「……て言う魔物かな。この辺りで見掛ける魔物じゃないんだけどね。あんなの早々いないから安心してね?」


「お姉様、ゆっくり解説してる場合じゃ……クロさんが……」


 綺麗な指でフルフルと指す方向には、クロが奮闘?している姿がある。


 アークウルフは基本突進して来るから、真正面にいては駄目だ。絶えず動き回り、側面に移動する必要がある。まあ、躱しざまに斬り付けるって方法もあるけど、失敗したら骨がバラバラだ。見切れる技量が必要だよね。


「お師匠様! それは相手がっ、うわっあぶね! 一頭なら出来ますけど、周りを囲まれたら意味無いですよっねっ! 全方位真正面ですけど! げっ……剣が通らない!」


 うん? まだ余裕があるな。やっぱり腕が上がったよなぁ……もう少し様子を見ようかな。


「魔力強化が疎かになってるよー。流石のアークウルフもクロの本気の速度にはついてこれないから、ほらっ頑張って!」


「ハァハァ……近接戦闘中に魔力を上手く練れる訳ないでしょう! 僕はお師匠様とは、違うんです! ふっ!」


 バシュッ!と分かり易い音。


 おっ! 今のは良い! 低く躱したクロは天を払う様に振り切ったのだ。うん、アレは致命傷だね、1頭討伐完了。血を噴き出し、もんどり打って倒れたアークウルフはもう動かない。頭骨は硬いから、首か腹を狙うのは良い判断です。ほら、あと14頭!


 いいねぇ、少年が剣を片手に戦う姿。これこそファンタジーだし、映画みたいだよね。


「ハァハァ……コイツら遊んでたな……駄目だ、勝てない……」


 クロ! 諦めたらそこで試合終りょ……あ、すいません。確かにアークウルフ達も本気を出すみたいだなぁ。陣形も変えたみたいだし、姿勢も低くなった。歯を剥き出しにして唸ったりなんかしてる。うーむ……ちょこっとだけ援護しようかなぁー?


「お姉様……!」


「なあに?」


 うっ……凄く怒ってる……良く考えなくても、ターニャちゃんにしてみたら怖いだろうし……ゴブリン以来初めての戦闘だ。


「ターニャちゃん……これは修行で……あ、はい、すいません」


「修行も大事ですけど、これじゃクロさんが可哀想です。死んだらどうするんですか!」


 うぅ……怒った顔も可愛いけど、嫌われたくないし……仕方がないかな……


「はーい……クロ! もういいわ、下がりなさい! ターニャちゃんを守って!」


「えっ!? いいんですか? お師匠様が優しくなってる? 何時もならボロボロになるまで……」


「ク、ロ、! 黙って下がって!」


 ほら! ターニャちゃんが白い目で見てるじゃん!


 クロは地面を魔法で隆起させ、アークウルフ達を少しだけ後退させる。本来なら串刺しにしてもいいんだけど、そこまでは練れなかったみたい。そのまま此方に向かって来るクロを、アークウルフ達は当然追いかけて来た。


 うーん、どうしようかな……?


 14頭も相手にするの面倒だし、先ずは数を減らしますか。


 俺は魔力を収束させて、属性を付与する。


 ターニャちゃん、見てて?


 超絶美人で格好良いお姉さんだから!







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