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何年か前のN県警のノンフィクション

 元廿日市南署刑事課勤務で、今は人事一課……監察官であるあの男。

 名前も覚えたが【あの男】呼ばわりで充分だ。


 顔にどんなコンプレックスがあったのか知らないが、何度か整形を繰り返したであろう、人工的に整った顔に笑顔を浮かべて歩いている。


 彼は1人ではなかった。


「一緒に歩いているの、タヌキじゃない」

 北条の独り言に、思わず和泉は吹き出しそうになるのを堪えた。


 捜査1課長である大石警部を皆が【タヌキ】呼ばわりしていることはもはや、周知の事実である。


 そう言えば……大石はかつて監察課にいたことがあったと誰かに聞いた。

 そこで得た情報をネタに強請りを働き、今の地位に就いたとかなんとか。


 2人は雑居ビルの狭い入り口に足を運び、ご機嫌な様子でエレベーターに乗り込む。


 制服警官をはじめ、部下達が必死の思いで次の事件を防ごうと包囲網を張っている中で、自分はのんきにキャバクラで豪遊か。


 行くわよ、と北条は有無を言わせずに和泉を引っ張り、課長が入って行ったと思われる店へと向かった。


【シャノア】と看板の出ているクラブは、外観からして既に高級そうだった。

 もしここで飲食し、支払いを請求されたら……この警視がなんとかしてくれるだろう。

 和泉はそう期待して、ドアをくぐった。


「いらっしゃいませ」

 和服姿のママが出迎えてくれる。


 小汚い格好をしていたり、くたびれたスーツを着ていたりすればたちまち、入店お断りとなるのだろうが……幸いなことに北条が私服だったので、すんなりと中に入れてもらえた。


 彼は服装に金を惜しまないタイプだ。

 それでいてお洒落だと評判が高い。


 いらっしゃいませ~、と大胆に肌を露出したホステスに迎えられると、なるほど、これなら駿河あたりが一緒だと話にならないな……と和泉は素直にそう思った。


 北条がこそっとホステスに耳打ちする。

 そして、彼女の手に何枚か札を握らせたのを見た。

 彼女は心得ました、という表情で微笑み、奥のボックスシートに案内してくれた。


 パーテーションを隔てたすぐ隣が課長とあの男の席らしい。ホステス達の嬌声に交じって、下卑た笑い声が聞こえてくる。


 2人とも既にどこかで引っかけてきたのか、ホステス達が

「もう、飲み過ぎですよ~」などと窘めているのが聞こえる。


「初めまして、ですよね? 私、愛美(まなみ)っていいます。どうぞよろしく~」

 和泉はやってきたホステスに座るよう声をかけた。

 肌の白い、年齢不詳のホステスがドレスの裾を翻しながらやってくる。


 不意に、彼女をどこかで見たような気がした。


 ……どこでだっただろう?


 ところが。相手もこちらに見覚えがあるようだ。


 お互いに誰だっけ? と、検分している内に北条が口を開いた。

「お隣の席のお客って、この店の常連さんなの?」


「あぁ、課長さんですか? ええまぁ。ご贔屓にしていただいてますよ」

 愛美と名乗ったホステスが何になさいます? と、問いかけた時だ。


 その時、きゃあ! と女性の悲鳴が聞こえた。

「ちょっと、課長さんったら。ダメですよ~」

 声だけ聞いていると、戯れているようにも聞こえるが、明らかにホステスは迷惑している様子だった。


 和泉は腰を浮かせ、パーテーション越しにギリギリ見えるかどうかの線で、隣の様子を伺った。


 大石課長は隣に侍らせているホステスの太ももに手を置き、いやらしい笑みを浮かべている。

「ええじゃろう? 減るもんじゃないけぇのぅ」


 セクハラタヌキ……。

 それから和泉は少し、ホステスの様子を伺った。


 慣れてはいるのだろうが、段々と表情が強張って行く。

 それと同時にタヌキの【おふざけ】も度合いを増していく。


「課長、お疲れ様です!!」

 立ち上がって和泉は前触れなく、隣のボックスシートに乗り込んだ。


 ぎょっとする上司と、同じく驚きに息を飲む、その腰巾着。


「日々の激務、たいへん御苦労さまでいらっしゃいます。たまにはこうして、綺麗なお姉さん達に囲まれ、癒されるのも必要ですよね……」


 ささ、どうぞ。

 などと言いながら和泉は手近にあったビール瓶を手に取った。


「お、おま、お前は……?!」


「嫌だなぁ、課長。可愛い部下の顔をお忘れですか?」

 思い出したらしい。タヌキの顔から血の気が引いた。


「な、な、なんで、どうしてここに……?!」

「細かいことは気にしない、っと」


 和泉はタヌキのグラスにビールを注いだ。思い切り、わざと溢れるように。


 当たり前だが、琥珀色の液体がみるみるうちに上司のスラックスを濡らす。タヌキは腹を揺らしながら冷たい! と、大騒ぎする。


「これは、申し訳ありません!!」

 和泉は咄嗟におしぼりを手に取り、厚い肉に覆われた課長の頬を叩く。こうしないとシミになりますからね……などと、呟きながら。


「てめぇ、何しやがる?!」

 だいぶ酒が回っているのだろう、訳のわからないままにぼんやりしている課長に代わって声を挙げたのは【あの男】こと、影山である。

 どうやら彼は素面の様子だった。


 和泉はおしぼりを丸めて影山を見つめる。


「思い出したぞ、お前!! 確か捜査1課の……」

 と、言いかけて彼は口を噤んだ。

 おそらくここでは身元を明らかにしないよう命じられているに違いない。


「何の話です?」

 和泉はニコニコ笑顔を浮かべ、さりげなく2人を検分した。


「課長、行きましょう!」

 マズイと思ったのか、影山はタヌキの巨体を揺する。


 呼ばれた上司は訳がわかっていない様子で、

「う、うむ……」とふらふら立ち上がる。


 支払いは後日らしい。


 一応、名目上は県警の警察官である2人は、逃げるようにして店を出て行った。

挿絵(By みてみん)


皆様、ようこそ【迷走ぶっちぎりはと○スツアーへ】


コース名は

「いつまで続くんだこの話ツアー」……でございます。

そろそろ折り返し地点に近づいたような、そうでもないような……。


さて。

来週の後書きコスプレ美女シリーズですが、どちらにしましょう?


1:【垢BANギリギリ Gカップグラビアアイドルビキニオンザビーチ】


2:【多分問題ない、ハイライトだらけ隊長さんのシャワーシーン】


……2番目は既に『美女』のくくりから逸れていますが、そこは気にしないでください……。

ちなみに、デッサン力の関係で、1はそんな大したものは書けませんよ?


リクエストは受付けておりませんので、どうぞよろしく。

それではまた、来週!!

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